ナイアルラトホテップの予言
また書いてみたので読んでみてください!
無貌が嗤った。
その嗤いは嘲笑だった。
全てを引っ掻き回して、崩れゆく過程を楽しむ嗤い。そう思ったのは表情ではなく、その嗤いそのものから感じられた。
表情に意味はなく、怒っているわけでも、泣いているわけでも、喜んでいるわけでもない。顔が無かった。
故に無貌。
無貌が指を指す。
その彼方には燃え上がる街があった。
家々は紅蓮の炎に焼かれ、逃げ惑う人々に顔の無い悪鬼が襲い掛かる。人々に抵抗する手段もなく、一人、また一人と捕まり、悪鬼の手によって燃え盛る紅蓮の炎へと投げ込まれていく。
なんと恐ろしく、悍ましい光景だろうか。
無貌が別の方を指差す。
そこには巨大な顔の無いスフィンクスに蹂躙される都市があった。
一たび存在しない口で咆哮を上げると、瞬く間にビル群は崩れ去った。そこに一切の慈悲など存在せず、あるのは文明への嘲笑だった。
再度、無貌が指差す。
そこには、吼え猛ける者によって破壊される教会があった。
流動する原形質状の塊から無数の触手や鉤爪が縦横無尽に伸び、教会を徹底的に破壊している。
神への信仰、宗派に意味は無く、触手の一振りでその全ては無へと帰した。
無貌が私を指差す。
存在しない口でこれからの私の未来について語る。その内容は美しくも悍ましい出来事の数々であった。
そして、最後に無貌は嗤った。やはり嘲笑だった。
その嗤いはどこまで続き、私は目が覚めた。
私は安堵した。今までの出来事は全て悪夢の中だったと。
だが、その安堵はすぐに恐怖へと変わった。
私が目を覚ますことは無貌によって予言されていたのだ。先ほどの悪夢はこれから起こる出来事なのだ。
どこかで無貌が嗤った。