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お菓子!ラッピーの神秘

 「らぴぴ。」

 「らぴ?」

 「らっぴ!」

 「らぴらぴ。」

 「りりぴ!」

 「りっぴ?」

 「りぴらぴ!」

 「ららぴ。」


 二人でなにやら盛り上がっている。


 「だが何を喋っているのか全然わからん。」

 「お菓子の話・・・かな?」

 「わかるの?」

 「ラッピーの考えることと言えばお菓子の話ばっかりだし、そうかなって。」

 

 ラッピーはすごく楽しそうに話して(?)おり、レイは興味深そうに聞き入っている。


 一同は、グラウンドでの捜索に区切りをつけて、一旦休憩として食堂にやってきていた。少し探索をするとお菓子やジュースも見つかったので、お茶請けとしている。


 「そういえば、ラッピーはお菓子を食べると変身するんだったよね。どんなバリエーションがあるの?」 

 「そうだな・・・今はキャラメルでハンマーを装備してるし、ドロップで魔法弾、スパークリングサイダーで電撃、スパイシーチップスで炎を吐く。」

 「聞いてるだけで胃がもたれてきそうだ。」

 「あとシャーベットで氷攻撃とか、見た目で類推できるかな。」

 「一番強いのは?」

 「そうだな、電撃が射程も長くて威力も高いし、バリアも張れてすごい強いよ。ハンマーもロマン技なところがあって、意外なところで宇宙食で変身するアストロノーツが使いこなすと強くて・・・。」

 「宇宙食ってお菓子なの?」

 「ゲームの攻略情報じゃなくて、設定の話をしてくれ。」

 「設定?それだと、やっぱ『ムテキ』かな。」

 「ムテキ?ムテキってなんだ。」

 「ムテキは無敵だよ。あらゆるダメージを無効、接触するだけでボスでも一撃。」


 それにはフィールドに落ちている『コンペイトウ』を30個集める必要があり、効果時間も10秒ほど。シリーズでもその辺りはおなじみの要素だ。


 「でも、探してみたけどコンペイトウは見つからなかったね。」

 「さすがにそれが簡単に見つかれば、戦闘が楽になりすぎるしな。」


 「らぴらぴ♪」

 「らぴ。」


 2人は今度はお菓子を分け合っているようだ。と、レイから貰った何かを食べたラッピーは、宇宙服のようなメタルの装甲を纏う。


 「あれ、『アストロ』になっちゃったのか。」

 「でも強いんでしょう?」

 「まあね。でも今変身アイテムを使っちゃうのはもったいないな。ほれ、ラッピー。こっち食べなよ。」

 「らぴ?らぴ!」

 「レイも、いっしょに食べようよ。」

 「らぴー。」


 ラッピーがテーブルに移動したのに着いていき、レイも座る。


 「ちょっとしたパーティだね。」

 「何で乾杯するんだ?」

 「数奇な出会いに?」


 本当に奇妙な面々だ。出会う事すらなかったどころか、お互いの事を知ることもなかった。


 (その中に僕がいることが、一番奇妙か。)


 僕はただのゲーマー。皆のことはよく知っているのに、皆には知られるはずのない存在。


 さて、腹ごしらえも済んだところで、一同はプールへと移動した。風の吹かない世界にも関わらず、なぜか水面はさざ波打っている


 「張りっぱなしのプールにしては水が綺麗だな。」

 「なんだ、泳ぎたいのか?」

 「遠慮しておく。このプールには、溺れて死んだ生徒の亡霊が今も漂っていて・・・。」

 「ひええ・・・。」

 「じゃ、俺水抜いてくるから。」

 「無慈悲。」


 モンドはプールの栓を抜いた。数十分後、すっかり水の抜けたプールの底を、ひたひたと歩く。


 「うーん、ここには無さそうだな。」

 「水が入っていた場所を歩くって、なんだか不思議な感覚ですわね。」

 「そうそう、雨の日とか大変だよね。」

 「雨?」

 「人目につかないから追っ手を撒くのに便利なんだよね、下水道って。」

 「うええ・・・。」


 そこを歩くのは想像したくない。


 「けど、ここも何か下に空間があるみたいだよ。ソナーがそう反応している。」

 「さらに下?地下施設か・・・。」

 「どうする、壊すか?」

 「んもー、モンドまたすぐ暴力に走る。」


 しかし、水の下に秘密のサイロがあるというのはロボットもののお約束だ。


 「どうにかして下に行く方法を見つけるか・・・。」

 「らぴ?らっぴ!」

 「らぴ?」

 「なに、2人とも?」

 「レイに任せて。」


 遊馬たちの意思を汲み取ったのか、ラッピーがレイに『お願い』すると、レイは目を閉じて手を宙にかざした。


 「おっと・・・。」

 「超能力か。」


 レイのサイコキネシスで、プールの底が開いていく。プールの端の梯子で地下へと降りる。


 「ここは・・・やっぱり格納庫なのかな。」

 「宇宙船もここにあるかも。」

 

 グラウンドの地下にあった施設と同じく、無機質な雰囲気を湛えている。いかにも怪しい機械がありそうだ。


 「もうバラバラに解体されてたりして。」

 「るー・・・。」

 「モンド?」

 「悪い、言い過ぎた。」


 モンドの失言を諫めるが、実際そういうルートもある。全ルートを回収するのは本当に大変だったと、遊馬は思い出していた。


 「その内で最悪なルートはもう聞いたけど、2番目に酷いのはどんな結末になるの?」

 「2番目?うーん、順序着けるのも難しいな・・・。」

 「人は物事の結果を考えるとき、最高と最悪をまず想像するからね。現実は最悪より一歩マシか、最悪を越えた最悪になるものだ。」

 「玄人は語るってところか。」

 「人生いろいろあるからね。」


 トビーは見た目や年齢に反して修羅場を潜ってきている。勘や洞察力も、経験に裏打ちされた確かなものだ。


 「一番最悪なのが地球滅亡なら、2番目は・・・。」


 ならば遊馬も、ゲームで得た経験をゲームで生かそう。


 「ここにもない、かな?」

 「こんな意味ありげの場所なのに?」


 ひとしきり調べ回って出た結論がこれだ。ステルスになっている本体も、それらしいパーツ類も見つからなかった。


 「あとは、花畑?」

 「広いからあんまり探したくなかったんだけどなぁ・・・。」

 「少し休みましょうか。」


 右へ左へ、上へ下へ動き回って疲れた。お菓子の続きを食べる。


 「らぴ、モンド。」

 「なんだ?」


 少し離れた場所に腰かけていたモンドのところへ、レイがやってきて声をかけた。


 「このらぴを、あげる。」

 「・・・俺にか?」

 「らぴでは、らぴするとき、らぴを分け合うのだと、らぴから聞いた。」

 「何を言っている?」

 「レイはモンドとらぴしたいのだ。」


 何を言ってるのか全然わからん。


 「でもまぁ、貰おう。」

 「らぴは、レイの星のらぴだ。」

 「・・・角砂糖を齧ってるような感覚だな。」


 だが、何を言いたいのかはモンドにもわかった。


 「ほれ、代わりにこれをやろう。」

 「らぴ?」

 「『センベイ』というやつらしい。」


 一枚の煎餅を割ってレイに手渡す様子を見て、遊馬たちも胸をなでおろす。


 「意外といいところあるじゃん。」

 「まあ、心配はしてなかったけどね。」

 「本当ですか?」

 「らっぴ?」

 「ラッピーも食べる?」


 宇宙服から顔を覗かせるラッピーにも、煎餅をあげる。


 しばらくして、まるでニオイを嗅ぐようにレイは辺りに探りを入れると、ひとつの結論を出した。


 「ここには、らぴがあったらぴがある。」


 さて問題だ、今度はレイは何を言いたいのだろうか。


 「『船』があった『痕跡』だろう。」

 「らぴ!」

 「モンドわかるの?」

 「目を見ればわかる。」


 どうやら正解だったらしい。レイの耳のアンテナが、ピコピコと信号をキャッチしている。どうやら近くにあるらしい。


 「別の場所に移されたかのか?」


 一体何者が、何のために?


 「らぴ。」

 「おい、1人で行くなよ。」

 「らっぴー!」

 「ラッピーも・・・追おう!」


 レイとラッピーは先に施設の奥へ奥へと向かって行ってしまう。慌てて遊馬たちも追いかけるが、それはすぐに終わりを告げる。


 「らぴるぴ!」

 「るー・・・。」


 ラッピーは身構えている。敵だ。大きなハサミを持ったカニのようなモンスター。頭には黒い帽子を被っている。


 「ラッピーの敵の『ギャンザ』だ。中ボスの中でも硬くて弱点を突かないと倒せないよ。」

 「どこが弱点なんだ?」

 「腹の赤いところ。」


 右手のハサミがまるで盾のように弱点をカバーしており、左手にはハンマーのような大鋏を持っている。そして口からは泡を吐いて遠距離攻撃もしてくる。


 『戦闘開始!』


 「まずはラッピーからか。けど、防御されてると攻撃しても無意味なんだよな。」

 「らぴ!」

 「でもラッピーはその気のようだね。」

 「『アストロノーツ』には攻撃にチャージが必要になるからね。よし、ラッピーはチャージだ!」

 「ぴぃいいいい・・・!」


 宇宙服に備え付けられた光線銃に、パワーが込められていく。


 「次、美鈴はいつも通りに!」

 「はい!『純白のブーケ』!」


 美鈴がブーケをかかげると、白い花びらが舞い、かぐわしい香りがモンドに注がれる。


 「次は・・・レイ?」

 「レイは、『らぴ』を使う。」

 「えっと、『サイコキネシス』ね。」


 ゲームPODの画面にはそう表示されている。にわかにレイの耳のアンテナが羽を広げると、同時にギャンザの動きが止まる。


 「なになに、『念力で相手の動きを止める』か。攻撃する時だけしか弱点は見せてくれないんだけどな・・・よし、今のうちに態勢を立て直そう。動きが止まってる間にレイを後退させて、モンドは前進してガードを固める。」

 「ボクも攻撃するだけ無駄か。」

 「じゃあトビーも前進で。」

 「OK!」

 「俺も前進と・・・。」


 遊馬も前進して、最後にギャンザのターンだが、念力の拘束を解くのにこのターンは消費される。次、一周回って再びラッピーの番。


 「ラッピーは下がりながら、もう1ターンチャージだ!」

 「ららぴ!」

 「美鈴は後方でガード。レイも下がって!」

 「わかりました!」

 「わかった。」

 「モンドはさらに前進して、攻撃を誘発させて。」

 「よし。」


 モンドはフィールドの中央付近に来る。そこへギャンザは嬉々として攻撃してくる。


 『ザンギャアー!』

 「ぐおっ・・・なんつー衝撃だ・・・。」(HP:9999→8999)

 「1000も喰らった?!」

 「これを1にできるラッピーって・・・。」


 すさまじい土煙をあげ、地面はひび割れる程の衝撃をモンドは一身に受ける。だが、おかげで腹のウィークポイントを見せてくれた。


 「よし、行けラッピー!アストロカノンだ!」

 「らっ・・・ぴぃいいいいいいいいいむ!」

 『ぐぼぼぼぼぼぉおおおおお!』


 強力な貫通ビームが、ギャンザの腹を貫く。が、それだけでは倒れそうにない。


 「一撃じゃ倒しきれないか、ならレイ、もう一回サイコキネシスだ!」

 「らぴ?」

 「らぴだ!」


 らぴっ!と再びレイが念じると、ギャンザの体は硬直する。しかも、弱点を晒したままだ。


 「よーし!反撃だ!それっロケットレンチ!」


 トビーはレンチをワイヤーで繋いで、遠距離から殴る。


 「モンドはさらに『タイムライダー』の能力で、動きを制限して!」

 「ようやくこいつの出番か。」


 モンドは腕時計の竜頭を引く。


 「『ストップ・ザ・タイム』!」


 その瞬間、パーティメンバー以外の時間が停止する。


 「時間止められるって・・・やっぱスゴいね。」

 「めっちゃチートだよね。」

 「1ターンしか止められないんだから、話してないでさっさと攻撃しろよ!」

 「よし、ラッピーはもう一回チャージ!」

 「らぴ!」

 「レイも、攻撃できる?」

 「らぴがある。」


 レイも指先から『サイコレーザー』を発射する。


 「結構ボコボコにしてるハズなのに、硬いな!」

 「そうでしょう、ホントに無駄に硬くてテンポが悪くて・・・。」

 「それももう終わる。」


 続いて、トビー、モンドも攻撃をしてターンが終了。ギャンザも動き出すが、もう遅い。


 「らっぴぃいいいいいいいいむ!」

 

 再びのアストロカノンが、ギャンザを撃ち抜き、爆発が起こる。

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