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勘違!早すぎた埋葬

 『我々は、一人の友人を喪った。』


 技師もオペレーターも、職場の違う者たちも、その時ばかりは皆一様に格納庫に集まっていた。勿論、司令室や情報室には最低限の人員が残ってはいるが、それでもモニター越しにその葬儀に参列している。


 『彼と一緒にいた時間はそう長くはなかった、だが確かに彼は私たちの友だった。』


 葬儀、その棺であるライトレベリオンの中には遺体は無い。マイクロウェーブの水蒸気爆発のしばらく後、海中に没してきたこの機体には遊馬の姿はなく、代わりに致死量にも達するような血痕が残っていた。


 『すべては私のミスだ。采配を見誤った、勇気を振り絞った彼を、私は見捨てたのだ・・・。』

 「司令、あんたのせいじゃない。」


 これは自分の判断ミスだ、沈痛な面持ちでクリス司令は言葉を綴る。だがそれを責める者はこの場は一人もいない。ただやるせなさと虚無感が場を支配していた。


 『彼の事を知っていた者、これから忘れない者たちよ、敬礼!』


 ビシッ!と皆が固く手を掲げ、1人の戦士の死を弔う。なけなしの勇気を振り絞った半端ものは、今こうして死を迎えたことで初めて戦士と認められた。


 「うーん・・・。」


 そんな様子の中、一人だけ敬礼をせずに頬杖をついている男が1人。弔われている遊馬の父、和馬である。


 「和馬、お前は祈らないのか?いや、皆まで言うな。きっと私を憎んでいるのだろうそうだろう?」

 「いや、別に。」

 「言ってくれていい。ぶつけてくれていい、すべて私の失態だ。」

 「いや、そうではなくてな。」

 「君の息子は勇敢だった・・・なんて言ってほしくも無いんだろう。ただ返せと。」

 「ダメだこりゃ。」


 あまりにも聞く耳もたずなんで、いっそ何かふっかけてやろうかとも思ったが、さすがに自重した。


 父としての勘か、それともクリエイターとしてのサガか、ともあれ遊馬が生きていると和馬は直感していた。


 「何事だ!?」


 そのことを口にしようとした時。赤い警告灯が灯って艦内にサイレンが響き渡り、和馬の声をかき消した。


 『司令!未確認機体がこちらへ近づいてきています!』

 「敵の追手か!数は?!」

 『数は1!データ識別できません!映像出ます!』

 「こいつは・・・!」

 「あー、うん。」



 瞬間、モニターを見ていた乗組員全員に衝撃が走った。


 「あれは・・・カサブランカだと?!まさか大物が直々に我々の始末に来るとは・・・。」

 『司令!』

 「うむ、こうなれば徹底抗戦だ。」


 クリス司令は、先ほどまで哀悼の意を述べていたマイクを掴み、声高々に宣言する。


 『全艦に通達する!本艦はこれより迎撃態勢に移り、散っていった戦士への手向けとする!』


 オオォー!!!!と士気も高くネプチューンは戦闘体制へと移行する。


 「あー・・・クリス。」

 「何も言うな和馬。」

 「そうかい?」

 「すまないセシル、せめてお前たちだけでも生き延びてくれよ・・・。」

 「うん、全然わかってないな。」


 なんやかんやあって、この後には遊馬の帰還を皆が喜ぶのであった。

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