絶望!救いのない物語
「アシュリー、もう歩けるかな?」
「はい、もう大丈夫です。」
「らぴ。」
「うん、平気だよ。」
「そっか、辛かったら言うんだよ。」
子供の扱いを知らない遊馬は、ちょっとおっかなびっくり、手探り感覚でアシュリーと会話する。実際ラッピーを預けたのも、ラッピーに子守りをさせようという魂胆があるからだ。
「まずは、後部車両を目指そうか。途中危険なところも通るから、絶対に離れないで。」
「はい。」
「弾とかアイテムも見つかるといいけど。」
消毒液替わりのお酒と、包帯代わりに千切ったカーテンでクラフトした救急キットで応急処置を施した腕を支えながら、頭は先の事を考える。
「らぴ!」
「ラッピーを抱えておくといい。すぐどっか行っちゃうからね。」
「そうなんですか、ラッピー、おいで?」
「らぴっ!」
「うふふ、よろしくね。」
とにかく、今はアシュリーを守りつつ進むしかない。ただ、武器が貧弱な遊馬よりも、勇敢なラッピーのほうが頼りになりそうだけど。
「ねえ、アシュリーは他の人には会わなかったの?」
「ううん、誰にも。」
そうだ、原作ゲームとこの現実とではシチュエーションが違い過ぎる。他の主人公たちはどうなってるんだ?遊馬は原作の4エンディングともすべてクリアしているはずなのだが・・・。
(なにか忘れてるんだろうか、僕は。)
そのエンディングがどれもこれも、誰かが犠牲になるか、根本的な解決になっていない鬱エンディングばかりで、4つクリアした時点で辞めてしまった。
ハードモードとか、難易度の高い周回要素もあったりしたのだが、その頃は前々から待ち望んでいたラッピーの新作が出るまでのつなぎとしてしかデッドソイルはプレイしていなかった。
今にしてみればゲーマーの名折れだった。隅々までしゃぶりつくすほどにプレイしなければ、ゲーマーとは言えないだろう。ラッピーは大変に楽しんだが。
「ひょっとして、幻の五週目があったんだろうか。」
表の全ルートクリアしたら、隠しルートが現れるというのはお約束だ。第5のルート、真エンディングのルートがあったのかもしれない。普段は攻略サイトも覗かずに、自力でクリアするのが信条だが、せめて攻略情報だけでも見ておけばよかったと内心後悔する。
これは、遊馬への試練であり罰なのか?全クリしなかったことへの罰であり、今からクリアしてみせろという試練。デッドソイルにも、ダークリリィ同様に続編を願う神さまがいるのかな?
(救いのないエンディングに、続編を願う声、ありえない話ではないのかもしれない。)




