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教育!地球の言葉

 「それで、俺達はなにすればいいんだ?」

 「レイがここにいるシチュエーションは・・・多分、一番最初の主人公の出会いじゃないかな。」

 「出会い?」

 「そう、天体観測のために真夜中の学校にやってきた主人公が、宇宙からやってきたレイと出会うんだ。」


 レイは、知的生命の生態を調べる職務に就いていたのだが、宇宙船が壊れて地球から出られなくなってしまった。そこで出会った主人公から、地球の言語や風俗を学ぶのだ。


 「らぴー♪」

 「れーい♪」


 今のレイの脳は、生まれたばかりの赤ん坊のように純粋だ。聞いた言語を学び、自分の言葉としてしまう。


 「じゃあ今らぴ語を学んでるのは、地球人の僕たちにとっては非常にマズいんじゃないの?」

 「人間語を喋れなくなる可能性もある。」

 「ラッピー、ストーップ!」


 ~10分後~


 「ラーニング完了、らぴ。」

 「本当にできたのかな?」


 どうにかレイ・リープは意思疎通ができるまでに言語を覚えた。


 「それで、レイはどうしてここに?」

 「レイにもよくわからないのだ。レイはらぴの調査のために、らぴに降り立ったはずだったのに、いつの間にからぴにいた。」

 「思ったよりも単語へのらぴ語の浸食がヤバいな。」


 一人称以外のすべての名詞が『らぴ』で統一されてしまったようだ。これはこれで宇宙人らしい文化なのかもしれないが、失敗したようにしか見えない。


 「ともかくレイはらぴを見つける必要がある。」

 「僕たちも手伝うよ。きっとそれがクエストのお題だからな。」

 「らぴ!」

 「ラッピーも手伝いたそうだし。」

 

 現状そうとしか考えられない。この世界のどこかに、レイの宇宙船もあるのだろう。実際原作でもそれがエンディングルートの一つだし、そうかもしれない。


 「原作ではどこに落ちたの?」

 「ルートによって、山中だったり、海の底だったり、あるいは科学者に回収されてしまったり、様々なんだ。歩いて探すしかないか・・・。」


 勿論ルートによって、エンディングも大きく異なる。無事に宇宙に帰れるもの、地球に居ついたり、あるいは死んでしまうエンディングも・・・。この世界では、どんな結末を迎えるのかは、僕たちの活躍によるだろう。


 「レイはらぴたちの協力に感謝する。」

 「僕らのことも全部『らぴ』なのか。」

 「レイ的には僕ら全員『地球人』のくくりなんだろう。」

 「らぴっぴ!」

 「ラッピーもよろしく頼む。」

 「ラッピーだけは別なのか・・・。」


 とりあえず、レイが仲間になった!


 さて、探すと言ってもどこへ行ったものか。


 「多分校内には無いと思うけど、あるとすれば、グラウンド、花畑、あとプールかな。」

 「プール?」

 「さっき見たら開放されてた。」


 そのうちメインクエストでも行くことになるんだろうけど。と、ふと気づいた。


 (あれ?今さっき解放されたってことは、今やってるサブクエストも最新のものということになるんじゃ?)


 どうやら一番上からこなしていくのは悪手だったかもしれない。やはりバカと煙はなんとやらだ。


 「なぜ俺を見る。」

 「それはともかく、ゲーマーとしてはどこが正解だと思う?」

 「ん?んー・・・そうだな・・・。」


 ちょっと考える。原作では花畑以外のロケーションにイベントがそれぞれ用意されていた。グラウンドで天体観測したり、プールでは水泳の練習したり。


 「まずはグラウンドに行ってみようか。」

 「グラウンドなぁ、また戦闘にならなければいいけど。」

 「ノベルゲームで戦闘?」


 に、なりかねない。実際エンディングによっては、地球人を危険分子とみなしたレイの同胞たちによって、地球そのものが滅ぼされるルートもあるのだから・・・。


 そう考えるとなんだか恐ろしくなってくる。レイに対してネガティブな選択を取り続けると、滅亡ルート真っ逆さまだ。もしもこのクエストがそんな要素を再現しているとすると・・・。


 「おい、さっさと着いて来いウサギエイリアン。」

 「り?」


 さっそくダメかもしれない。


 「ちょ、ちょっとモンド?!モンドさん?!モンドさま?!」

 「なんだお前突然。」

 「なんだお前じゃねえよバカかキミは。」

 「は?」

 「初対面の女の子に対して、そんな反応はないと思いますわ。」

 「女の子って、所詮擬態したエイリアンだろう?」

 「だからってそんな態度はないだろう?」

 「るー?」


 そういえば、タイムライダーの世界には宇宙人も少数ながらいるんだった、そのいずれもが、地球人に対して敵対的なのだからこうなるのも仕方がないのかもしれない。


 「成程な、だがあのエイリアンの仲間は、地球を滅ぼすぐらい獰猛な種族なんだろう?警戒するに越したことはないだろう?」

 「獰猛・・・なのかな?さすがに同族を捕らえた挙句人体実験を施されたら、怒りだって湧くだろう?」

 「そりゃ・・・ひどいな。だが・・・いや、これ以上言うまい。」


 モンドもさすがに矛を収めた。地球人とエイリアン、どちらが狂暴なのかという議論をするつもりはない。


 「らっぴー♪」

 「らっぴー。」


 少なくとも、ラッピーと戯れている姿からは、そんな凶悪な宇宙人という様相は、おおよそうかがえなかった。


 「うーん、別に宇宙船が地面に突き刺さってたりはしないなぁ。」

 「そんなもの目立ってしょうがないだろ。」

 「宇宙船にはステルス機能が備わってて、目視じゃ見えないって設定もあるんだけど。」

 「それを先に言わんかい。」


 そういえば言ってなかった。サイズは1人乗りのポッドのような大きさながら、単機で地球の重力を振り切れるだけの出力がある。グラウンドに隠されているパターンとしては、地中に埋まっているというのがある。


 「らぴはレイのらぴのことをよく知っている?」

 「まあ、何周もしたし。」

 「ぴ?」

 「なんでもない。」


 レイに対しては、自分がゲームのキャラクターであるといった話はしていない。ただでさえ意思疎通が難しくなっているのに、ややこしいことになりそうだ。


 そもそもレイはどういう扱いなのだろうか?イベント用のNPCともどうやら違う。このまま仲間になってくれるのなら、すごく嬉しいのだが。


 「なにニヤニヤしてんだお前。」

 「いや、改めてレイって可愛いなって思って。」

 「うわキモ。」

 「待って、そういう意味じゃなくて。原作何周もプレイしたから、思い入れが強いんだって。」

 「二次元に恋するとか恥ずかしくないのか。」

 「お前らだって二次元だろうが!」

 「うわっ、アスマってば僕たちのこと内心ではそんな風に見下してたってわけ?仲間だと思ってたのに傷つくわー。」

 「最低ですわ。」

 「あー、ごめん、なさい。そんなことはないから、仲間だから。見捨てないで!」


 わすれちゃいけない。あくまで彼ら彼女らは、ゲームの世界からやってきた本人なのだ。レイのこれからだって、僕たちにかかっている。


 (あれ、てことはレイと仲良くするチャンス?これってめっちゃチャンスなんじゃね?)

 「おーい、またキモい顔になってるぞ。」

 「よし、そうと決まれば即行動・・・まず手をつなぐところからだな!」

 「うわあ。」


 レイは手をつないでいる。


 「らっぴー♪」

 「らっぴー。」


 ただしラッピーと。


 「がーん・・・。」

 「まあ、なんだ。残念だったな。」

 「なにもそこまでショック受けなくても。」

 「そういえばそうだった・・・ファーストコンタクトはラッピーが済ませたということは、これはラッピーが主人公ということで・・・。」


 思わぬ伏兵があったものだ。今回の主役は月ウサギのラッピーというわけだ。ウサギつながりで仲もよい。


 「ええい、さっさと宇宙船を見つけて、このクエストをクリアするよ!」

 「急に元気になりやがって、躁鬱かよ。」

 「まあ、やる気になってくれたんならいいんじゃない?はいコレ。」

 「うぉおおおおお!!」


 トビーお手製の金属探知機で、遊馬はグラウンド中を駆けまわった。

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