友だちを作ろう
そろそろシリアス展開になったらいいなあ、思いますが上手く書けていませんね……
翌日。
また、怒られなければならないようだ。
寝苦しくいつもより早くに起きてしまったら……。
今度は朝葉も加わって六人で絡まっていた。どうしてかわからないが、俺が布団のど真ん中に陣取っている。でも裕太は誰かに蹴り出されたのか布団の外でまだまだ寒い春風に寒がっているから、正確には五人でだが。
幸いまだ誰も起きていないので、このまま静かに脱出しよう。
そーっと、一人ずつ絡まった手足をほどいていく。片手で剥がすのは大変だったが、無事ノーラと梓と宇柚をほどき終わり、後は朝葉だけだ。しかしこれが、一番難題だった。力強く俺の腕に、はしっと掴まっているのだから。
「ん……久夜ぁ……ずっとね……久夜のことが――」
俺のことが……?
寝言だ。聞く機会もないだろうから少し聞いて、からかってやろう。
「――食べたかったの」
はい? 食べられちゃうの? 何で?
この家の人は食事関係に弱い人ばかりなのか?
「ち、ちがうの……ほんとは……」
本当は……?
ぎゅっと力を入れてくる。
…………………………。
いつまで待っても続きが出てこない。完全に眠ってしまったようだ。
まあいいや。あとで起きてから聞くことにしよう。
なんとかすり抜けて朝食の用意でもしておく。
そろそろノーラと梓を起こさないと、と思う頃。
「久ぅぅぅ夜ぁぁぁぁ、なんて起こしてくれなかったの、遅刻するじゃないっ」
「あ、ごめん。いつも何時に起きてるのかわからなくて……」
それに昨日はなかなか眠れなかったようだから、できるだけ寝かせてやりたかったのだ。
「ていうか、久夜は眠くないの?」
朝葉は鏡を見て身だしなみを整えながら聞く。
「? そんなにいつも眠いわけではないぞ……?」
起きていた宇柚も朝葉と一緒に鏡を見て髪の毛を触っている。
「はあ……。もうちょっと緊張して寝不足とか言ってくれたらいいのに……」
「なにいってんだ朝葉?」
「な、なんでもない。こかすわよ」
「なんでだよ……」
宇柚はいっちょ前に、身だしなみを整えてるかと思ったら、違うかった。何やら数を数えている。
「宇柚。なにしてんだ、お前は?」
「にゅ? 眉毛にアリさん何匹乗るかなって」
「…………」
は?
「……アリさんがどのくらい眉毛に乗れるかなって」
「うん」
聞こえなかったわけじゃないんだよ。
なにこの宇柚の自信満々の笑顔。
「「あはははは」」
俺達はそれを見て笑ってしまった。大爆笑だった。
「なんで笑うのら」
「あはは……だって、へっぐ……誰も考えないよ。顔にアリが乗るなんて」
「そうだよ。おもしろすぎるって」
「そんなことはないもん」
プクーって膨れて、可愛い顔をする宇柚。
「って笑いすぎた。遅れるっ」
「急いでるならヨーグルトだけでも食べていくか?」
「ヨーグルトッ? もういいや。これだけで。いっへきまふ」
慌てて起きてきた朝葉はトーストだけ咥えて出て行った。寝言のことも「いってらっしゃい」も言えなかった。
高校生じゃあるまいしパンを銜えて登校――行き先が学校なのでこれであっているだろう――するって……。あとは曲がり角でぶつかって恋の予感をするだけだな。
ていうか今時、高校生でもそんなヤツいないよ…………たぶん。俺の知っている範囲では。日本のどこかでは毎日こんなことが起こっているのだろうか? 俺には関係ないけれど。
さ、今日もがんばらないと。
*
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
ノーラと一緒に帰ってきたのは友達のようだ。連れていいって言ったからな。
「おかえりー。あれ? 梓は?」
「少し遅くなるってー」
「おじゃまします」
改めて連れてきたお友達が登場だ。六人。男女三人ずつ。
「どうぞどうぞ。ゆっくりしていってね」
「あ、あの。サッカーゴール使ってもいいですか?」
「私たちもテニスコートいいですか?」
「ああ、いいけど……もしかしてサッカー部とテニス部とかに入ってるの?」
「そうです。いいなー家にテニスコートがあって」
俺が買ったわけではないのだけど。まあ、普通の家にはないよな。
ちなみに俺は小学校はサッカー部。中学はバスケ部。高校はまたサッカー部だった。それなりに強かったんだよウチの学校。
テニスコートは高校の体育の授業に本格的にして、家でもやりたいなーと祖父母に何気なくこぼしたら、その日の内にできてしまった……。ほとんど即決だったのだ。さすがにこれには俺もびっくりした。
「よっしゃー、行こう。こっちこっち」
引っ張っていく。こんなにも早く友達ができたのか。いいことだ。できないよりは。
特にすることもなく、のんびりとしていた。どの子も、ちょっと期待していた超小学生級というわけではなく、入部してすぐなのか、そこまでレベルも高いわけでなかった。
遊ぶのにはちょうど良いレベルだった。これぐらいがいい。
しばらくすると、梓が帰ってきたようだ。
「ただいま」
「おう、おかえり」
「おー帰ってきたか、梓もやろう」
「お、椎名とノーラが姉妹なのか? でもぜんぜん似てないよな」
「ちがうって。梓は俺がここで預かっているだけだから……」
俺が口を出してしまう。
「預かってるだけなのか。……やーい、椎名、お前捨てられたんだろ。やーい捨て子、捨て子」
リーダーっぽかった男の子がひやかす。
やーいって、死語だろそれは。この現在その言葉でからかうのか……。
「「やーい、捨て子、捨て子」」
でもさすがにこれは見逃せない。さらに口を挟もうとしたが、先にノーラが言う。
「それは違うぞっ! 謝れっ! 梓のお母さんとお父さんは梓のために一生懸命働いているんだよ。それなのに……」
「んだよ……椎名のお母さん見たことねえぞ」
「私捨てられてないもん……捨てられてないもん」
もう梓が泣きそうだ。ここでこそ俺が割って入らないといけないのだが。
「それはちがうぞ。梓のお母さんとお母さんは梓のために一生懸命働いてるんだぞ。お前たちのお父さんと一緒だろ。それなのに……」
先にノーラが言う。
そうだ。誰も悪く言う権利なんてないのだ。
「っ……」
それを聞き終えたかどうかというあたりで梓は飛び出していってしまった。いろいろ思うところがあるのだろう。保護者として俺も一言行っておかなければならないし、聞いてやらなければならない。
「おい、俺は梓を探してくるから、謝りたいのならここにいろ。ノーラ。宇柚と裕太のことよろしくな。探してくる。すぐ帰ってくると思うけど」
俺は返事を聞く前に梓を追った。これぐらいのことは返事を聞かなくても大丈夫。それぐらいの信頼関係はできている。




