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配役!選ばれたものたちよ

 UAが300を突破、ありがとうございます!

 「おい、返事しやがれ。ネタは上がってんだ。」

 「はぁ・・・どうしてキミはそう威圧的な対応しかできないのかね。」


 グラウンド地下の施設に鎮座しているカサブランカの前でモンドが吠えながら、拾った鉄パイプで叩くカンカンという音が響いている。


 「なにか反応ありますの?」

 「ない。」

 「ええい・・・本当にコイツが喋ったんだろうな?」

 「そうで間違いないとは思うんだけど・・・。」


 ゲームPODネクスを携えた遊馬がその後ろで首をかしげる。


 さて、何をやっているのかと言うと、遊馬がカサブランカのヒロイン『エルザ』と交信したことを仲間たちに伝えたところ、こうして全員でその真意を問いただしに来たというわけだ。


 「エルザさん、エルザさん、どうぞおいでください。」

 「そんなこっくりさんじゃないんだから。」

 「とりあえずもう一回乗ってみるってのはどう?」


 このままだとモンドがカサブランカをスクラップにしかねないので、早々に手を打たなければならない。


 「どう?」

 「・・・おっ、来た来た。スイッチをいじればいいのかな。」


 乗り込んだところで、さっそく反応があった。言われるがまま、カサブランカの動力スイッチを押すと、駆動音と共にシステムが立ち上がる。


 「なになに、右のレバーを手前に引きながら、左のペダルを押し込む?」

 「動かし方か?」

 「で、左足はそのままに、右のレバーを前に倒すと・・・。」

 「ぐほぉっ!!」

 「・・・って、あれ?」

 

 右腕を振り下ろして、目の前に立っていたモンドをハエのように叩き潰した。


 「な、なにしやがるこの野郎・・・。」

 「さっきカンカン叩いてたからでしょう。」

 「と言うか、むしろ僕が使われたような感覚だな、これじゃあ。」

 『SONO TOURI』

 「おっ、エルザだ。」

 『SASSOKU DAKEREDO FUSOKU NO JITAI GA OKITA』

 「不測の事態?」

 「ボクにはなんて書いてあるか読めない。」

 「そうですわね、ローマ字なんて辞めて普通に書いてほしいですわ。」

 『あっそう?』

 

 普通にひらがなにしてきたよこの人。


 『まあ、本当は機械っぽく振舞っていたかったんだけど、そういうわけにもいかない事態が起きちゃったみたいなのよね。』

 「不測の事態って一体?」

 『どうやら、この世界そのものの危機のようなの。』

 「この世界そのもの?」

 「バミューダのこと?」

 『あの存在も、危機の一つでしかない。』


 『この世界は、本来私たちの世界を存続させるために用意されたものだった。』


 『そのために必要なキャストだけが、この世界に集められていたはずだった。』


 『けれど、そうでない者たち、イレギュラーなキャストたちも混じり込んできた。』


 『それによって、この世界の理も崩れている。』


 「つまり・・・どういうこと?」

 「ゲームのバランスやルールが変わった、ってこと?」


 先のバミューダの戦いがそんな感じだったんだろう。ゲームバランスもルールもうっちゃったような狂った強さもさることながら、発言から察するにここが何の世界かもわかっていないようだった。


 「やはり、あのクラックが関係あったのか。」

 「あのバミューダは、クラックの向こうの宇宙からやってきた『本物』・・・というわけか。」


 そして、それはレイも同じか。偶然この世界に紛れ込んでしまった、『本人』。ゲームの中の登場人物ではなく、生きている、いや生きていた『人間』だった。


 ふと、遊馬は所持品の中にあるレイの遺品を見やる。地球の観察レポートと銘打たれているが、その中身は実質僕たちとの記憶。


 リセットでやり直しができるゲームなどではなく、一度きりの彼女の人生の記録。


 思考が逸れた。


 「それで、僕たちは何をすればいい?」

 『それは・・・。』

 「それは?」

 『わからない。』

 「ずこー!」

 『そういうわけであとは自分たちで考えてね。そういうわけで、オヤスミー。』

 「待てーい!」


 説明してほしいことは他にも色々あったのに、すべてポイして逃げやがった。


 「あーちくしょうチクショウ、本当にいなくなりやがった!」

 「そんな・・・。」


 またモンドがカサブランカのボディを叩き始めたが、今度は誰も止めない。


 「これからどうする?」

 「そうだな・・・多分、本来想定されていたゲームの展開がナシになっちゃったんだと思う。」

 「つまり?」

 「これ以上カオスになるってこと。」


 これからどんなゲームが乱入してくるかわからない。やれやれ、退屈はしなくて済みそうだ。


 「なら、クラックを探してみようぜ。」 

 「あ、モンド満足したの?」

 「してない。が、ここで殴り続けていてもしょうがないしな。」


 持っていた鉄パイプを投げ捨てて、モンドも思考を切り替えたようだ。


 「クラック、次元の裂け目ね。」

 「レイと同じように、この世界に紛れ込んできたやつがいるのかもしれない。あるいは、俺達の内の誰かが通ってきたのかもしれないクラックがあるかもしれない。」

 

 クラックを通る瞬間のことは、誰も覚えていないのかもしれない。レイも何故自分がこの世界にいるのか、知らないようだったし。


 「それよか、メインクエストを進めるっていう方法もあるかもしれない。」

 「メインクエスト?」

 「僕たち、宇宙には前回行ったけど、メインクエストでは行ってないよね。きっとあそこでもイベントがあるんだと思う。」

 「クラックは宇宙にもあるしな。」


 『見えている目標』というのは現状宇宙にしかない。


 「それに僕たちはまだ『正攻法』では宇宙に上がってない。」

 「らぴ!」

 「ラッピーのロケットを使ったから。」

 「その正攻法だとどうなるんだ?」

 「正攻法なら、軌道エレベーターまで行く方法がある。」


 一見すると、この学校は外界と隔絶されているようだが、原作のカサブランカには、軌道エレベーターまで直通の地下鉄が敷かれていることになっていた。勿論、アダムからオービタルリングを取り戻してからの話だが。


 「なるほど、まだ見つけていないロケーションがあるってことだね。」

 「そこにクラックがあるかもしれないと思って。」

 「よし、じゃあまずはその地下鉄を見つけよう。」


 とにかく、目標が見つかった。今はこれでいい、今は。


 考えなければならない問題は山積みでも、たとえ今やっていることが回り道でも、歩みをとめなければいつかたどり着ける、そう信じて。

 絶賛迷走中

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