弘報!不都合なニュース
同時刻帯、ニライカナイのステーションには、ネプチューンが襲われている映像が届けられていた。なにせこの情報時代だ、じきにこのニュースは世界中に知れ渡ることとなるだろう。
そのニュースを見て戦慄を覚える2人の女性がいた。
「ヤバいね・・・。」
「・・・。」
現在ネプチューンにまともに防衛が出来る戦力はいない。それは自分たちがここにいることと、残りが宇宙にいることでわかっている。
ならば、SNS上の画像で戦っているライトレベリオンは、一体誰が操っているのか?
「そもそも海上なのになんでSNSで画像が上がってるのか。」
「そういえば・・・じゃあこの画像はフェイク?」
「フェイクではないけども・・・ひょっとしたらこれも敵の作戦?」
「作戦?」
「シッ、ちょっと静かにしていましょう。これは私たちをおびき寄せる陽動かもしれない。」
マスドライバーで宇宙へ上がったことは敵、エヴァリアンにもバレている。とすると、敵が欲しいのは『情報』になるだろう。我々の狙いが何なのか、どこへ行ったのか、それを探るためにネプチューンをいたぶっているのだ。本気で沈めるつもりなら、もっと強力なレベリオンを担ぎ出してくるであろうから。
ニュースになっている以上、海上で戦闘が行われているのは本当なのだろう。今のご時世、そんな戦闘を行うのはネプチューンとエヴァリアンぐらいのものだ。おそらくネプチューンが戦っているのも本当だろう。
「情報が欲しいがために、こんなニュースまで捏造を?」
「テレビ局も人の不幸のネタが欲しいんでしょう。ネタさえ渡せば勝手に報道までやってくれるでしょう。」
そこへ、SNSを通じてさらに情報を上乗せする。この情報の真偽はどちらでもかまわない。ただ情報量を増やせば、それだけでよく疑惑や不安の心は燃え上がる。
ステーションのラウンジにはざわざわと不安の声が上がっているが、それ以上に運航がどうなるかの問い合わせが殺到している。
多くの人間にとっては、この戦闘は無関係な物。ニライカナイで出発を待っていた乗客にとっては、発車を遅延させる厄介事に過ぎない。ネプチューンの無事を祈るものはこの2人だけ。
ネプチューンの沈没、それは外に出ているシェリルたちレベリオンパイロットが孤立するということを意味する。帰る場所がなくなる可能性がある。自分が学校にいる時、自分の家が火事になっているのにのんびり授業なんか受けていられるはずがない。
「その不安を煽ることこそが、敵の狙いです。市井に紛れ込んでいる我々が、尻尾を出すわけにはいかない。私たちはあくまで、無関係な一般人を装わなければなりません。」
「ぐぬぬ・・・。」
傍受される可能性があるので、通信をして確認することはできない。
「つまり、私たちに出来ることは何もないと?」
「祈ることならできます。」
「何に祈れと?」
「みんなの無事に。それに、司令を信じること。」
そうしている間は、少しだけ不安を和らげることが出来る。セシルは手を組んで地蔵になる。
「ぱぱー、でんしゃまだのれないのー?」
ふと、同じラウンジにいた子供の姿が見えた。おそらく今何が起こっているのかを正しく理解できてはいないのだろうが、それでも周りの人間たちが発する負のオーラに、得も言われぬ不安を抱いていることだろう。
こういう時、わざわざネットで不安の種を漁ることはない。シェリルもセシルを習ってスマホを仕舞うと、荷物からトランプを取り出して、その子供に近づく。
「こんにちは。お嬢ちゃん、ヒマならお姉ちゃんと遊ぼう?ほら、セシルも混ざった混ざった。」
やることは普段と変わらない。あぁ、こんな時遊馬がいてくれたら、もっと退屈を凌げたろうに。




