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プロローグ
思い出すのはあの日々。
楽しかったあの日々。
いつまでも続くのだと、続けば良いと思っていた日常は今では遠い。
でも、これこそが生きるってことだと“あいつ”は言うだろう。
“あいつ”はそんな性格だ。
今はどうしているんだろうか?
幸せな日々を過ごしているんだろうか?
誰にでも手に入れる権利があるはずのものを、“あいつ”は必死で欲していた。自分のためじゃなく、大切な人のために。
周りからすれば、お前こそ手に入れるべきなんじゃないか、と言いたくなるくらいに必死だった。
だから見て見ぬふりなんてしたくなかった。
そうしなきゃ、こっちが苦しさを感じたから。とか言いつつも、ほんとは“あいつ”の必死さが羨ましかったのかもしれない。
――楽しんでこそ、生きるってことだ。だから貴様は生きなくてはならんぞ。
そんなことを言ってたやつが、楽しくないようなことを平気でやってのけるその姿に、俺たちは憧れたんだ。
やっぱ、すげぇよ、お前は。
この俺が、仕方ないから褒めてやんよ――。