第23話.ショタコンの決闘前(1)
計画を立てようとは言ったけれど、特に思い浮かばなかった。
ラタフィア曰く「アイリーンはぼんやりしていても同級生には負けないでしょう」とのこと。
うん、自分のことだからナルシストみたいになっちゃうけれど、確かにその通りだ。
鍵言の意味的な理由で、攻撃魔法は恐ろしい威力になってしまう。その代わり師匠の知っている水魔法はすべて覚えた。
水魔法しか使えないとは言え、見たところそこそこの魔力量であるティーナには確実に勝てよう。
そんなことを考えながら、私はその夜眠りについた。
―――――………
朝時間通りに目覚め、入学式を除いて学園生活二日目が始まった。
朝食の席で変わらずマッシュポテトをもりもり口に突っ込み、半分寝ながら午前の授業を受けて早々に昼休みになる。
「決闘を申し込まれたんですって?」
「ほふはふへふほー」
「アイリーン、口の中のものを飲み込んでから返事をしましょうね?」
「んぎゅ……はい、ごめんなさい」
昨日と同じく、ラタフィアとジェラルディーンと一緒に座って昼食をとっている。
「一体何をしたらそんな状況になるのかしらね」
「いやー、話したこともない相手だから自分が何をしたのか全く分からなくて……」
「どうしてそんな相手から申し込まれるのよ……」
「なんか、変な感じはしたんだけど……それが何かは分からないんだ」
具体的に言えばあの黒い靄なんだけどね……魔眼の話になっちゃうからお口チャックだ。
「まあ、良いのではなくて? 決闘に勝てば実技科目の成績が上がるらしいわよ」
「へー」
「負けることはないでしょう」
「多分」
「観客席から応援させていただきますわね」
「わたくしは行かないわよ」
「えっ?! ジェラルディーン、来てくれないの……?」
来てくれると思ったのになぁ、と隣に座った彼女を見つめる。じーっと見つめているとそっぽを向いていた彼女のぷるぷるの唇が震え始めた。
「来てくれないの……?」
私はそう繰り返す。
ちらっ、と紅玉髄の瞳がこちらを見た。
目が合う、そして赤くなる頬。ぷいっと再びそらされた顔に私は視線を注ぎ続ける。
「ジェラルディーン……?」
「っ、~~~っ、分かったわよ!! 行けばいいんでしょう、行けば!」
「うっふふふふふ」
「ふふふ」
「笑うんじゃないわよっ!!」
ラタフィアと笑っていると彼女は赤い頬を更に赤くしてそっぽを向く。何て可愛い生き物だろうか。
私は止まらない笑いを押し込める様に、マッシュポテトを口に詰め込みまくった。
これが終われば決闘だ。
何をするか、作法とか全く知らないのだけれど、取り敢えず攻撃してきたらぶっ飛ばせばいいよね。
うん、そう言うの得意。
私はポケットに入っている黒い靄を纏うティーナのバッジの存在を感じながら、もぐもぐと昼食を片付けた。




