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突破!青い大地を見下ろして

1000PV、400ユニーク突破ありがとうございます!

 「エレベーターは動きそう?」

 「大丈夫。スイッチひとつで動かせそうだ。」


 上部が派手にぶっ壊された記憶があるが、電源は問題なく稼働しているらしい。


 およそ4万km上空、地球一周分もの高さをこのチューブを通って行き来できる。ロケットを打ち上げなくても宇宙に手軽に行ける、まさに夢のごとき技術。リニアモーターカーといい、カサブランカが書かれた当時の科学の夢が散見される。まあ、SF作品だし。


 「よし、タイマーで自動的に発進するようにできた。」

 「よーし、エレベーターに乗り込めー!」

 「わぁい。」


 さすが国際的機関なだけあって施設内部は広いが、探索もそこそこに一行はそそくさとエレベーターに移動する。


 施設に対して、人間用のエレベーターは小さめだ。電車のように座席に座り、シートベルトを締める。強化ガラスの嵌めこまれた窓から、外の景色を楽しむことも出来る。


 「ボク一番窓側の席ー。」

 「あっ、ずるい。」

 「これで宇宙に行けるのか。」

 「俺らもう行ったんだけどな。」


 と言っても、その方法はほぼウラワザのようなものだ。という事は、そんな方法を持っていたラッピーはこのゲームにとってはイレギュラーな存在ということになる・・・。


 「エルザ。」

 「なに?」

 「・・・やっぱ後でいいや。」

 「ん?」


 聞いてみようか、と遊馬は思ったが今はやめておこうと考えがよぎった。せっかく仲良くなってきたのに、わざわざ関係にヒビを入れるような真似をすることはないだろう。


 「今更しり込みする必要ないと思うよアスマ。きっとみんな同じこと考えてるだろうから。」

 「まあ、コイツはイレギュラーだろうなってわかるぞ。」

 「らっぴぃいいいい?」


 一番イレギュラーらしいラッピーはシートベルトで座席に縛り付けられている。苦しいのかみじろぎしている。


 「僕たちの中の誰かも、クラックからきたイレギュラーって可能性もあるわけなんだよね?」

 「うん、でもそれがどうしたの?って感じ。結局クリアできなければ帰れないって点では皆同じだし。」

 「それもそうか・・・。」


 と、そんなところでアナウンスが流れてくる。


 『ご乗車、ありがとうございます。まもなく、当シャトルは発進します。座席に座り、シートベルトをお締めください。』


 いよいよだ。初めて飛行機に乗った時も、こんな風にドキドキだった。


 『発進します。』


 「うぉおお・・・。」

 「ラッピーのロケットの方がGは少なかったね・・・。」


 あんなちんちくりんのロケットのほうが性能が色々高いというのか。ともあれ、ぐんぐんスピードと共に高度を上げていくと、雲を見下ろし、青い空がだんだんと暗くなっていき、ついには地平線をのぞむ。


 「高度1万km・・・1万1千・・・1万5千・・・2万km!」

 「大気はもう無いのか?」

 「1万㎞あたりでもう無くなったよ。」

 

 ポーン、と青いランプがつく。もうシートベルトを外していいようだ。


 「おっ・・・無重力・・・。」

 「うひゃー!」

 「らぴ!らぴ!」

 「はいはい、外してあげるね。」


 生憎機内食などは出されないようだが、自由に見て回れるらしい。地球の重力圏内では背もたれが下を向くようになっていたのが、重力圏から抜けると90度傾いてシートが下を向くようになる。


 「うわあ・・・これが地球か。」

 「実際に歩くことが出来ないなら、絵となんらかわらないが。」

 「たとえ歩けたとしても、これ全部を踏破するのは無理じゃないかな。」


 以前宇宙に上がった時も感動したが、初体験となる無重力の感覚と合わさって、また違った感想が出る。


 それは、地球の存在感。皆生まれた世界は違っていても、同じように地球で生まれたのだ。たとえ異世界の地球であっても、母なる存在であることには変わらない。

 

 「私はカモメ。」

 「地球は、青かった。」

 「俺の地球はこんなに青くはないだろうけどな。」

 「なら今のうちに目に焼き付けておきなよ。」

 「ああ・・。」


 対象物が無いのでゆっくりとしか感じられないが、それでも先ほど乗ったリニアより比べ物にならないスピードで、高度3万6千kmにあるステーションへまっすぐと向かって行っている。


 「私の場合は自分で飛んだほうが早いのだけれどね。」

 「レベリオンならね・・・。」

 「へー、パイロットがGで潰れそうだけど。」

 「でも武器がパイルバンカーとスタンロッドしかないんじゃないのか?」

 

 そのパイルバンカーの杭も、スタンロッドと同じものであるから実質一つだけである。


 「本当はもっと色々武器があったのだけれど、ほとんど使い果たしてしまったから。」

 「アレでしょ、最終兵器的なやつがあるんでしょ?」

 「『リオンフォン』のことね。あれを使うには専用の改造が必要になるし。」

 「それに、使ったら自壊するし。」


 宇宙に漂う『波動エネルギー』を自身のエネルギーに変換するレベリオンだからこそできる芸当だが、もれなく自身の崩壊を招く。


 なお、波動エネルギーの転換装置は火星製のレベリオンにしか搭載されておらず、地球製レベリオンはプラズマバッテリーで賄っている。そのため、リオンフォンは火星製のレベリオンにしか搭載されていない。


 「そんなものを使って、よく生き延びられたね。」

 「そうだ、どう考えても死んだとしか言えないのに、どうやって助かったんだ?続編があるというからには、生きているのだろう?」

 「さあ、それは私にもわからないわ。あの瞬間、リオンフォンの発声装置が先に自壊した感触は覚えているのだけれど。」

 

 だとしても、その後にはトールハンマーが待っている。どちらしにしろ生存は絶望的だ。


 「けど、そっちの世界では雄二は生きている・・・。」

 「生きているとしたら、何を思っている?」

 「・・・おそらく、復讐。」

 「復讐?」

 「ええ、私たちを利用したあらゆる物への復讐心。それだけだと思うわ。」

 「根拠は?」

 「・・・この世界に来た時、まっさきにそのことを相談したわ。」


 復讐。クロユリの花言葉でもある。


 それから語られるは、ダークリリィのあらすじ。それは復讐の物語だった。

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