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乙女ゲームのヒロインに転生したらしいが、すまん私はショタコンだ~なお、弟が可愛すぎてブラコンも併発したようです~  作者: ふとんねこ
第5章.夏期休暇編

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第21話.ショタコンと馬車旅の始まり


 ガタゴト揺れる馬車。窓を開ければ見慣れない景色が広がっていて、爽やかな風が吹き込んでくる。


「わぁ、お姉ちゃんあれ見て!」


「すごいねぇ」


 あーーーっ、今日も今日とて弟がたまらなく可愛いーーーっ!!


 景色もいいが、それを眺めるリオの方が非常に最高。輝かしい横顔に心が満たされるよ。



―――――………



 ジェラルディーンの手紙を受け取った翌日、そう言うことならとっとと行け、と言う師匠に背中を押され、キラキラしながら荷造りを始めていたリオと一緒に学園に戻るときの分の荷物も作った私。


「殿下、ジェラルディーンからの手紙を読んだんですけど、馬車、本当にお願いしてもいいんですか?」


「勿論だ!」


 とのことなので、レオンハルトがこの村を立つまで待つことになった。


 そう言えば驚きなんだけどね、潜伏邪神ファンが取っ捕まったことが理由かは分からないんだけど、村の外で結界にトライしまくっていた邪神ファンの攻撃がピッタリと止まったんだ。


 ノワールは「警戒は怠るなよ」って言っていたけれど、やっぱり嬉しくてうふふってしちゃう。

 ちなみにノワールは一緒にザハード公爵領へ来るらしい。うん……よろしくね。



 出発の日に肩掛けの荷物を(どこからどう見ても旅行するんですねぇみたいな膨らみ具合)一つずつ持った私とリオは「よろしくお願いします」と揃ってレオンハルトに頭を下げた。


「必ず、お前たちを無事にザハード公爵領へ送り届けよう」


 そんなこんなで、やって来た馬車の停車場所。何とまあ、驚くべきことに馬車は二台あった。


 これはワンチャン、移動中ずっとレオンハルトとお膝を向け合うルートを回避なのでは?


「お二人の馬車はこちらです。荷物を積むのをお手伝いいたしましょう」


「か、貸し切りなんですか……?」


「ええ。殿下が自分に気を遣わず楽しんでほしいとおっしゃられて」


 手伝ってくれるギルバートにでっかい荷物を渡しながら、はぇぇと声にならない声を漏らす。


「ありがとうございます」


「それはのちほど殿下に直接。それよりアイリーン、貴方の耳に入れたいことが」


「な、何でしょう?」


 荷物を積み終えたギルバートが耳に口を寄せてくる。嫌な知らせじゃないといいけど……


「潜伏していたあの男、情報の出所を吐きました」


「え゛っ」


「やはり三年前この村へ来た殿下の護衛騎士の一人でした」


「あ゛っ」


 情報抜かれて消された確定ーーっ!!


 形容しがたい声で呻いた私の肩を優しく撫で、ギルバートは「安心してください。貴方たちの安全は保証しますから」とか言ってるけど、私が呻いてんの、その問題の護衛騎士の件だからーーっ!!


 ダイジョブです、と全然大丈夫じゃない声でギルバートにガッチガチの笑みを向けて、去っていく彼の背を見送る。


 そのとき。横でその話にじっと耳を傾けていたらしい(耳がいいのね!!)リオがポツリと呟いた。


「……その人は、だいじょうぶなのかな」


「……リオ?」


 ま、まさか、この賢すぎる子は……


「お姉ちゃんをねらっている、わるい人たちにつかまっちゃったままなのかな」


 ア゛ーーーーーッ的確!!!


 リオの語彙の中で表現しているからかなりマイルドだけれど、その実「その人まだ生きてるの?」っていうクエスチョンだよね?!

 私の考えていることを察する、というか何と言うか、すんごいドンピシャすぎて、こう、上手い言葉が見つからないんだけど本当にすごいなこの子は!!


「どう、だろうね……」


「うん……」


 何とも言い難い心地になったので、私はその場にしゃがんでリオをきゅっと抱き締めた。


 あー、落ち着く。リオセラピー最高。


 それにしても……

 その行方不明だと言う護衛騎士は、あの日あの場にいた内の誰なんだろう。


 そして、どうしてレオンハルトの護衛騎士が邪神ファンと繋がるんだろうか。


 これが一番不思議なんだよね。

 確かにあの日、私は『精霊の愛し子』の力を全力で行使したよ?


 けど、情報を聞き出そうって邪神ファンが考えるには、その護衛騎士が『精霊の愛し子』の情報を持っているのを知っていることが前提でしょ?


 あいつ、情報を持ってるらしいぜ、捕まえて拷問して聞き出しちゃおうぜ、みたいな感じで動くわけだからさ。


 そんなの不可能では……ハッ、千里眼とかある? 学園長とかアーノルドとか、探す系の魔力を持っている魔導士がいるし……


 イヤーーーッ、そんなんもう対処できないじゃん!!


「だいじょうぶだよ、お姉ちゃん。僕がついてるからね」


「ヴッ……すき……」


 リオの細っこい肩に額をすりすりして、最悪な状況なのかもしれないという予想を振り払おうとしていたら、柔らかく言ったリオが私の頭を小さな手で撫でてくれた。


 本当にたまらねぇ癒しだよ、リオセラピー。永遠にくっついていたい。


「私、負けない……」


「うん」


 まだ見ぬ黒幕め。

 チートなショタコンを舐めるなよ。

 こちとら弟がついてりゃ元気百倍の攻撃力無限大なんだからな!



―――――………



 そういう経緯で今、馬車に揺られているわけなんですけれど……


 めちゃめちゃ乗り心地いいなこれ。


 今年の始め、学園に向かうために行商人の馬車に乗ったじゃない? 王都につく頃には尻が死にかけだったもん。

 それがこの馬車は、王家の紋章こそ付いていないけれど(防犯のために敢えて付けていないんだって)流石のクオリティだ。

 ふかふかクッションによる絶妙な柔らかさの座面。これならそれなりの長旅でも尻が死なずに済みそう。


 ザハード公爵領は王都より遠いから、この馬車旅は五日くらい、かな。


 王国の北部に位置するジゼット村からひょろひょろと南西へ下っていく。王都へは寄らず、いくつかの町を通るらしい。

 王都の西にある緑風門から真っ直ぐ伸びている大きな道に着いたら、あとはその道をずーっと西へ行けば良いとのこと。


 今世初の大旅行。普通にドキドキだ。


 折角の貸し切り馬車だし、思いっきり楽しませてもらうことにしよう!


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