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作戦!包囲戦術

 続いて、遊馬のターン。とにかく使えるスキルがないか、ゲームPODのカーソルを動かす。


 「どうしよう・・・。」

 「アスマ、落ち着いて。キミの武器はゲームへの知識だろう?この状況を打開できる策もきっとわかるはずだ!」

 「ありがとう、トビー。」


 まず、全員の持ち味を確認しよう。まずラッピーは一回の攻撃に1しかダメージを喰らわない。反撃で受ける分を考えたとしても、1ターンに最大2しか喰らわないというのは、この状況では破格だろう。この戦い、ラッピーの攻撃が一番のキーになるだろう。


 次に美鈴。一発喰らえば即アウトな体力だが、ラッピーの次に行動出来て、ターゲットにもならないなら、率先して回復役になってもらいたい。


 あとは僕のスキルかアイテム・・・と言っても、大したものは持っていなかったはず・・・。


 「いやそうか、荷物持ちとしてモンドから何か渡されていたような・・・あった!『レ-ザーシェル』(ダメージ60%カット)!」


 タイムライダーのゲームの仕様上、防御武器の盾はあまり使われない。だから使わずに荷物として預けたのだろうけど、おかげで盾役としての責務を果たせる。


 「でもこれを『装備』しちゃうと、ターンが終わっちゃうんだよな・・・使うのは移動してから、『プレイヤー』のスキルで次のターンにしようか。さて、どう動いたものか・・・。」


 バトルフィールドを確認する。気絶しているモンドの目の前にカサブランカがいて、その斜め後ろの位置にラッピーが、斜め前に美鈴、3歩ほど前にトビー、そしてモンドの真後ろに遊馬がいる。


 ひとつ面白い図式が見えた。だが案外、筋が通っているし、挽回の奇策となるやもしれない。


 「よし、僕はこう動く!」

 「カサブランカの真横に?!」

 「危険じゃない?」


 大胆にも、カサブランカの横に陣取る。


 「僕の手番はこれで終了。そして、次のラッピーの手番で『レーザーシェル』を使用、『装備』!」


 手元に傘の骨のような盾が出現し、それを握ると光の膜が形成される。半透明の光越しに、カサブランカを見据える。


 「ラッピーはカサブランカの後ろに。美鈴も僕の反対側に!」

 「そういうことですのね!」

 『なるほど、これは・・・動けない。』


 カサブランカの四方を、元から高耐久のモンド、盾を装備した遊馬、1しかダメージを受けないラッピー、そしてターゲットにならない美鈴で囲む。射程1マスの近接攻撃しか持っていないカサブランカには、この4人しか射程に収めることはできない。名付けて、『人は城、人は石垣、人は堀』作戦。


 「このまま、トビーが遠距離攻撃を!」

 「All right!Take it!」

 『そうくるか。だがこの程度で俺は押し切れないぞ。』2775/3000

 「しかも、遠距離攻撃では反射は発生しないようだね。」


 なかなか穴のある反撃スキルだ。これならなんとかなる、と思えた矢先。カサブランカのターンだ。


 「ぐっはぁ!?そりゃ・・・ロボットなんだから強いよね・・・。」200/500


 一気に半分以上も削られた。ガードはしていないとはいえ、防具を装備していなければ確実に一撃で葬られていたことだろう。


 (これ、ジリ貧じゃないか・・・?)


 ガードで半分までダメージを減らせるとはいえ、それでも150もらう。


 一方回復できる数値は、100回復できるカロリーブレッドが、気絶しているモンドを除いて4つ、80回復のおいしい水が3つ。合計640.フルガードしてもあと5回しか耐えられない。


 その一方、あたえられるダメージは、最大でも225×5で1125。ラッピーやトビーもアイテムを使用する関係上、それよりも低くなるが、どうあがいても足りない。


 (いや、1ダメージしか喰らわないラッピーを攻撃してくれれば、14ターンぐらいは耐えられる。けど、そう何回も狙ってくれるハズないよな。明らかに雑魚とは違う思考ルーチンだし。)


 大体、マスコットがボコられるというのはあまり見たくない光景だ。


 となると、望みは一つ。


 「あと5ターンの間にモンドの気絶が治ること!」(遊馬体力200→300)

 「らぴぴー!」(ラッピー体力:4 カサブランカ:2670)

 「立ってヒーロー!」(遊馬:300→400)

 「キミが頼りだモンド!」(カサブランカ:2550)

 「グワー!」(400→250→350)

 「らぴ!」(ラッピー体力:3 カサブランカ:2445)

 「モンドさんカンバーック!」(遊馬:350→430)

 「それっ!」(カサブランカ:2325)

 「グワー!」(430→280→380)


 しまった、アイテムの使用順を間違えたかもしれない。


 「ラッピーは・・・そのまま攻撃!」

 「らっぴ!」(ラッピー体力:2 カサブランカ:2220)

 「くっ・・・アイテムがありませんわ。こういう時、手持無沙汰になりますわね・・・。」

 「モンド、ホントに起きてよ!」(カサブランカ:2100)

 「グワーッ!・・・水は、ラッピーに使おうか。」(遊馬:380→230 ラッピー体力:2→6)


 そして、運命のターンがやってくる。


 「らぴぴ!」

 「モンドさん!」

 「モンド!」

 「タイムライダー!」


 「やれやれ・・・うっとうしいぜ、お前ら。」


 気絶して5ターン目、ついタイムライダー、動く。


 『成程・・・。』

 「さっきはよくもやってくれたな、お返しだ!!」


 右手のガンに炎が奔ると、カサブランカの足を撃ち抜く。


 「大体お前ら、脚部のバッテリーがどうとかいう話を忘れてるぞ。」

 「どこかの誰かさんが気絶してくれたおかげで、すっかりそれどころじゃなくなってたんですけど?」


 ゲーム的には『クリティカル』だったんだろうか。モンドの一撃によってカサブランカは倒れ、動かなくなった。


 『戦闘終了』

もう二度と、適当に数値を決めて計算に四苦八苦しないと決めたのだった

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