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拳闘!一瞬の攻防

 「行くぞ!」


 またバエル・レベリオンはパイロキネシスのポーズを組んでいる。発火能力は目に見えない攻撃だが、その予兆から推察することはできる。大きく旋回しながら接近する。


 「確かに強力だが、接近さえすればまず使われまい!」


 本来ならば敵の遠距離武器の射程を殺しつつ、こちらの近接武器のリーチを生かして戦うべきなんだろうけど。ナイフじゃ殴りと大してリーチ変わらんじゃないか。


 まあこの文句は言ってもしょうがないとさんざんわかっていた。その代わり、近接戦闘はレベリオンの基本なだけあって、格闘スキルは充実しているのだ。


 「どれだけ早いラッシュであろうと所詮は単純な突き、ガードするのも容易なはずだ!」


 怖くない、鋼鉄すら溶断できるフォノン弾を弾く拳なんか屁でもない!そう自分に言い聞かせ、鼓舞し、自分で自分をだます。


 『フシュウ!』


 ダークリリィの接近に、バエル・レベリオンはパイロキネシスのポーズを解いて拳闘の構えをとる。腕4本を攻撃に、残りの2本で防御をするつもりだ。


 「ホアチャア!」

 『やれー遊馬ー!』

 

 格闘ゲームもそこそこ出来る方だ。同じ要領でレバーをガチャガチャと操作してコマンドを入力する。裏拳、掌底、正拳突き、様々なパンチを繰り出すが、それらは尽くガードされダメージにまでとどかない。


 代わりに弾丸のようなラッシュを浴びせられ、ダークリリィは剣呑として一歩を退いてしまう。


 「くっそ・・・やはり、手数が違い過ぎる・・・。」

 『なら足場を崩せ。』


 そうだ、相手は壁にくっついてるだけだ。あの足が離れればたちまち戦闘力を失うことだろう。


 バエル・レベリオンの立つエレベーターの外壁を駆けあがる。


 「足払い!」

 『上手いぞ!』


 愚直に猛突すると見せかけるフェイントを混ぜ込み、足でもって足を征する。


 そしてバエル・レベリオンは宙に放り出され、地球の重力に囚われて自由落下していく・・・はずだった。


 『オイオイオイ。』

 『羽もないのに飛んでやがる・・・。』

 「もうなんでもありか!」


 パイロキネシスとはまた別なポーズをとると、空中に浮遊している。どうやら超能力で浮いているようだ。


 「そこまで手が回るとはな・・・。」

 『他に何か手はないのかよ?』


 この敵は強い。どういう能力があるから強いということではなく、ただひたすらに隙が少ない。能力に頼っているだけなら、必ず攻略法というものも伴ってくれるのだから、そこを突けば容易い。


 だがこいつはただ単純にひたすらに強い。それはつまり正攻法でクリアするほかないということだ。何度も死んでゲームオーバーになって、トライアンドエラーを繰り返す、それが正攻法というものだ。

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