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社会問題  作者: 中井仲
22/23

いちごさん

 幼稚園児前の子供たちが通う『いちごさん』に宇柚と行ってみた。

 市民会館で、親など保護者と一緒に参加する幼稚園児前の子供たちのための……遊びのイベントのようなボランティア幼稚園もどきである。そろそろ宇柚にも遊べる友達がいたらいいだろうと思い立ったのだ。

 というわけで町の集会所に集まった。

 子供たちと同数のお母さん方がいらっしゃる。成人男性は俺だけである。専業主夫は俺だけらしい。とっても、居心地が悪い。

 子供たちの年齢は一歳から四歳までいる。ハイハイしている子とかいるぐらい幅広い。

 ほんの少しの会費を支払い参加する。


「今日は手型ハンコをしますよ」


 だからか汚れても良い格好で参加と言われたのは。

 もう始まっているようで、床一面に白紙が敷かれており、既にいくつか手のあとがある。


「ほらやってこいよ」


 と宇柚を押し出す。


「うにゅ……」

 

 ちょっと嫌がっているようだったが、気持ちはわからないこともない。できるだけ雨には濡れたくないが、なにかでビチョビチョになってしまうと、開き直って水たまりを踏みたくなるようなものである。きっかけが欲しいのだ。これと同じである。


「なにするのら?」

「この絵具に手をつけて触ってくるんだ」

「ほんと? ほんとだ。楽しそうのら。いってくる」


 他の楽しそうな子を見ると、喜んで行った。

 ペッタン、ペッタン、ペッタンコ。

 子供ってこういう単純なことが好きだよな。特に身体を使うようなやつとかが。

 しばらくハンコで遊んでいたら、同じ世代の子と話すことがあったのだろう。揉めていた。


「『のら』って変だー」

「変じゃないのら。かっこいいのら」

「ぜったいへんー」

「変じゃないのら。だってかっこいい人が言っていたのら」


 ラスボスの魔王だけど。身なりはそりゃ……かっこいいけれど、『~のら』は雰囲気をぶち壊していたよ。

 そしたら、掴み合いに発展した。絵の具の付いた手で。もう全身に手型がついてしまっている。

 ………………。

 可愛らしい争いだった。


「うわーん、変だって言われたのら」


 俺に泣きついてきた。


「うわ、ストップ。その手で触るな。いやあのな、ちゃんとかっこいいから。うん、かっこいいと思うよ」

「そ、そうだよね……」


 ペタ。腕を掴まれた。絵の具の着いた手で。黄色の手型がついてしまった。

 ああーぁ。


「ママァ……ママも一緒にぃしようよ」

「ママはここで見てるからね、いってらっしゃい」


 あちらも初めての参加のようで、息子さんは人見知りらしい。慣れている子はソッコーで行くのだが。

 ……うんそうだ。


「もういいや。俺も一緒にやろっと。いいですよね?」


 と、保母さん(?)に了解を得た。腕に手形がついちゃっているもの。

 それにこうすれば、子供さんたちも一緒に遊び出したりするのだ。大人が楽しく遊ぶことで子供たちも気を使わないで遊べるのだ。

 …………うん。ちょっと調子に乗りすぎたかな。足まで使って遊んだりした。

 ちょっと、遊びすぎた。

 子供たちと一緒に絵の具を削ぎ落して――乾いてカチカチになっていた――お片づけである。それも大切だもんね。

 まだまだお昼にもならないうちに終わってしまったので、解散しても皆さんこのままその場に留まる。

 子供たちは遊び、大人は井戸端会議らしき立ち話である。まあ当然である。

 友達がなんとなくできた宇柚はオニごっこをしていた。少し経つと、何かわからなくなっている。なにオニ? 凍りオニか? 増えオニか? 

 ……見た感じ、増えオニだろう。誰がオニかわからなくなってしまってるもん。

 俺たち保護者は立ち話へ。


「改めまして、こんにちは。えっと……」

「轟木、轟木久夜です。連れてきたのは宇柚です」

「娘さん可愛らしいですね」

「あ、娘ではないです。ちょっと長期で預っているんです。あ、親戚ですよ」


 親戚と言っておけばややこしいことを探られることもないだろう。説明するのが面倒なのだ。


「あらそうなのですか。偉いんですのね」


 なんか、子供されているのかのように相手されているんですが。

 どのお母さんも若いけれどさ……。

 奥さん方の立ち話ってこんな話してたんだ、と初めて学んだ。大切なことではないのだけど。完全に雑談だったけど。

 子供の話になってしまうのは、当たり前だけど。どうしてもね、子供のために集まった集団なのだからね。

 

 なんか、新しい縁――知り合い――ができた。俺も宇柚も。宇柚にとってはかなり良いことになるはずだ。

 友達って大事だしね。特に小さい間は。

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