ゲームの世界なら閉じ込められたい
VRMMORPG、「ラストエンプレスオンライン」いつもは少しリアルだなくらいの世界が今日はえらくリアルに見える。なんだ?確かにアップデートがあったがこんなに画質の上方修正があるなら大型アップデートもいいところじゃないか。
「いた~、タケル~」
町の広場のほうからえらく若いアバターが走ってくる。若いなんてもんじゃない、幼女ってレベルだ。
彼女は俺の現実の幼馴染であり嫁でありロリである龍姫だ。ゲーム内でも結婚している。
結婚を行うと表示が「嫁」になる。さらに同パーティ内に嫁がいると多少のボーナスがつく。あと片方が死ぬと両方死ぬ。
「お、姫、どうした?」
「メニュー、開いて?」
「?わかった」
メニューを開く。意外と難しいこの動作はこのゲームを始めるにあたり最初に覚えなければならない動作である。左手でひじから先をスライドし、右手で五芒星を描く。すると描いた五芒星をなぞるようにメニューが現れる。五芒星の形の先端、仮に右上、上、左上、左下、右下と区分したとしよう、まんなかの五角形の中にいつもなら「ログアウト」の文字があるはずなのだが、ない。
「なっ」
「どこにもないんだよ」
「まさかとは思うが…」
「うん、このミカンとかの食料系アイテム」
龍姫が皮をむき、かじる。ゲームとは思えないほどリアルな飛沫が飛び、口を濡らす。
「超うまい」
だそうだ。
町中に騒々しさが増してきた。町のみんなも気づき始めているらしい。軽く体をつねり痛みが発生したことを確認する。「ラストエンプレスオンライン」は全年齢対象ゲームであるがゆえに痛覚は発生しないようになっている。つまりこれは。
ゲームに閉じ込められたということであろうか。
脳内に鐘のような音が鳴り響く、運営からの緊急連絡だ。ログアウト不可なんてバグを運営が見逃さないはずがない。早急な対処に頭が下がる。
ノイズがかかったような声が脳内に響く、こんな声だっただろうか。運営からの連絡は。
「悪いがこのゲームは乗っ取らせてもらった、そして変更不可能のシステムを2つほど追加した。
一つはもう知っているだろうがログアウトできなくさせてもらったよ。外に出られるといろいろ困るのでな、そして2つ目、このゲームの中に貴様らの体、精神を転送、自分のキャラと融合させてあげたよ。
ふふ、画期的だろう?ゲームの中で余生を堪能してくれたまえ。はははははははは!!」
ほう。つまり俺たちはこの俺たちが神ゲーと称したこのゲームの中に入り込んだというわけか!!
「「「「ありがとうございます!!!!」」」」
町中の数十人は、いやもっとだろうか。大多数のプレイヤーは感謝の意を見せた。
本当に入り込めたなら、と何人もの人が夢見てたのだ。もちろんおれも龍姫もだ。
この事件は多くのプレイヤーに歓喜を、望まぬ者には絶望をもたらした。
え?俺たちは?当然歓喜のほうだよ。
コミュニティリストを確認すると多くのフレンド、ギルドメンバーがログインしていた。
これだけの人数がいれば情報の交換はできるだろう。さてメッセージを…。
どうやっておくるんだ?ゲームの時は伝書鳩を使ってたが、アイテムボックスを開いて、伝書鳩を選択、
あ、できた。ギルドのほうはメニューから送れるはず…。お、できるできる。
つまりシステム自体は変わってないってか。嫁のほうは、電話できるんだっけ?試さないとね。
「もしもし~」
「お、できるね」
「アイテム確認したけどそのままだったよ」
「ん、了解」
で、通話を終了させる、と。さて、これからどうしますかね




