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時空とギャレット  作者: ホシノミ
4/6

天球時計


✴︎


煉瓦造りの一際大きいドーム状の建物。

上には巨大な天体望遠鏡がついていて、真夜中には観測ができるそうだ。

煉瓦造りの街とは違った近未来的なこの建物。

作ったのはカルラ博士という天文学者。

今も博士はご存命だが、相当な年らしい。

俺がまだ小さくて無邪気だった頃に会った記憶しかないから、今の事はよくわからない。

俺が確かに覚えているのは博士が、俺と同じ新緑のような翠の目だったこと。

そう、博士は俺に言っていた。

「君のような翠の瞳は、限られた人しか持っていない貴重な瞳なんだ。普通の人には見えないものが見える、そんな瞳なんだよ。」

日曜日の午後の昼下がり。

俺が博士と初めて話したことがそんな内容だった。

博士の言った通り、俺のような翠の瞳を持つ人は今まで会ったことがなかった。

両親もみんな薄い茶色の瞳。

あの時、「普通の人には見えないものが見える」と言っていたけれど、俺は今まで生きてきて「普通の人とは違う考えを持つ」の間違えではないのか?と思わせるような場面がたくさんあった。

学舎でもどこでも、俺はみんなと違かった。

だから、ギルドの中に入らなかったのかもしれないけど。

一言で言うと、博士は俺の良き理解者だ。

だから、職を失った今でも俺はここに行こうと思える。

隣でゆっくりと歩くギャレットの美しい横顔を横目に、少し足取りを早めた。


✳︎


「ここですか?」

ギャレットの薄紅色の唇が動く。

「うん。君に会わせたい人がいるんだ。」

手前のガラスドアを開け、しんと静まり返ったロビーに入る。

今の街の雰囲気と比べると飛んだ殺風景なドームの中。

俺が昔来た時とあまり変わったところはなかった。

建物もあの時そのまま、古くなりもせず新築でもない。

俺はギャレットがついて来ているのを確認しながら、博士のもとへ向かった。

そこは資料室。

膨大な資料が貯蔵してある部屋。

俺とギャレットは顔を見合わせ「うん」と一回頷き、その部屋を軽くトントン、とノックした。

その直後、ギイッと扉が開いた。

老人が出てくると思いきや、俺よりも少し年下くらいの青年が出て来た。

薄い黄色のポロシャツに長ズボン。

緑のベストには刺繍で『galaxy』と塗ってある。

確か宇宙という意味だったっけか、と考えてる暇もなく青年は口を開いた。

「ようこそ!案内人のギルです。ご用件はなんでしょうか?」

その、ギルという少年は人が良さそうに口を動かした。

ギャレットはギルを興味深そうに見つめていた。

実際にギルは、悪という悪を持っていなさそうな雰囲気だったので、俺は彼に言った。

「カルラ博士はいらっしゃいますか?」

無愛想に聞こえなかったか心配だったが、ギルは愛想よく応じてくれた。

「カルラ博士ですね。少しお待ちください。」

ギルは奥の方へ入って行った。

ギルがいなくなったのにホッとしたのか、ギャレットが俺の袖を引っ張って来た。

「ロイさん。カルロ博士とは誰ですか?」

俺はその時、何にも説明していなかった自分に気づいた。

「そういえば、全然説明していなかった…!すまない。」

俺はペコペコと頭を下げた。

「大丈夫ですよ。」

ギャレットは俺のそんな態度にも気にせず、にこやかに微笑んだ。

やっぱり彼女は人間みたいだ。

いや、人間だ。

きっと。

「カルロ博士は俺の師匠みたいなものさ。」

簡単に説明するとして、この言葉しか見つからなかった。

それでも納得してくれたのか、ギャレットは何回も頷いた。

そして、ゆっくりと口を開けた。

「私にもギャレンヌという師匠がいます。」

さっきも聞いたギャレンヌという単語。

俺の名前や俺との記憶は忘れていたのに、ギャレンヌだけ彼女の記憶に残っている。

何か、ギャレンヌというのは大きなものだったのだろうか。

そんなことを考えているうちに、博士は再び俺の前に現れた。

「ロイ少年。いや、もう青年だな。久しぶりだ。」

はははと俺の前の老人は笑いをこぼす。

あの時会った博士とは少し変わっていたが、雰囲気そのものは博士だった。

「久しぶりです!」

俺は大きく頭を下げた。

俺の隣のギャレットも俺の真似をしたのか、こっちを少し見て頭を下げた。

「ずっと待っていたぞ。ロイ青年。あと、隣のお嬢さんは…」

博士もギャレットに気づいたのか、丸メガネを少し動かしてのぞいていた。

ギャレットは少しの笑みも浮かべず、顔を上げ口を開いた。

「お久しぶりです。カルロ・ジョーンズ。」

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