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第1話が終わるまでは毎日投稿していきます。
そもそもの発端は高校受験を目前に控えた1月になってから、4月から親の転勤が決まった事である。単身赴任等も当然考えられたが、現在住んでいるのが会社経由で格安で借りている住宅(居住20年以上または退職時に買い上げも可能)であり、制度上2ヶ所以上借りる事は出来ない。
そして単身赴任するだけの経済的余裕は無いので当然ながら転勤先近くに引っ越すことになり、引っ越し先の近くの高校を探すことになったのだ。……まぁ寮のある高校というのも考えたのだが、近年はどこも縮小傾向で寮のある高校の方が珍しく、ある場合でも全国大会常連のような特定の部活動向けであるか、非常に学力ランクの高い高校に限られていたので、薫も引っ越し先で高校を探す事になった。
出願間近の時期なので担任の先生も協力の元、程なく薫が入学することになる「桜坂高校」を受験する事にした。学力レベルとしては中堅上位レベルで、時間が無いので僅かな対策しか取れないが、自分の学力で問題無かったのと、私立校の割には学費がかなり安い事、そして次に住むことになっている家からは徒歩15分程の距離にあったのも理由である。
さらに言うと、3年前に完了した改装工事によって校内の設備が充実しているのもかなりのプラス要因だった。しかし僅かな期間での出願及び受験準備に追われた為に、見落としていた事があった。
ひとつ目は共学校ということで完全に油断していたが、2年前の卒業生を最後に男子生徒が桜坂高校には在籍していない、実質的に女子校だったという事。
ふたつ目は新年度から制服デザインが変わることになっていて、人気が一気に上がっていた事である。
この結果、受験倍率が昨年の約4倍、6倍弱まで跳ね上がり、近年は男子の出願自体殆どない状況もあり、男子の合格者は薫一人だけとなったのだ。
入学手続き後に行われた制服の採寸でも、近年は男子の合格者がいなかった事と、薫が女子としても通用してしまう体格(157cm)故に途中まで店員に気付かれず、男子だと主張して採寸をした程だ。
しかし女子と勘違いされて採寸した際のデータも残ったまま制服発注元に送られてしまい、しかも性別記入欄の記入漏れがあった。
そして「薫」と男女どちらでも通用していまう名前に加え、連絡先となっていた自宅には運悪く連絡が付かず、制服作成の都合上、やむなく桜坂学校側に業者が問い合わせの連絡をした。
しかも学校側でも女子として登録されている手続きミスにより、薫は女子と判断されて制服が作られてしまったのだ。この事が発覚したのは薫が完成した制服を取りに行った4月2日の事である。