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乙女ゲームのヒロインに転生したらしいが、すまん私はショタコンだ~なお、弟が可愛すぎてブラコンも併発したようです~  作者: ふとんねこ
第2章.学園編

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第18話.ショタコンと昼飯


 その後の二時間は『鍵言基礎学』と『水属性魔法基礎』で、寮ごとの授業だったのでジェラルディーンとはお別れした。

 別れ際にラタフィアが「お昼はご一緒しましょうね」と声をかけていたので昼に会うことになりそうだ。


「お昼ってどこで食べるんだっけ」


「学園内に大きな食堂がありましてよ」


「へえ」


 そして授業後、くるくるきゅーと切なく空腹を訴える腹を抱えて、その大きな食堂とやらへ行くことになった。




「本当に、大きいな……」


 この校舎自体が「城か?」ってくらい大きいからあれだけど、四寮分の四学年全員が座れるってかなりのものだと思う。


「時間割に余裕が出てきますと、ここではなく街へ行かれる方もいらっしゃるそうですわよ」


「へぇ……」


 じゃあ学園の生徒全員がいる訳じゃないのね。それにしても多いけど。


「それから、寮長と副寮長の方々は別の場所で昼食を摂るそうです」


「そうなの。良かった」


 心底ね。


「ジェリーはまだ来ていないようですね。先に取りに行ってしまいましょう」


「うん分かった」


 やはりここも好きなものを好きなだけ形式だ。


 むむ……あの芸術的な肉の盛り方は。


「ん? おお、君たちか。さっきぶりだな」


「さっきぶりだね、ノワール」


「ご機嫌よう」


 肉しか食わない系男子、寮で夕食の時に遭遇した同級生の彼である。

 先程の水寮の一年生だけの授業二時間で彼の名前を知った。

 これでマイケルだったらどうしよう、心の安定剤がと思っていたから、ちょっとモブにしては目立つ名前でも気にならなかった。


「相変わらずのお肉だね」


「ああ。ここの肉料理はどれも美味そうだから、ついな」


「私もそれ食べよう」


「では私も」


 ノワールはとてもフレンドリーなので、女子男子関わらず色々な人と話していた。

 魔法の実践は少し苦手らしく、恥ずかしそうに苦笑していたが、入学二日目授業初日にして人望がえらいことになっていた彼は、沢山の友達に囲まれて色々教えられていた。


「学園生活ってのは、楽しいものだなぁ」


「そうですわね」


 十センチはありそうな山の上に更に肉を乗せていくノワールの言葉にラタフィアが頷く。


「君も楽しいか?」


「うん。すごく楽しいよ」


「ははは。それは良いことだな!」


 ノワールはニカッと爽やかに笑って更に肉を追加している。すごい。

 彼と話しているのはとても楽しい。レオンハルトに見られたら面倒なことになりそうだが。


「よし、これで最後……っと」


 最後にステーキを山に被せて、彼は満足げに肉しか乗っていない皿を眺めた。


「じゃあまたな!」


「うん、またね」


「はい」


 私はお気に入りのマッシュポテト(水寮のものと多分同じだ。いや、同じじゃなくても是非食べ比べたい)を皿に乗せ、いくらかの野菜をそこに添える。


「明るい方ですわね」


「うん。そうだね」


 ラタフィアはトマトを取る。つやつやして美味しそうだ。


「私もー」


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


 肉と野菜とパン(山のごとしマッシュポテトを添えて)の乗った皿を手に、料理に並ぶ人の列に目を走らせる。


「あ、ジェラルディーンいたよ」


「声をかけて参りましょう。席は、あの辺りでよろしいですか?」


「うん、じゃあ席取ってくるね」


 私は席を取りに、ラタフィアが取り巻き令嬢たちと列に並ぶジェラルディーンに声をかけに行く。


 取り巻き令嬢たちも来るのかな……

 なかなかそんな大人数が座れるところ無いぞ。

 空席を前に悩んでいるとラタフィアが戻ってきた。


「ジェリーしか来ないようですわ。ですからここで平気でしょう」


「あ、そうなの? じゃあいいか」


「他の方々は別のところに席を取ってあるそうですわ」


「そっか」


 そうして私たちはジェラルディーンが来るまで横並びの席に座って待っていた。




「待っていなくても良かったのに……」


 しばらくしてやって来たジェラルディーンはそんなことを言いながらラタフィアの隣に腰かけた。


「皆で食べた方が楽しいでしょう?」


「そう、かしら……」


「うん。間違いないね」


 流石、ジェラルディーンの皿はラタフィアと同じようにバランスが良い。私のマッシュポテトが目立つ皿とは大違いだ。


「いただきます!」


 私が日本人感覚のまま手を合わせると、二人はきょとんとして私の手を見つめる。

 おっとやらかした。


「我が家特有の儀式? なんだよね」


 そう、実際記憶が戻ってから実家でやっていたら家族全員にうつったんだ。リオが小さな手を合わせて「いただきます!」って挨拶するの、最高で最高な光景だよ。


「そうなんですか……」


「変わっているわね」


「意味的には食べ物の命に感謝、なんだ」


 そう言うと二人は「ふむ」と言った様子で考え込んだ。そんなに深刻にならなくてもいいのに、と思うがこうして考えようとするのは彼女等が良い子だからだろう。


「やってみますわね……いただきます」


「ではわたくしも……いただきます」


「!!」


 実家に帰ったような安心感!!

 ギュンッ、と涙腺にクリティカルなアタックが。リオの「いただきます!」が見たいよぅ……


「何か、不思議な気持ちですわ」


「ええ、そうね……貴方、何て顔をしているの」


「ごめん。ホームシック」


 まだ入学二日目でしょう、とジェラルディーンが呆れた声を出す。

 ラタフィアが「アイリーンはご家族が好きなんですね」と言うから「ん、すき」と若干泣きそうになった。


 そうして私はホームシックを誤魔化す様にまりまりとマッシュポテトを口に詰め込んだ。

 そりゃあもう、ジェラルディーンが呆れを通り越して感心した表情になるくらいには。


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