49 未空からのメール
祐介には、根来の笑い声が虚しく感じられた。自分たちが疑われていることなど、祐介にはどうでもよかった。それよりも、未空たちは今頃、どうしているのだろうか、という不安のような感情が胸をよぎっていた。というのも、昨夜の十一時ごろに、長谷川東亜の洋館に訪れた時、部屋の灯りはあるのに、誰も出てこなかった。そのことが急に引っ掛かりだしたのだ。
ふたりはホテルに戻ったのだろうか。もし、戻っていなかったとしたら。
祐介は、自分がこんなことを急に心配し始めたのは、やはり死体を発見したからだろう、と思った。事件の不吉な匂いは、自律神経を不安定にさせ、心を脅かすのだろう。
「何故、あなたがたはこの中川旅館を選んだのですか?」
と塩崎刑事の鋭く冷たい睨みに、根来はさらされている。
「いや、安いからですよ。インターネットで、宿を予約しようとしたら、金額が安いわりに内装が綺麗そうで、料理も美味そうだから、目についたんですよ」
「しかし、それならば、この宿の前の道をちょっと行ったところにある、工藤旅館の方が安いし、綺麗ですよ。あそこからなら、白月浜神社も近いし。なんだか、妙ですね。あなたたちが何故、中川旅館を選んだのか、いよいよ分からなくなってきました。どうも意味深ですね」
「いや、意味深でもなんでもないですよ。第一、工藤旅館なんて知らないし。ただ、サイトを見てみたら、中川旅館が目についたから、予約しただけのことで……」
「なるほどね。まあ、仰りたいことはよく分かりました。つまり、中川旅館に宿泊したのは単なる偶然だったと……」
「もちろんですよ」
塩崎刑事の追及は、そこで終わり、彼は手帳に何か書き込むと、部屋を出ていった。根来は、やれやれと冷や汗を拭った。
「なんだってんだろうな、あいつ。ああいう刑事は一番苦手なんだよ。容疑者に無暗に圧力をかけて、自白に追い込もうとするんだ」
それはあんただろ、と祐介は思ったが、突っ込むこともなく、スマートフォンを取り出し、誰かからメールが届いているかを確認した。
「あれ」
未空からメールが届いている。確か、白月浜に向かっている頃、何通か、メールを未空におくったのだったが、返事がないから、それ以来、確認していなかったのだ。それが、今見てみると、メールが届いている。
祐介は、引き込まれたように、メールの内容を読んだ。メールの内容は、
『やばいことに巻き込まれてる』
それだけだった。祐介は、首を傾げつつ、返信をした。
『どした』
すぐに返信が送られてくるとは思えなかった。なにしろ、今は深夜の二時頃である。普段ならば、未空はとうに寝ている時刻なのだ。祐介は、捜査の区切りが着くまで、部屋に戻れないのではないかと思ったので、ごろりとその場に横たわった。根来も眠くなったらしく、その場に横になった。
その後も、二人は、色々なことが気になりながらも、何もできずに、ぼんやりとしていた。
(一体、未空は何に巻き込まれたというのだろう……?)
事件じゃなければいいな、と祐介は思った。




