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TwilightGate ~罪と女神と終焉の怪物~  作者: SuikaVoid
第1章 白の世界
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2話「旅の始まり」

あれからどれほどの時間が経っただろうか。



じっとしていても何も変化は起こらないと感じた俺は白い世界を探索することにした。



やはりどれだけ歩いてみても景色は変わらず、白が続いている。


そもそも本当に歩く事ができているのだろうか。

視界に変化がないのでその判別さえ付かない。


ただ、ヒタ...ヒタ...と、頼りなく、足音だけが聞こえるばかりだった。




歩き続けているうちにも気づいたことがある。



1つは俺に関すること。


俺の「記憶」については相変わらずで、自分の名前すら思い出せないが、「知識」については失われていないようだ。

言葉や物の名前は「知識」として知っている。

が、それをどこで見たのか、誰に教えてもらったかなどの「記憶」だけが抜け落ちているらしい。



もう1つ。


ここは暑くもなければ寒くもない。

動き続けているはずなのに疲れも感じない。




...もしかして、俺は死んでしまったのだろうか。


ここは天国か地獄で、天使か悪魔の迎えでも待っていれば良いのだろうか。




そんなことを考えながら歩いていると、視界に変化を感じた。

全てが静止しているはずの白の中で、僅かに白が蠢いた。




その方向に歩いてみる。「それ」に近づくことができる。


ずっと変わらない景色を見ていた俺には、その変化が嬉しかった。


同時に警戒心も生まれる。



俺はそのうごめく白に、慎重に近づいた。



徐々に近づくと「それ」が小動物ほどの大きさで、

微かに膨張と縮小を繰り返していることが分かる。



更に近づくと、その「白」がフサフサの毛並みであることが分かった。



どうしうようか...



手を伸ばせば「それ」に触る事ができてしまう距離まで近づいたところで俺は困惑する。


外見の情報から察するに「それ」は生物のようだ。

この距離まで近づくと僅かな呼吸音が聞こえてくる。


更に、この距離まで近づいて何の反応も無いことから察するに、

どうやらその生物は眠っているようだ。



起こすべきなのだろうか...



俺の知識では、人の言葉を話す小動物など存在しない。

つまり、この生き物を起こしたところで俺の知りたいことを教えてもらえることはまず無いだろう。


逆に、この生き物が人を襲う習性を持っていないとも限らない。


よってこの場合、リスクを負ってまで起こす必要ない、と結論づけた。



それに、とても気持ち良さそうに眠っている。無理に起こしてしまっては悪いだろう。



そう思い、その場を離れようとすると、



その生物の頭部と思われる部位から更に2つ枝分かれしたように生えいているパーツ(おそらくは耳)がピクリ、と動いた。


その後、体全体がモゾモゾと動いたかと思うと、





「キィーーーーーーーーーッ!!」






その生物が高らかな鳴き声を発し、飛んだ。



跳んだ、ではなく、飛んだ。


文字通り、浮いて、浮かんで、浮遊している。



驚きと困惑のあまり、


俺は叫び声を上げることもなく、


口をポッカリと開け、


視線は目の前で浮遊している生き物に釘付けになっていた。



そして、



「よく眠ったッキー!」



そう、言葉を、発した。




俺の知識では、人の言葉を話す小動物など存在しない...


俺の知識では、空中に浮かぶ事ができる小動物など存在しない...


俺の知識では、自身の眠りの度合いを独り言のように報告する小動物など..存在...しない...



俺の知識が不完全だったのか、それとも目の前の光景が異常なのか...



「キキッ!?」


その生物と目が合う。



その生物は俺の存在を認めると、俺の周りを3、4周ほどくるくると飛び回ってから言った。


「ふむふむー。キミがノアの言っていた"彼"のようだッキー」



状況を理解しようと、頭をフル回転させた結果、

最後に「キー」とつけるのがこの生き物喋り方のようだ、

などという限りなく無益な考察を繰り広げていた俺は、その一言の意味を理解し損ねた。



...落ち着こう。



冷静さを取り戻し、考える。

この際この生き物がいかに不可解であろうと関係はない。



「ここは何処なんだ?君は一体何者なんだ?」



言葉が通じて状況が理解できているのなら尋ねてみるのが早い。

そう思った俺は、藁にもすがる思いで問いかけた。



「キーはキーだっキー!」




きーわ きーだっきー???

恐らく問に対する返答と思われる言葉が返ってきた。



先程まで理解できる言葉を話していたはずなのに、この言葉は別の言語のように感じた。



数秒間の沈黙。



今のは...自己紹介だったのか..?



そう気づいた俺は再び問いかけた。



「君の名前が"キー"ということか?」



「キィ~」


その生物は嬉しそうに鳴き声を上げる。

肯定ということらしい。



つまり、この生き物の名前が「キー」でおまけに一人称も「キー」ということのようだ。


紛らわしい...。



そしてキーはこう続けた。



「ここは空隙世界(ヴォイドワールド)だっキー。

幾つもの世界の狭間にありながら、どの世界の干渉を受けることもない、

唯一の独立した世界だっキー。」



いくつもある世界。独立した世界。


言葉の意味は分かるが、どれも抽象的過ぎて理解ができなかった。



キーは更にこう続ける。


「キーがノアから託された使命は"終焉の怪物"の復活を阻止すること。」



愛くるしい風貌にはとても似合わない声のトーンから、シリアスさが伝わってくる。


決して、『語尾に「キー」とつけなくてもいいんだな』などという軽口を言えるような雰囲気ではなかった。




「そいつは世界そのものを壊してしまう程の恐ろしい力を持った怪物だっキー。

だから絶対に復活させるわけにはいかないっキー。」


キーの熱がこもった口調に気圧された俺は、キーの話に聞き入っていた。

とても現実的な話とは思えないが、キーが嘘をついてるようには全く見えなかった。


そもそも、記憶のない俺が「現実的」かどうかの判断をするべきではなだろう。



「そのためには、ある場所たどり着かないといけないっキー」



「ある場所...?」



「そこが何処なのかはキーにも分からないっキー。

でもノアは言ってたっキー。キミがいれば問題ないっキー!」



ノア...

何故だかとても懐かしい響きだ。

さっきも一度言っていたような気がする。キーに使命を与えた人物だったか。




キーの話を整理するとこうなる。


1つ、恐ろしい化物が復活してしまうのでそれを止めなければならない。

2つ、そのためにノアという人物がキーに使命を与え、遣わした。

3つ、その使命を達成させるためにはある場所に行かかなくてはならない。

そして4つ、キーだけでその場所に行く事は出来ないが、俺がいれば問題はない。



ただでさえ現状を把握しきれていないというのに、化物だの使命だの言われても

俺には混乱することぐらいしか出来ない。



「では、ちょっと失礼するっキー!」



キーはそう言うとこっちの混乱などお構いなしに接近し、

クンカクンカと匂いを嗅ぐような仕草を始める。



「キ~?」

一通り嗅ぎ終えると、今度はキーが困ったようなような声を上げた。



「おかしいっキー。"記憶の匂い"がほとんどないっキー...」




キーが何をしたかったのかは皆目見当もつかないが、「記憶の匂いがない」

という言葉には、大いに心当たりがあった。


俺は、俺の記憶が失われていること、何も分からない状態で目が覚めたこらこの世界にいた事、

そして今現在、俺が大絶賛困惑中であることを手短にキーに伝えた。



するとキーは更に困惑したようで、


「そんなはずないっキー...キミの記憶を辿れば、必ず辿り着ける。

確かにノアはそう言ってたっキー...記憶がないなんていうはずはないっキー...」



と、気を落としたように言った。



記憶を辿る...キーは確かにそう言った。

俺は、知りたかった。自分の記憶を。自分が何者なのかを。



「なぁ、キー。俺の記憶を取り戻すことは出来ないのか...?」


そう問いかけた。



「キー!」

キーは急に元気を取り戻し、「その手があったキー!」と言わんばかりの回転をくるり、としてみせた。。



「キミからは僅かにだけど"記憶の匂い"が感じられたっキー!

その記憶をもとに世界を辿れば、キミの記憶を取り戻せるかもしれないっキー!」



言っていることは良く分からなかったが、記憶が取り戻せる可能性はあるいうことだけは分かった。今の俺にはそれで十分だった。



「キミの記憶を取り戻すには別の世界に行く必要があるっキー。

それはきっと、キミにとっても長くて辛い旅にになると思うっキー...覚悟はいいっキー?」



今度はキーが俺に問いかけた。



正直、俺には怪物とか使命とかのことは分からない...

でも、何も思い出さなければ、何も始まらないと思う。


だから俺は...


「俺は...記憶を取り戻したい!」



「決まりだッキーーー!!」


キーは、今度は勢い良くに飛び込んできた。


すごく、もふもふして、気持ちいい...

そんな時間が数秒続いた後、


バッ!とキーが俺の体から離れる。


「準備完了っキー!(ゲート)生成っキー!!」



そう言うと、まさしく「鍵」の形をしたキーの尻尾が黄昏色に染まる。


真っ白で無機質だった世界にも温かみのある光が溢れる。


光と同時に現れた幾つもの黒い実線同士が結ばれ、俺の倍ほどの大きな「扉」の形を作っていく。


「さぁ、行くっキー!!」



描かれた扉は開かれ、俺とキーはその扉の中へと飲み込まれていった。


小説を書くのって難しいですね...


色々あって忙しいのですが、2日間で1話のペースを目指します。

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