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社会問題  作者: 中井仲
23/23

運動会(幼稚園)

「これより運動会を始めます」


 そう放送があって始まった裕太の通う幼稚園の運動会。近くの小学校のグラウンドと教師を借りて幼稚園の運動会が開催されたのだ。

 この時期――6月の中旬の開催である。巷ではこの時期に運動会行うことが多くなってきているらしい。9月だと熱中症になるからな。でも、この時期も梅雨で流れやすそうな気がするけど。熱中症になるよりはマシだという判断なのだろう。

 でもさあ。二年生以降ならいいけどさ、一年生はかわいそうな気がする。やっと、慣れてきた頃に、運動会か。話したこともまだない友達(?)とかけっこしなくちゃならないって……。今回は問題ない。幼稚園だし。その問題は小学校の心配だ。

 それはそうと、なかなかに親御さんも来ているようだ。俺たち、ノーラ、宇柚、梓、レクルさんの五人で観戦にきている。梓はこちらにはいなくて、お父さんお母さんと一緒だけどね。


「プログラム一番は準備体操です」


 当然である。なにも捻ってはいない。子供たちが小さな体を伸ばすのを眺めながら待つ。しっかり伸ばすんだぞー。

 凝視しているけれど、俺はロリコンじゃないよ。他にどこを見ろというのだ。

 そして。


「プログラム二番はかけっこです」


 おーかけっこか。いきなり定番というより、本命じゃないか?

 なにか、考えがあるのかな……?

 特に滞り無く「がんばれー」などと声援が飛び子供たちが頑張る。程よく幼稚園らしくグダグダというか、順位がわからないようにゴールしていく。

 退場門から出て行き、


「プログラム三番は父兄によるリレーです。参加を希望の父兄は入場門にお集まりください」


 いやいやいやいや。

 父兄だけが参加の競技があるの? 子どもと競争でもなくて? 大人たちだけ走らすのか。


「ねえ、久夜。人数足りないんだって。出ないの?」


 ノーラが教えてくれる。うん、参加を呼びかける放送が何度も流れているのには俺も気がついていた。でもね、何の準備もしていない大人が参加するのは、ね……。


「う、うーん……」


 俺が渋っていると、


「ねえ、おとーさんも出るって言うし、きゅうやに出てほしいな……」


 裕太もやって来て、勧める。

 今日は裕太の晴れ舞台だということで休みの取れた椎名両親が観戦に来ていた。


「ま、まあ、人数が足りないのなら……」


 と、出場することになった。

 息子娘に応援されたお父さん方が頑張るので、俺も負けてられん。というか、一番若いのに負けると俺の株が大暴落する。

 しかし、足の回っていない割に、気持ちが先走っており転ける方々が続出。運動会に出る人なので、学生時代、足に自信のあった人たちなのだろうけれど、今は完全に運動不足である。

 なんだかんだと転けなかった俺とそのチームが一位だった。主に活躍したのは俺だったので、自身の株の心配はいらなかったけれど、他の参加者に恨まれてしまったようである。


「すごいのら。キュー」


 宇柚が褒めてくれたのだけが救いだった。



「プログラム五番は玉入れです。参加される父兄の方は入場門にお集まりください」


 またですか。

 ちなみに四番目の種目はダンスらしきものだった。

 幼児が精一杯頑張っているのを見るのは癒やされるなあ、ぐらいの感想しか俺にはなかった。あえてあげるとすればだよ。


「キュー、紅組がすくないのら?」

「そうみたいだな……。宇柚も出るか?」

「出ていいのら? うん、でるー」


 まあ、玉入れなら身体能力もあんまり関係ないし、楽しいからな。ノーラや梓も少ない紅組に参加するそうだ。

 何の変哲もない玉入れなのだが、五回戦までやるそうな。三回戦でいいだろうよ。しかも三本先取ではなく、最後までするらしい。子どもと大人が交互に行い、最後にみんなでする。

 これは恨まれるようなことはないかと思っていたのだが、あった。

 俺が肩車していて上にいる宇柚の投げる玉がカゴに届かず、手前にいたお父さんの頭に落ちるのだ。お父さんが怖い目で睨むので、


「おい宇柚、謝っとけ」

「うん、ごめんなさいなのら」


 お父さんは宇柚に一瞬ニッコリとして、その下の俺をキッと睨みつけてくるのだ。何か俺が悪いことしましたか……?

 勝敗を決める時に、かごの中を数える方法として「ひと~つ」「ふた~つ」と放り投げていくのは、いつまでも変わらいないようだ。四回戦まではそれでもいいが、五回戦は片付けがめんどうではないか。

 まあいいけど。


 その他またまた子供たちのダンスなども挟みながら運動会は進行していく。

 そしてお弁当を、椎名家に混ぜてもらい済ませる。

 椎名父との初対面だったのだが、お互いしっかりと身体をほぐしていなかったのに頑張るものだから、体に少し違和感があって、奇妙な連帯感から仲良くなった。子供たちに混じって、お父さん方もストレッチしたほうが良かったんじゃないのか。


 午後の部のはじめは『しっぽとり』だった。

 しかも父兄参加。娘息子対お父さんたちである。

 お父さんチームが足りないということでこれまた、俺とノーラ、梓も参加である。

 宇柚には遠慮してもらおうとしたら駄々をこねるので、レクルさんと応援隊長に任命したらすっかりそちらに流れた。

 特別ルールがあるわけでもないのだが、ハンデもない。

 強いて言うなら、子供たちが追いかけるシッポは目の前の程よい高さにあり、お父さんが追いかけるシッポは腰を折らないと掴みにくい位置にあることぐらいか。

 しかし、昼食後にいきなり走らすなよ。お腹に悪いだろう。


「用意、スタート」


 合図によって始まった。

 どさくさに紛れて、カンチョーしてくる男の子たちがいた。

 若いからか? 俺が若いからってなめてんのかコラ。

 ――とは思ってませんよ。ほんとに。

 なんとかしてその子たちのシッポを押さえ、脱落させる。

 さてと、少しそいつらにかまけている間に、大人チームが意外と減っていた。あれ? 子供チームはそんなに減っていないのに。

 近くのシッポを追いかけようとするのだが……わかるこの気持ち? 今から体験する大人チームの敗因を。


 女の子の尻を追いかけにくい。

 

 これに尽きる。これだけである。これさえクリアできれば負けることなんて無いのに。

 女の子を追いかけるとどうしても、ハアハアしてるんですよ。ほとんど走りっぱなしだからね。

 最近は変態の汚名の重さが年々高まっているから、こんな公衆の前面で変態になりたくない。

 ――なぜ男女別にしなかったっ……。

 男の子の数は順調に……よりは人数の差で、すこしずつではあるが減らしているが、いかんせん、参加している大人チームの女性の少なさが露呈している。

 なんという罠だ。

 しかし、時間をかければかけるほど大人たちは減ってゆく。こっちのチームで動けるのはノーラと梓ぐらいだ。

『俺にもう少し勇気があれば』

 と言ってみたところで何も変わるはずがなく、泣く泣く大人たちは子供に敗退した。

 子供からのお父さんの株が随分下がったのは言うまでもない。

 どうしようもないだろこれ。



 これだけ大人に参加してもらうのは、幼稚園には学年と人数が少ないからだろう。

 年少と年長組だけだから、休む時間があまりない。小中学校はだいたい二つの競技の間を開けて行うのだからな。

 こちらとしては大変だが。

 次は定番の大玉転がしである。これも父兄参加である。もうお父さんの運動会でもいいんじゃないの。

 子供たちが順番にフラッグとスタート地点を往復し、最後に大人たちがウエーブのように頭より上で大玉を転がし(?)先に箱のなかに収めたら勝ち。

 お父さんたちが勝敗を握っていると言っても過言ではないので、先ほど下がったお父さん株を取り戻すチャンスである。

 大玉に触れるのが一瞬であっても俺達は必死に頑張り、見事白組が勝った。だいたい俺の入るのは人数の少ないほうだからどちらが勝っても変わらないのだけど。

 白組のお父さんの株が少しだけ上がった。

 紅組のお父さんは落ち込んだ。



 各お父さんたちの評価が上下して運動会が終わった。

 裕太の両親も明日から仕事だそうで名残惜しそうに別れた。もう少しぐらい息子娘と一緒にいてほしいと思うな。それぐらいバタバタと行ってしまった。


「裕太、楽しかったか?」

「うん、あのね、お父さんがね、リレーでこけてた。でも走るの早かったよ。ダンスはね少し失敗したけどうまくできたよ」


 そう嬉しそうに語ってくれる。


「そうか。よかったじゃん。次はノーラと梓の運動会だな」

「うん、楽しみ」


 裕太が楽しみにするのも違うような気がするが、まあ、運動会は見るのも楽しいからな。

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