決戦!天にも昇る気持ち
「うっ・・・ぉおおおおおおおおおおお!!!」
体に張り付いた蟲たちを払いのけるように力を滾らせ、ダークリリィを再起動させる。
『遊馬!電気ショックよ!』
「よし!喰らえ!」
立ち上がったダークリリィの膝や肘の関節から青白い閃光がスパークすると、きたいに纏わりついていた蟲はポロポロと落ちていく。
「よし!あとはコックピットの中にも入り込んでるやつらを・・・アシュリー!目を閉じて鼻と口を塞げ!」
「うんっ・・・!」
アシュリーは後ろに健在だった。向こうではそこそこ士官が立っていたが、やはりこちらでは一瞬の出来事だったようだ。
ともかく、アイテムスロットから筒状のものを取り出すと、その底部を擦って火をつける。発煙筒でいぶす作戦だ。
「グッヘェ!ガスマスクとかももらっておけばよかったか!」
しかし苦しいのはゼバブも同じ、煙を嫌がって飛び始めたのを確認すると、ハッチを開けて開放する。そして発煙筒を投げ捨てると、その性質によってすべてのゼバブは火に向かっていく。
「ゴホッゴホッ、とりあえずヨシッ!アシュリーはここで待ってて!」
「うぇええ・・・アスマ、どこいくの?」
「やつをぶっ飛ばしてやる。すぐ戻る。ラッピーはこっちにいろ!」
「らぴ・・・。」
アシュリーとちょっと精神的ダメージを追ったらしいラッピーも置いて、コックピットから遊馬が飛び降りるのを確認すると、ダークリリィはハッチを再び閉じる。
『あれ?閉じちゃったよ?!』
「エルザたちが遠隔操縦してくれてるんだ。心配ない。」
そうして、上昇していくエレベーターシャトルからダークリリィは離れていく。最低限の動きしかできないダークリリィでは戦えない。自動修復装置が仕事をしてくれるまで、少しの間離れていてもらう。
「さて・・・結局生身で戦うことになってしまったな。」
一応、火炎放射器を置いて行ってくれたが、銃身が3mほどの大きさのコイツを担ぐのは少しばかり無茶だろう。それでも強化服のおかげで支える程度の事は出来るし、遠隔操縦でトリガーも引いてくれる。これを使わない手はないだろう。
すっくと立ちあがって、巨大な敵に相対する。それはあまりに巨大で、怖気づいてしまっても誰も文句は言えないだろう。
「ここからは、本当に1人っきりか。」
ゲームPODネクスはダークリリィのコンソールと接続したままだ。そうでなくてはエルザたちの遠隔操縦も出来ないし、それは仕方がない。
だがアイテムを向こう側から取り出すことも出来ないのは痛い。まあ、どのみち一撃喰らえば即昇天するのだから、元から気休め程度にしかならなかったのだ。早々に未練を捨てる。
覚悟を決めて、自分を見下ろす赤い複眼を睨み返す。
『ジョワァアアアアアア!!』
バエルも自分を見上げる遊馬を新たな敵と明確に認定したようだ。人間のような口と歯をむき出しにして、咆哮を薄い空気に振るわせ、己の存在を響かせる。




