表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのヒロインに転生したらしいが、すまん私はショタコンだ~なお、弟が可愛すぎてブラコンも併発したようです~  作者: ふとんねこ
第5章.夏期休暇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/190

第23話.ショタコン、目的地へ到着


 ザハード公爵領に入って、きちんと舗装された石畳の道を行きながら思ったことはまず「栄えてんなぁ……」で、次に「今更だけど私のような庶民が公爵様に会って平気なのか?」で、最後に「お淑やかを全力で演じよう……」だった。


 ザハード公爵より地位的には上のレオンハルトと普段結構適当な態度で接している私だけれど、年齢や貫禄、実力は確実に彼より上であるザハード公爵に対してそれじゃあマズイのは分かる。


 友達(ジェラルディーン)のお父さんだから絶対に失礼なことはしたくない。


 それに私のあれこれ次第で公爵領の方々が請け負ってくれると言うリオの帰り道の質も変わってくると思うので、最愛の弟のために私は身体の中の微かすぎる淑やかさを全力でかき集め、それを隅々まで行き渡らせなきゃならないのだ。


 リオのためなんだから、頑張るぞ私。

 ショタコンの矜持を示すのだ。



 って言うか何で出発前に考えが及ばなかったんだ私ーーーっ!!



―――――………



 私たちを乗せた馬車は何ともまあ「しゅげぇ」としか言えない様な塀と森と門しか見えない規模の謎の敷地に入っていった。

 見えないから謎と言うけれど、まあ、ザハード公爵のカントリー・ハウスの敷地で間違いないだろう。


 あっ、カントリー・ハウスって最初何なのか分かんなかったから(しっとりチョコチップクッキーを思い浮かべたよね)師匠に訊いておいたんだけど、貴族の領地にある本邸のことらしい。

 王都にあるのはタウン・ハウスって言うんだって。私のような庶民には規格外の話で「おうちがいくつもあるの? すごいねー!」と言う幼女みたいな感想しか浮かばない。



 それにしても門からの道が長ぇ。

 これあれでしょ、門から屋敷の間の道でタクシーのメーター上がるやつでしょ。


 そんなことを考えていたら突然森がなくなって視界がワッと明るくなった。


「あっ、お庭だ!!」


 窓を開けて外を見ていたリオがそう言ったので私もその隣に並んで外を窺う。


「え、うぉぉ……」


 広すぎでは?


 恐らく馬車は邸宅前に広がる庭園(ベルサイユ宮殿の正面図のあんな感じ)の真ん中の道を通っていると思う。

 つまり私たちが馬車の右側の窓から見ているのは庭園の右半分だけってこと。


 そんなわけで半分なはずなんだけど、それでも広さと素晴らしさがエグすぎて私は言葉を失った。


 完璧に整えられた草花、磨き上げられた噴水や彫刻。柔らかな白色の石畳には枯れ葉一つ落ちていない。

 庭園の向こうには森が見える。この敷地は森に囲まれているんだと分かった。


 広すぎでは??


 恐る恐る窓から顔を出して前方を……恐らく邸宅がドーーンと構えているであろう方向を窺う。


「ピッ」


 やべ、変な声出た。


 ドーーンどころじゃなかった。

 ドーーーーンッ!!! に加えてジャーンッ、シャララララ~ンみたいな、私の貧相な語彙では形容しがたいレベルだった。


 ここはベルサイユだった……?

 立派な金髪縦ロールが育つわけだ……




 学園のデカさは驚かずに理解できた。

 たくさんの生徒が来る学校だし、それが必要な大きさなわけだから。


 でも個人、と言うか一家族? の屋敷でこのサイズはちょっとどころじゃない驚きだ。もはや城じゃんこれ。


 この敷地に私の実家いくつ入る……?


 リオも言葉を失っている。

 私とリオの違いは、私が「ヤベェ」って白目むいてるのに対してリオは「すごい」って顔を輝かせていることね。

 衝撃だよねぇこれは……



 そんな敷地の真ん中を馬車は進み、ベルサイユの如しお屋敷(城か宮殿って言いてぇ)の真ん前にピタリと止まった。

 御者さんが扉を開けてくれるので大人しく下りる。先行していた馬車からはすでにレオンハルトが下りていた。

 馬車はがたごととそのまま去っていく。護衛はギルバート一人が残り、あとは馬を預けに行くようだ。


 大きな正面玄関が開かれる。


 そこには、金髪に炎の様な朱色の目をした背の高いおじさんが立っていた。

 深紅の正装に包まれた身体は服の上からでも鍛えられているのが分かるほど。きっちり整えられた口髭、貫禄に満ち溢れた佇まいだった。


 ほぁーー、間違いなく公爵様っしょ。


 その隣では薔薇色のドレスを着たジェラルディーンが優雅に礼をしている。相変わらず完璧な淑女っぷり。美しく、気品を感じる姿であった。


「お待ちしておりました、王太子殿下」


 お゛ぉ……腰に来るバリトンボイス。


 何やら難しいご挨拶をレオンハルトと交わしているが、その声の良さに私は度肝を抜かれて、繋いでいるリオの手をぎゅーっと握っていた。


「三日間、よろしく頼む」


 なるほどレオンハルトはここに三日滞在するのね……と思っていたら、突然公爵の朱色の双眸がこちらを向いて「ひゅっ」て言いそうになった。驚き。


「ああ、こちらがアイリーン嬢だ」


「ほう、君が……」


「アイリーンと申します! こっちは弟のリオです!! お世話になりますっ!」


 全力でペコォォッと頭を下げる。隣でリオも小さくて可愛い頭を下げていた。癒しの極みか、可愛い、優勝。


「頭を上げたまえ。君の話は娘から聞いているよ」


 どんな話かな、それ。ヘンテコすっとこどっこいストーリーじゃなきゃいいなぁ。


「ジェラルディーン。お前は面白い子だと言っていたが、きちんとしたお嬢さんじゃないか」


 アーッ、ヘンテコすっとこどっこいストーリー!!!


「お父様の前だからだと思いますわ。緊張していると大人しいんです」


 その通りでごぜぇやす。へい。


「ははは、そうか。私は三日後殿下と共に王都へ移動するのでね、三日間だけ我慢してくれたまえ」


「はい……」


 字にするとあれだけど、めちゃめちゃ声震えてるからね! 声が生まれたての小鹿だわ。ガッタガタだよ!!



 そんなこんなで、ガッタガタ挨拶を乗り越えて私たちはザハード公爵邸に迎えられることとなった。


 突撃、公爵邸!!


 この煌めきベルサイユで、私生きていけるかしら……

 最初リオは緊張して私の手をしばらく離さなかったけど、夕食になる頃には落ち着いて好奇心のままに歩き回っていた。


 子供の順応力すげぇ。そして可愛い。


 そして更なる衝撃はね。

 現在お客さんがもう一人いるんだぜ(すごくむずかしいお話を要約)って言われて出てきたのがラタフィアだったこと。


 まさかここでいつメンが揃うとは。


 緊張するけど、公爵がレオンハルトと一緒に王都に戻ればここはいつメン貸し切り状態(使用人付き)になると考えれば何とか。


 いや、食器の一つとっても信じられないくらい高級品だろうから、全然落ち着ける自信がねぇ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 三日後、殿下とともにいなくなる。 「ふゎっはっは。奴の三日天下に過ぎん」 [一言] 「しょ、庶民としては普通ですわ。貴族から見てヘンテコなだけですわ」 庶民「…………」 ……中世…
[良い点] 公爵はショタコンでも驚くほどのナイスミドルなんですねえ。 さすがジェラルディーンのパパ。 殿下との扱いの差よ…。 [気になる点] 一体どんなヘンテコすっとこどっこいストーリーが語られたのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ