3話
「おーし、じゃあお疲れさーん。気をつけて帰るんだぞー。」
妙に間延びした声で、
担任の林が終業のHRを締めた。
するとアキラが俺に話しかけてくる。
「綾人ー、ゲーセン行こーぜ」
「あー、わりぃ。今日ちょっと用事あんだわ」
「そっかぁ。じゃあまた今度な!」
「おう。すまんな」
「絶対だからな!!」
「お、おう。わかったって」
「俺にボディブロー入れた分、お前をハイスラでボコることを俺は忘れないからな!!!!!」
「だ、だからごめんって....」
満面の笑みでボコることを宣言された。怖い。
あいつ格ゲーやたらつえぇんだよな。やりたくねぇ。。。
そんなことを思っていると、もう一人の幼馴染の声が耳に入ってきた。
「じゃあまた明日ね。」
そろそろトーコも帰るようだ。
じゃあ、俺も支度するか―――。
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学校の帰り道、空が紅く染まりだした頃。
帰り道が途中まで一緒だった友達と先程別れ、
東子は一人で帰路を辿っていた。
つい先程まで、周りは下校する学生で溢れていたが、家に近づくにつれ、いつのまにか人気が少なくなってきていた。
(今晩のごはん、何作ろうかなぁ。あ、その前に今日出てた宿題やらないと。結構量多かったし、早めにどんな内容なのか把握しておくぐらいは必要よね)
今日、東子の両親は結婚記念日のためにデートに行くとのことで、自分以外には家にいない。
家でやることをぽつぽつと考えながら、
気もそぞろに、トコトコと歩くトーコ。
トコトコトーコ。
(綾人の宿題忘れる癖もなんとかならないもんかなー。別にノート貸す分にはいいんだけど、妙に距離感近いっていうか...)
東子がボーッと今日のことを振り返っている中、
だんだんと陽は傾き、子の影がまっすぐ前に伸びていた。
前方に伸びる長い影を見て、そんなことを思っていたとき、
東子は、もう一つの人影が、自分の足元に伸びていることに気づいた。
(え...?)
後ろを振り返ると、
道の真ん中、10メートル後方に、フードを深くかぶり、マスクをつけた人物が立っていた。
(だ、だれ...?なんか、こわい...)
本能的に恐怖を感じた東子は、家に向かって早歩きした。
幸い、家はすぐそこであった。
すぐに玄関の鍵を開け、中に飛び込む。
そして内側からチェーンロックと鍵を掛ける。
(なんだったのあの人...?と、とりあえず、警察呼んだほうがいいのかな...!?)
バタバタと電話を掛け、110番をする東子。
しどろもどろになりながら状況を話すが、あまり呂律がまわらない。
思っていたより自分が緊張していたことに気づき、冷や汗がドッと出てくる。
警察官も「落ち着いて説明をお願いします」と伝えるが、東子はそれどころではなかった。
一方、東子が家のなかでワタワタしている間、フードの人物は何をしていたのか。
特段、何もしていない。
道路の真ん中で立っていただけだった。
東子の入っていく家を見つめながら。
『トーコ....お前のことは...俺が守るからな.....』