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PKなんて汚物は消毒です。

MMORPGなどでは俗に言う「安全地帯」が存在する。攻撃不可スキル使用禁止等戦闘的行為の禁止が基本である。

存在して然るべしなのだ。年がら年中モンスターに追われたりするとか嫌だし戦闘行為禁止してないと戦闘狂とかいたら困るしな。

で、件の新人プレイヤーと待ち合わせしているのが戦闘行為禁止エリアである酒場だ。


「あ、あの人だよ」


「あ!マンジさん!ありがとうございます!」


「うん、大丈夫かい?」


「まだ回数少ないんでいいんですが…」


耐性でもあるのか?それは問題だが。


「その連中はいまどこに?」


「あ、そこの席に」


「近いな?!」


指さした席は向かい2つの席だ。うん、言われればわかるがガッツリこちらを見ている。


「ガラ、悪い」


「不良プレイヤーは前からいたろ?」


「だ~れが不良だゴラァ!」


お?聴覚スキルあげてんのかな?よく聞こえたな?


「あんたらのことだよ、チキンPKさんがた」


「俺たちゃ親切にご教授してるだけだよ、こんな親切に優しく殺してくれる人たちがいるってな!」


お~、殺してることに自覚があるとは、やりがいがありそうだ。


「てめえらはあれか?そのクソガキのお仲間さんか?」


「俺はあれだ、友達の友達だ」


「友達の友達の友達」


「俺は友達だ」


「あ~そうかい、てことは助けに来たか殺されに来たってわけか?」


よくしゃべる野郎だ。


「タケル君、任せてくれ」


「ん?分かった」


「さて君たち、PKというのはだな」


「おい、語り始めんなよ?」


「安心しなさい、一言で終わる」


「そうかよ」


「殺す分殺される覚悟がある奴だけがやっていい行為だ」


ほう?すること自体がいけないと思うが。


「でだ、ひとつ問おう、君たちに殺される覚悟はおありかな?」


「ンなもんねえよ、殺されないような雑魚しか狙わねえしな」


ふむ、想像以上の正直者にしてクズだな


「それが君たちの返答か」


「そうだな、てめえも殺してやろうか?」


「マンジさん、タッチ」


「どうした?」


「汚物は消毒だ」


突如閃光が酒場内に走る。これは転移杖と呼ばれる消費アイテムの上位版、空間杖だ。

半径15m内の人間すべてを強制的に事前に登録した場所に転移させる効果がある。自分も含めて。


「なっ!ああぁ?」


「なんだこれぇ!?」


「おわぁあ、あれ?楽しい」


一人楽しんでるな、PKメンバー。

事前に登録した場所、それは闘技場と呼ばれる場所だ。


「ああぁ?コロシアムだぁ?」


「れでぃ~すあ~んじぇんとるめ~ん」


「やるきねえだろてめえ!」


「ねえよ、てめえらひねるくらいうちの姫でもできる」


「やらないよ?」


「わかってるって」


マンジさん、龍姫を下がらせる。


「タケルさん、僕も」


PK被害の少年も参加しようとするが。


「のー、君は下がってな、巻き込まれるぞ?」


「え?は、はい」


「ほら、チロ君」


「お、お気をつけて、金髪のチェーンつけてるやつは世界級を持ってます!」


「お~、宝の持ち腐れだね」


ギャラリーは最初から観客席だ、酒場にいた時からこちらを見てたから問題なかろう。むしろさっきからやれーとか言ってるし。


「ははは!こいつぁ馬鹿だな!俺たちゃこんだけじゃねえんだぜ!」


ほう?観客席の方にも数名いると?


「でてこいてめえら!こいつぶっ飛ばすぞ!」


観客席から十数名のプレイヤーが飛び出てくる、ほうほう、こんな人数いたのか


「ひーふーみーよー」


「はは!こんな人数相手にできねえだろ!」


ふむ、そうかそうか。数で攻めるってか。


「やってみなくちゃわかんねえだろ」


「自信過剰なのか馬鹿なのかわかんねえなてめえ」


「安心しろ、ただの馬鹿だ」


「まちがいねえな、やれ!」


ざっと数えて24人、ふむ、少ないな。うち3人がこちらに走ってくる。盗賊系、戦士系、女戦士系。


「はぁ…」


「溜息なんかしてんじゃねえぞこらぁ!」


「真っ二つにしてやんよ!」


「3人一気じゃ無理だろう!?ほらぁ!」


高らかにオーダーしよう。


「『閻魔極刀 常闇皇』」


0.5秒以内に攻撃する人数の多いほどダメージの向上する世界級太刀であるが、正直こいつらにはもったいないな。うん。


「っぐがぁ!?」


「なんだぁ!?」


「ながっ!?」


なんだその反応。


「んな大袈裟な」


「やかましい!」


「うるせえ」


『無形双雹刃 刻零』をオーダー。凍り付いてしまえ。


「ぎゃぁぁぁぁぁあっ!」


「つめてぇぇぇ!?」


「にぎゃぁぁぁぁあ!」


これで3人、か。先は長いなぁ。


「ちっ、近接系だ!遠距離でやれ!」


「『魔導弓ハーレクイン』」


「んがっ!?」


モブ一名撃破。


「『旋律の女神』」


 物理的攻撃力を持つ風を生み出すオーブ系武器。これはただのドロップ品だが効果範囲は絶大だ。

『千手観音の後光』『黒岩黒弓』『マスタリーマシンガン』『緑園色彩砲』『無双乱機銃 極錦』『覇弓 ケルケイネス』

『千手観音の後光』は単純に持てる武器を増やす装備。他は弾丸を飛ばす遠距離武器だ。今更だがこのゲームに[残弾]という概念はない。

 リロードは存在するが。風は竜巻を起こし装備重量の低い遠距離部隊は宙に浮き始める。範囲を狭めれば彼奴らは一塊になる。

そこに弾丸をぶち込んで10人くらいが消滅する。死んでも現実世界で死ぬ、なんてことが起きないのはチロ君とやらで証明済みだ。


「ちっ、なんてやつだ、武器王かよ」


「今更か、スキル使わねえ時点で気づけ初心者」


「なっ、初心者だとぉ!」


「初心者だろ、弱いものいじめしてる時点でよ」


「はっ、いじめられるほうが悪いんだよ!」


ぷっつんきた、こいつら徹底的にやろう。


「無限剣戟回廊」


「は?は?なんだそれ、おい、おいおいおいおいおいおい」


全武器開放、射出形態、発射。


「「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」」」」」


さてと。


「あとはあんた一人かぁ、つまんねえの」


「はは、はははは、なんなんだよお前、そんなスキル、聞いたことねえぞ」


「攻略サイトちゃんと見やがれ」


「くそったれが、俺の世界級の武器の力、見せてやるよ」


「おー、見せろ見せろ」


「おらぁっ!!」


おお、コロシアムの地面が割れた。これは地形破壊の能力だな。


「くはは!どうだこの『アーストランダの大槌』の能力はよぉ!」


「正直微妙」


「んだとぉ!」


「そもそも世界級の使い方間違ってるっつの」


「あぁ!?」


「世界級にはそれぞれ固有の能力があり、力たるや世界をも統べるほど」


「サイトの説明文…?」


「その力は個ではすべて出ず、群としてのみ発揮される」


「だからどうしたんだよ!」


「こういうことだよ」


 『国針』射程2Kmの投擲槍、副効果として状態異常時間が伸びる。おまけとしてやろうと思えば空間に磔にすることが可能。

 『覇弓 ケルケイネス』一矢を五矢にして掃射する倍化武器。単純に5倍化する。

 『無形双雹刃 刻零』広範囲に氷塊を出現させる。生やす、の方がわかりやすい。

 『黒の門』読み方はシュヴァルツェス・トーア。異界から魂を呼び出し武器に憑依させ攻撃力を上げることができる本。敵に攻撃も可能。今回は攻撃で。

 『魔爪 宵熊』疑似的な月を作り出しぶつけることが可能。砕いて散弾銃のようにもできる。

 『月下陣 アギト』召喚笛、サモナーの用いる武器である。これは無数の弓兵を呼び出すもの。あとは自明の理。

 『黒無龍剣』斬ったところに沿って龍の爪のような跡がつく攻撃援護系能力付き。とどめは刺せないオプション付き。

『絶刀 式犀』視界内の色彩によって属性が上乗せされる面白い武器。視界内には空の青、目の前のアホが持ってる武器の水色、んで少し散った血の赤。水、氷、火が追加される。そのほかは正直効果が薄くなる。

 『盗賊王の曲刀』ドロップ数を増やす効果。今は意味ない。

 『干将莫邪』陰陽一対の双剣。振るう時の姿勢が左右対称に近いほど攻撃力が高くなる。


「は?はぁ!?」


「ほら、深く味わえ、これが『世界』だ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 『国針』を投げつけ空間に張り付け、『ケルケイネス』で一本だけ外し残り四本を四肢に刺す。『刻零』で両腕を切り切断面を氷でコーティング出血を防ぎましょう。

『黒の門』を使い魂を呼び出し精神的攻撃、ダメージも少し。『宵熊』で月の散弾を放つ。『月下陣 アギト』で一斉射撃。『黒無龍剣』は上空に投げる、あとで会おう。

 『盗賊王の曲刀』を投げ色彩を増加、そして腹に突き刺さる。『絶刀 式犀』で腰を薙ぎ上半身と下半身を分ける。そろそろかな。上空に投げた『黒無龍剣』を跳んでつかみ、落ちる勢いで切り裂く。

 その場に残るのは猛き龍の爪跡。愚か者を裁く天の爪。これでしまいだ。


「ほれ、生きてんだろ」


「ゲホっ、くっそ、なんだてめえ、意味わかんねえ、なんであんな、ガキのために、そこまでっ」


「てめえらが秩序を乱したから。以上だ」


「は?そんだけ?それだけのために、こんなに嬲ったってのかよ」


「ああ、そんだけだよPK」


あ~、すっきりした。

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