ギャレンヌ
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時計職人は小国ローリタニアで、何年も前から受け継がれてきた職業だ。
民衆の間では『時の回し手』という愛称で親しまれていた職業でもある。
その頃の『時の回し手』はとても高い地位にあった。
特に『時間』だけではなく、『月齢』や『太陽の位置』『星,惑星の動き』なども観測できる『天文時計』を作る職人は、極少数僅かな人しかなる事のできない職業だった。
まだ見ぬ宇宙というものに誰もが興味、関心を抱いていたその頃。
『天文時計』の存在はとても大きいものだった。
だが歴史は流れ、とある博学者が発明した振り子の動きを使う『振り子時計』が主流となり、『天文時計』は扱われなくなった。
小国ローリタニアではこうした動きから、高い技術を持った『天文時計』を作る職人等を『振り子時計』を作る職人にしようと考えた。
だが、『天文時計』の職人等は伝統を守ろうとする気持ちが強く、その考えにはのらなかった。
ローリタニアの危機なのか、誰もがそう疑った。
そんなある日、救世主が現れた。
ギャレンヌ・コストフィアという不思議な娘だった。
彼女はいつもこう言っていた。
「私は、時計しか弄れない。」
その言葉を喜び、小国ローリタニアは彼女を国の『専属振り子時計職人』として、歓迎した。
彼女は言葉の通り、時計を作り続けた。
その功績は国から何度も表彰された。
やがて時計職人の学校、『ギャレンヌ職人塾』と呼ばれるものを開設した。
これはローリタニアの中でも大きな出来事となり、今も語り継がれている。
それから30年。
彼女は有望な人材を残し、この世を去った。
その死は全国民に悼まれたが、もう一つ大きなものをこの世に残した。
『ねじ巻き式時計職人ギャレット』
後に彼女はそう呼ばれることになる。