治療!2人を繋ぐ包帯
さて、新たな武器を得てウキウキな遊馬は、順調に敵を撲殺しながら破壊されて道の寸断されていた13号車にまでやってきた。
「よっと・・・ここ壊せば崩れそうだな。アシュリー、ちょっと下がってて。」
「うん。」
「おりゃっ!」
壊れた座席や、崩れた天井のガレキなどが積もって道を塞いでいたところを、押したり蹴ったりして崩していく。
格闘すること数分、道は拓けた。かつて通路があった場所を塞ぐガレキを踏み越えて、少し前に通ったグリーン車への道を踏む。
「よし、この売店だな。すこし休もう。」
勝手知ったる他人の店。冷蔵庫からジュースを取り出してアシュリーに渡してやる。
これからの道もまだまだ長いので、少し補充もしておこう。アルコールでもう一回火炎瓶を作ってもいい。
そうえいば、と最初のアラニアとの戦いで傷ついた腕の包帯を剥がしてみる。
「うっ、なんか気持ち悪くなってる・・・。」
痛くはないが赤く腫れあがっていた。ナイフで切り落として膿を絞り出したいところだが、不衛生な今の環境ではそうすることもままならない。
ライターであぶろうか?と生兵法を試そうしていると、アシュリーが脇からのぞき込んできた。
「うわっ、ひどい。」
「あんま見ない方がいいよ。」
「・・・私を助けるために?」
「そうはそうだけど、気にしないで・・・アシュリー、そのケガどうしたの?」
「さっき、転んじゃって。」
「そうか。」
アシュリーも何も言わないから気づかなかったが、手を擦りむいているようだった。
「アシュリーのも消毒しよう。ほら、おいで。」
「え、でも・・・。」
「痛いかもしれないけど、我慢してね。」
「うん・・・。」
酒瓶の中身を布に浸して、つんつんとアシュリーの手を消毒してやる。
「いたっ・・・。」
「ごめんね、優しくシュッとできるやつがあればよかったんだけど・・・。」
「ううん、平気。」
「えらいね。」
最後にフッと息を吹きかけて、アルコールを飛ばしてやる。
「じゃあ、今度はわたしがやってあげる。」
「うーん・・・じゃあ、頼もうかな。」
「よーし。」
「・・・優しくしてね?」
にっこり笑うアシュリーには、まさか仕返しをしようなんて気持ちは微塵もないだろう。
「いっ・・・つっ・・・。」
「大丈夫?」
「平気・・・けど、だんだん楽になってきたよ。」
蒸発するアルコールの感覚が気持ちいい、がそれ以上に痛みがあっという間に引いていく感触がした。
「ん?アシュリー、ケガしてる手でやったのか。」
「え?」
「そっちの方の指はいたわってあげなよ。」
「ごめん。」
そうだ、アシュリーの体にはEADの抗体があるんだった。それが傷口から傷口へ入ってきたのかもしれない。
感染症の観点から言えばあまりよろしくないことだが、おかげで助かった。お互いに包帯を巻きあうころには痛みはすっかりなくなっていた。
「楽になったよ、ありがとうアシュリー。」
「うん!」
ひとつ、絆が深まった気がする。




