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20 ゲームコーナー

 英治はコーヒーを飲み終えると、あとはもう何もすることがないので、席を立った。少し気分は良くなっていた。海をぼんやりと眺めたのが良かったのかもしれない。あとは高杉薫とどうやって再会するか考えるべきなのだろうが、頭が働かない。英治はそれより、コーヒーの代金を払うことに頭をいっぱいにしながら、レジへと向かった。 

 英治はブレンドコーヒーの代金三百五十円を女性店員に支払った。女性店員はにこりと笑って、彼にお釣りを返した。彼はお釣りをもらって、それを財布にしまうと、ふらふらとした足取りで、カフェの外、すなわちホテルのロビーに出た。相変わらず、ロビーには観光客の姿がいくつもあった。


(ホテルと言っても、そんなに変わったものがあるわけじゃないだろうし。土産物売り場も見た。カフェも見た。あとはどこに行けばいいというんだ……)

 英治は、あまり頭が働かなかった。眠気とは異なるぼんやりとした心地に包まれていた。ロビーの奥にあるエレベーターにふらふらと近づくと、案内板に三階にゲームコーナーがあることが記されていた。英治は、妙に惹かれた。ここ八年ばかり、ゲームセンターには行っていない。英治はまたあの電子的な騒々しさと、幻のような光の入り乱れた空間に紛れこんでみたいと思った。かつて、夢中になった非現実的で、SF映画じみた空間のエキセントリックな感覚を思いだしたのだった。


 英治はエレベーターに乗って、三階へと向かった。ドアが開くと、途端にあの爆発的な騒音が飛び交っているのが聞こえてきて、それはエレベーターの箱の中を満たしてしまった。英治は少し後悔したが、咄嗟に引き返す決心もできず、エレベーターから降りた。

 薄暗い店内には無数のけばけばしい光が、忙しなく点滅したり、うごめいていた。英治の目の前にはクレーンゲームの機械がずらりと並んでいる。そのガラスケースの中には、魚のぬいぐるみが一杯に積まれている。英治はマンボウのぬいぐるみの甘えるような黒い瞳をちらりと見た。このマンボウはもしかしたら僕に取ってほしいのかもしれない、しかし、羽黒探偵事務所にこいつを飾るのは不似合いだな、子供に拾われるのが良いだろう、と英治は思って素通りしながら、なんだかぬいぐるみに申し訳なさを感じた。


 クレーンゲームの並ぶ先に行くと、今度はさまざまな種類のゲーム機が並んでいた。レーシングカーを操作する設定の座席型のものや、音楽に合わせて楽器を打つもの、積まれたメダルを台から落とすものなどがあった。その間を子供たちが楽しそうに走り回っている。英治にとっては懐かしい光景だった。

 側にはアイスクリームの自動販売機があって、父親らしき男性が、まだ幼い娘にチョコミント味のアイスクリームを買い与えていた。

 英治は、それに微笑ましさを感じながら、さらに奥へと入って行った。

(うん、あれは……?)

 英治がゲームコーナーの奥をよく見ると、薫がロングスカートをはためかせ、巨大なマシンガンを構えて、大きなスクリーンの中の迫り来るゾンビの集団に向かって、銃弾を連射していた。

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