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104 ゆかりを笑顔にするために

 英治は、自分がこの少女に一体何を求められているのか考えた。自分に対する恋愛感情など芽生えていないに違いない、そんな感情をこんな自分に持ってくれているわけがないからだ、だとすると、一体彼女は、どうして自分と一緒にいたいなどと思ったのだろう、と英治は考え込む。

 英治は、その答えが見つからなかった。ゆかりはバニラのアイスクリームを食べながら、じっと何かを考えている様子だった。

「心細い、ってさっき言ったね」

 と英治はぼそりと言った。

「はい。わたし、ずっと心細かったし、寂しかったんです。でも室生さんに会って、お話ししているうちにだんだんと癒されてきました」

 そうか、寂しかったのか、と英治は思った。


「寂しさなんか、吹き飛ばすために、今からテーマパークに行こうよ」

「テーマパーク?」

「この商店街の先に、小さなテーマパークみたいなところがあるのをこの前、見つけたんだ。子供の乗り物や、レトロゲームみたいなものばかりだけど、気分転換にはちょうどいいと思うよ」

 と英治は、わずかなこの町の観光の経験を活かして、ゆかりを少しでも楽しませようと頭をひねっていた。ゆかりの抱えている寂しさの正体が、英治には分からなかったが、彼女のためにできる限りのことをしようと思っていた。

 ゆかりはニコッと笑って、

「じゃあ、そこに行きましょうか」

 と言った。


 英治の語ったテーマパークというのは、商店街の出口付近にある三階建ての商業施設「白月浜わくわくパーク」のことだった。そこは、一階が昭和レトロな雰囲気が漂う駄菓子屋と昔ながらのレストランになっていて、二階と三階が、子供を主な対象とした児童遊園地とレトロなゲームセンターを一体にしたようなところだった。英治は、ゆかりの寂しさを紛らわすには、童心に返って遊ぶことが大切だと思っていた。


 ゆかりは先ほどまで寂しげであったのに、この話が出てから、にこにこ笑うようになっていた。英治は、ゆかりを連れ、こっちこっちと言いながら商店街を率先して歩いた。商店街の建物の壁はどれも黒ずんだようになっていて、一帯は、潮の匂いに包まれている。しばらくすると、巨大な灰色の建物が建っているのが見えてきたが、これも例外ではなく、古めかしく感じられた。入り口の上に掲げられた「白月浜わくわくパーク」の看板が黄ばんでいる。元々はカラフルな文字だったようだが、その色も今では抜けてしまっていて、相当、時代を感じさせた。


 ふたりが狭い入り口から中に入ると、廊下がまっすぐ伸びていた。廊下の右側にあるレストランは相当、年季の入ったもので、地元の人がやっている地味な庶民食堂と言った方がよかった。オムライスやカレーライスが名物らしい。左側に広がっている駄菓子屋には、大勢の子供たちの姿があり、大福もちのようなほっぺたをおっことしそうな可愛らしい顔で、駄菓子を見て歩いていた。その一角には、白月浜のお土産コーナーもちゃんと用意されていた。

 廊下の奥には、子供たちがひっきりなしに出入りしているエレベーターのドアがあった。その先には階段もあった。親子連れでもない大人が入っていくのはなんとなく場違いな気がして、英治は途端に恥ずかしくなった。

「子供だましかもしれないけど、行く?」

「そのために来たんでしょ」

 とゆかりは笑った。

 そうだ、この子をもっと笑顔にしないと、と英治は思って、エレベーターのドアのボタンを押した。

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