宇宙!ファーストコンタクト
「・・・綺麗。」
美鈴は思わず口にしていた。人の容姿を軽々しく口にすることはすごい失礼にあたることだと、幼少の頃より教えられていながら。
『彼女』は人の姿でありながら、人ならざる者のような妖しい色気を湛えている。
だがそれ以上に、『彼女』は『綺麗』であった。その髪は空に架かる天川のようで、その瞳は渦巻く銀河のようで。さしずめ、纏うオーラは星雲のようだ。
特に目を引く点として、アンテナのような、あるいは白い羽のようなカバーが両耳に備え付けらており、時折ピクピクと動いて周囲の情報を集めているようだ。
「おい、お前。何者だ。」
そんな近寄りがたくもある雰囲気の持ち主であろうが、モンドは構わずに警戒心を露わにする。彼女が今回の敵という可能性もあるのだから、この反応は正しいのかもしれないが。
「・・・?」
が、彼女は返事をする代わりに小首をかしげて答えた。
「モンド、ステイ。」
「俺はイヌか!」
「ひょっとして言葉が通じていないのでは?」
「・・・?」
「どうだかな。そういうフリをしているだけかもしれないぞ。」
「考えすぎじゃない?いくらなんでも。」
さて、遊馬は考える。この彼女も、何かのゲームの登場人物だったような・・・。だが、ビジュアルに見覚えは無い。
「えーと、Hello?」
「?」
「ボンジュール?」
「??」
「ナマステ。」
「???」
いずれの言葉の挨拶にも、彼女は反応しない。
「らぴ!」
「りー?」
「りっぴぴ!」
「らぷ!」
ただ1人、ラッピ-の言葉を除いて。
「意思疎通出来てるみたいだね。」
「いや、何語だよ。俺達には出来てないから。」
「ラッピーのらぴ語だけはわかるのですね。」
「らぴ語ってなんだ。」
「まるで宇宙人と話しているような感覚だ・・・。」
唯一話が通じると思ったラッピーとだけ、彼女は話(と言うよりもオウム返しのように聞こえる)を始めた。
それにしても宇宙人か・・・。
「あっ、そうだ。」
「おっ、なにか思いついたアスマ?」
「ひょっとして、『エイリアンは恋ウサギの夢を見るか?』のレイ・リープじゃないかな。」
「彼女はアンドロイドなの?」
「エイリアンだって言ったじゃん。」
それは、地球人のことを勉強しに来た宇宙人が主題のノベルゲーだ。泣きゲーとしての面が強く、遊馬も初プレイ時はラストのレイが宇宙に帰るシーンには大いに泣いた。
「レイもウサギ型宇宙人だから、月ウサギのラッピーとシンパシーがあるのかもしれない。」
「なるほど。なるほど?」
「エイリアンってことは、危険な存在なのか?」
「たしかに超能力は持ってるけど、そこまで危険ではないかな。」
「超能力って、どんな?」
「例えば・・・星を降らせたり、天候を操ったり、地球上から空気を消し去ったり。」
「十分危険に聞こえたんだが。」
「らぴらぴ!」
「るーぷ♪」
レイは指の先を光らせて、ラッピーとじゃれ合うように踊っている。願わくば、あの光を貫くのが僕らでないことを祈る。




