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敗北

 俺、30話までアップできたらキャラクター設定まとめを書くんだ・・・

 準備は完璧だった。戦術を誤ったこともなかった。敵を侮ったことも無かった。勝ちを急いだことも無かった。うぬぼれも無かった。


 「どうした?そんな程度か地球人!」


 あえて言うなら、想像が足らなかった。ラスボスよりも強い裏ボスクラスであろうな敵が、こんなところにいるなんて思いもよらなかった。初手で、全体攻撃の防御無視回避不可を放ってくるなど。


 「らぴ・・・。」

 「惨めだな、リープの子!こんな脆弱な生き物に絆されるとは。」


 地に跪くレイの放ったサイコレーザーをヤツは片手で弾き、その手で念力を放ってレイを掴み、残骸の山へ投げ飛ばす。


 「らぴ!!」

 「小動物が!」


 それを黙って見ていられるラッピーではない。チャージしたアストロキャノンを放つが、ヤツは虚空に黒い球を発生させ、アストロキャノンは渦に飲み込まれて消えていく。そしてその黒い球を放って、ラッピーの命を一つ削る。


 「ば、バケモンが・・・うぉおおおおお!!」

 「喧しいな。」


 モンドが放ったレーザーカノンが、ヤツの体に確かに当たった。が、ヤツは一切ダメージを受けた様子も見せずに、再び黒い球を打ち出す。


 「ぐぉおおおおお!!!」

 「モンド!」


 モンドの体がボロ屑のように宙を舞い、地に墜ちる。


 倒れているのはモンドだけでない。トビーも、美鈴も、地に伏して動かない。この二人は、最初の一撃でなすすべもなく粉砕され、物言わぬ骸と化していた。


 「さて・・・次は、お前だな?」

 「ひえっ・・・。」


 お前とは、固まっている遊馬のことである。とっくに遊馬のライフもゼロになっているが、ヤツにはそんな理屈は通じない。理屈どころか、あらゆる理を無視していると言っても過言ではない。


 なにせ、ヤツはこの『ダークリリィ』のゲームのルールが適用されていない。まぎれもなく『飛び入り参加』したキャラクターだ。


 この目の前にいるヤツについては、遊馬も知っていた。レイの物語、『エイリアンは恋ウサギの夢を見るか?』のエンドにおいて、二番目に最悪と考えるルートに登場する敵。二番目と言えば、『そんなものか』と思われるかもしれないが、その絶望感はおそらく最悪を上回る凶悪に位置する。ヤツとの戦いにおける敗北とはすなわち、エンディングにすら満たない『GAME OVER』なのだ。


 「バミューダ・・・。」

 「いかにも、俺が『バミューダ』だ。」


 顔の代わりに暗黒の穴が開いている、ロングコートを纏った巨漢。あまりの残虐性と危険性により『事象の地平(ブラックホール)』へと封印された『宇宙の魔王』。しかし、そのブラックホールの力すら手懐けて脱出してみせ、自身を封じたリープの子孫、すなわちレイ・リープへの復讐のために地球に追ってやってきた。それがバミューダだ。


 バミューダに勝つ方法はただ一つ。レイが自身の命と引き換えに、サイキックエネルギーを解放して再び封印すること。それがゲームの中で唯一の方法だ。


 「何かわからぬが時空嵐に巻き込まれたかと思った時はどうしたものかと思ったが、それもまあいいスパイスだった。なにせ、リープの子もこの宇宙に来ているとすぐにわかったのだからな。」


 「憎きリープの子を討つのもそれはいいが、それはそれとしてだ。面白い物があるじゃないか。」


 「手土産にこのレーザー砲を頂くとするよ。俺のブラックホールパワーで、時空連続体に穴を開ける『ブラックホール砲』を作ろうじゃないか。」


 倒れ伏した遊馬たちを尻目に、悠々とバミューダは自分の目的を語り始める。まるで演説を行うように身振り手振りを加えながら仰々しく。魔王とはいえ、やはり王様というわけか。しかしその政策は一般人な遊馬にはいただけない。


 「そのうえで、この宇宙を破壊しつくしてから、リープの星に凱旋と行こう。万来の悲鳴が俺を待っていることだろう。」


 こいつは一体何を言っているんだ。というのが普通な反応だろう。だが、そんなことをすれば地球もヤバいということはすぐにわかる。


 「だが残念だよ、実に残念だ。その様をリープの子に見せてやれないというのは。」


 「だがまあその前にこの星で出会えたお友達を先に逝かせてやるから、ヴァルハラでまた会えるから安心しろ。」


 「これはゲーム、これはゲーム、これはゲーム・・・。」


 一方遊馬は現実逃避を始めた。そう、これはゲームの世界。この世界の地球が滅ぼうが、遊馬の現実の地球にはなんの関係もない。


 「お前は何を言っているんだ?これは現実!フンッ!!」


 バミューダが手を上へと掲げると、にわかにステーションが揺れ始める。宇宙の魔王がその念力でもって、無理やりレーザー砲台を剥がそうとしているのだとわかる。


 「らぴ!」

 「これはゲーム、これはゲームなんだ!!」

 「らぴ!!」


 夢から覚めろと自分に言い聞かせる。ラッピーが何か言ってきているが、今の遊馬には何も聞こえてこない。


 「らぴ・・・。」


 そこからはもう、遊馬は目を閉じ耳を塞いだ。


 こんなクソゲーにはもう付き合ってられない。コントローラーを投げ捨てて、ゲーム機の電源を切るところだ。


 遊馬はめのまえが、まっくらになった。


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