戦闘!はじめてのざこ
「で、移動するのはいいけど、どこに行く?」
「目的地はグラウンドなんだろう?そこへ行けばいいじゃないか。」
「まだ仕様とかわかってないし、もうちょっと色々試してから行きたい。いきなりボスと戦闘とかなったら、勝てるかどうかわかんないし。」
「・・・そういえば、ゲームだったら『セーブ』とかないの?」
忘れていた。何度かセーブするのを忘れながら、パーティが全滅して思わずリセットしたこともあった。
「・・・セーブらしいものはないかな。」
「じゃあ、ボクら全滅したらどうなるんだろ?全滅までしなくても、HPがゼロになったらどうなるんだろう?」
「大体ゲームなら、最後にセーブした場所か回復ポイントにまで戻されるとかだけど。」
「そのセーブが無いんだろ?」
「回復ポイントって、どこ?」
「ぴぽ?」
ゲームによっては、ウインドウから自由にセーブできず、セーブポイントでしか出来ないシステムもある。
「じゃあ次は、回復ポイントとセーブポイントを探すことを目標にしよう。」
「なかなか先に進めないな。」
「慎重に一歩ずつ。」
どんな落とし穴があるかわからない。
「むっ。」
「どした?」
「どうやらお客さんのお出ましのようだ。」
「お客さん?」
廊下の先頭を行っていたモンドが身構える。見れば、正面の空間が歪んで、3つの影が現れた。
『ギ・・・ギギ・・・。』
「タイムドグマの戦闘アンドロイド!」
「俺の世界の同胞か。お友達になりに来たってわけじゃなさそうだけど。」
「え?もともとお友達だったんじゃないの?」
「知らん!そんな記憶俺には無い!」
そう言って、モンドは義手からレーザーガンを抜く。その義手も、元はタイムドグマの科学者は作った物なのだが。
さあ、戦闘開始だ!
「一番早いのはラッピーだ。まずはモンドの後ろにまで移動して。」
「らぴっ!」
「次の美鈴も、モンドの後ろの方が安全かな。」
「わかりました。」
「次がトビーか。トビーは何か武器持ってたっけ?」
「ワイヤーガンがある。これで引き寄せてパンチをお見舞い出来るよ。」
「けど、一撃で倒せるかわからないし、その次にアンドロイドのターンが来るから、かえって危険かな。トビーもモンドの後ろに移動して。」
「オッケー!」
次、アンドロイドAはスタンロッドを起動させて向かってくる。アンドロイドBも同様だ。しかし最後のアンドロイドCは、銃を抜いて撃ってくる。目標はモンド。
「ふん、この程度の攻撃、いつも躱して・・・。」
「避けたらわたくしたちに当たりますのよ!」
「ごめん、避けないでね。」
「くっ、これは貸しにしておくぞ・・・。」
タイムライダーは、様々な武器を切り替えながら、スタイリッシュに戦うアクションゲームだ。避けるのが基本なモンドは不服そうだった。
「やっと俺の番だな。今回はあらかじめ武器を装備してあるから、前のような失態はない。喰らえ!」
ドギャン!という炸裂音と共に、アンドロイドAの体は大きく吹っ飛んで動かなくなる。
「おいおい、一番遠い銃撃タイプを狙わなくてどうするのさ!」
「まあまあ、一撃で倒せるみたいだし。次・・・どうしようかな、ラッピーも攻撃してみるか。」
「らぴぴ!」
ラッピーはモンドの背後から飛び出すと、アンドロイドBにハンマーをぶち当てる。
『ギギギギギ・・・!』
「あちゃ、倒しきれなかったか。」
「このままだと、ラッピーが狙われますわよ?」
「でも、のこり体力はわずかだ。これなら美鈴のフライパンでなんとかなるんじゃない?美鈴はスキルで攻撃対象にならないし。」
「最後の一体は?」
「トビーのワイヤーガンで引き寄せ攻撃しよう。よしんば倒しきれなくても、銃の有効射程から外させることはできる。」
「よし、ではそのように・・・。ミスズ、お願い。」
「わ、わかりましたの・・・とう!」
バゴンッ!と重い音が響くと、アンドロイドBも機能停止する。
「あとはボクが・・・それっ、グラップルスマッシュ!」
「あっ、カッコイイ。」
「わたくしも技名をつけるべきでしたわ。」
「技名をつけてもフライパンはフライパンだろう。」
トビーの握る銃からワイヤーが飛び出し、アンドロイドCの首を捕らえると、巻き取りのスピードをプラスした拳が火を吹く。
『戦闘終了』
「意外と簡単だったな。」
「わたくしも、案外出来るものですわね。」
「どれどれ、ドロップアイテムは・・・。」
アンドロイドは下級兵士だ。大したアイテムをも落とさないが、今はどんなものでも貴重品になる。ホクホクとウィンドウを開いて確認してみる。
「なにコレ、『ジャンクパーツ』?ガラクタじゃないか。」
「タイムライダーの武器のアップグレードに使うアイテムだけど、この世界だと役に立つんだろうか?」
「開発や改造はドクにまかせっきりだからな・・・。」
ともあれ、最初のイベント戦闘を覗けば、初となるザコ戦に勝利した。
そこに少しの油断と慢心があったことを、心に留めておくこととなるのは、まだ先の話。