風香!闇の香りが風に乗って
絶賛迷走中
外に出てみて、遊馬は一つ気づいたことがあった。
「このニオイは。・・。」
「ニオイがどうかしたの?」
風に乗って、花畑の香りが漂ってくる。
「風?」
風だ。今まで吹いてこなかった風がを感じる。
「これも、世界が融合を始めた影響?」
「それか、クラックから風が吹いてきてるのかもな。」
風とはすなわち空気の動くエネルギーに過ぎない。クラックから流れ込んでくる異世界からのエネルギーが、空気を動かすのか。
とすると、花畑にクラックがあるのかもしれない。期待と不安を抱えながら足を向ける。
「クラックはどこかな・・・。」
「モンド、探知器とかは持ってないの?」
「大型のやつがラボにある。」
「つまり無いのか。」
穴と穴は近づくと融合して、だんだんと大きくなっていくらしい。そうなると人や物も通れるほどのゲートとしての役割を持つ。
それが大規模なものになると、世界が繋がって、最終的に世界同士が衝突するという。それはゲームをクリアした遊馬にも憶えがある。
そうそうゲームといえば、
「敵か。」
「久しぶりのバトルだね。」
「今度の敵は、どのゲーム出身?クラゲみたいだけど。」
「シューティングゲームの敵だな。あんまりやらないから知らないんだけど。」
クラックから敵がやってくることもあるんだった。気づいた時にはすでにエンカウントしていた。
まあ特筆事項もなく戦闘終了だが。
「よし、楽勝!」
「よくよく考えたら、敵がこうして湧いて出てくるのもクラックのせいなんじゃない?」
「そうか、ゲームPODがクラック発見器でもあったのか。」
なんと、既に持っていた。元々は敵を警戒するためだけの機能だったのだろうが、逆に言えば反応する場所に近づくほど、クラックもあるということ。
しかし、本来なら安全のための装置なのに、危険の方にあえて向かっていくことになるなんて。塞翁が馬というやつだろう。
「それにしても、この花畑ってどこまで続いてるんだろうね。」
地平線の先まで花が見える。地平線と言うか、ただ単に何もないだけなのかもしれないが。
時折花が風にそよがれて揺れている。
「じゃあ、あっちのほうか。」
クラックから風が漏れている。
「あったよ!クラックが!」
「でかした!けど、閉じる方法ってなにかあるのか?」
「え、遊馬用意してないの?」
「してない。と言うか、クラックを閉じるシーンなんてないし。」
「? あるぞ。」
「え、あるの?」
モンドは、手首に巻いた腕時計のようなデバイス、『クロノバインダー』を、空中に開いた赤紫色の割れ目に近づける。
「時間と空間を圧縮すれば、クラックの隙間は狭まる。後は時間の自然治癒力によって勝手に塞がる。」
「かさぶたみたいですわね。」
「え?そんなことできたの?」
「知ってるんじゃないのかよ、お前は?」
「知らない・・・。」
少なくとも遊馬は、クロノバインダーにそんな機能があったなんて初めて知った。ゲームで描写されないだけで、そういうシーンがあったのかもしれない?
まあ、一旦考えるのは保留しておこう。ともかく一件落着で帰ろう。
「あれ、アスマどうしたの?」
「ちょっと、ミステリーサークルを見て行こうかなって思って。」
「ああ、あれね。」
ミステリーサークル、それを見る度にレイを思い出すけど、忘れたくはない。




