お出かけ
「ぴくにっくぅー」
相変わらず、宇柚はごきげんだな。
いきなりピクニックをすることになったかというと。今日は梓やノーラが遠足だったからである。
いつもは給食で楽だったのだが、今日はお弁当がいる日。
お弁当なんて作ることがなかったのだけれど、さすがに今日は必要だった。
ほとんどのおかずが冷凍食品になってしまうよりは、簡単でミスの少なく得意なサンドイッチをと思い、なれないお弁当を作っていたのだが、今日に限って宇柚が早起きしてしまったのだ。
自分も遠足に行く、とうるさいので妥協案『梓たちと同じ所にピクニックに行く』で折り合った、現在である。
着いたところは「ワイン場」。名前の通り、ワインの原料である葡萄を栽培している。さらにワインの製造工場が見学できるのだが、敷地の所々にあり、順番もわからない。もう誰も見学する人がいないのだろう。完全に寂れてしまっている。
そのかわり、二十五メートルプールや、ゴルフというか転がすだけのゲートボールみたいな場、小動物とのふれあい広場、土器作り体験、キノコ醸成所、大掛かりな遊具のある公園、芝生の広場があり、時には地域のマラソン大会が行われたりする。
なんのための場所だよ。わからんぞ。原型がない……。
まあ、家から歩いて三十分のところにあり、入場料はタダなので丁度いいといえる目的地だ。
キノコとかワインを見ても宇柚が楽しくないようで、即刻、動物ふれあい広場に行った。
大きいものでヤギが限界。あとはウサギやモルモット。水の要らないカメもいる。あくまで陸ガメではない。
「みてみて。ウサギさん」
「おー捕まえれたか」
「なんかね、葉っぱあげたら穴から出てきてくれたのら」
「そっかそっか」
「もふもふなのら。きもちいー」
そんなこんなでいつしか時が過ぎ、お昼すぎ。
朝葉や小学生たちはここから見える広場にいるようだ。もう昼飯を食べたようで、広場でもう遊びはじめていた。
「おべんとー、おべんとー、サンドイッチーたべるのら」
これなら特に手間のかかるわけではないからな。たくさん作っておいてよかった。少しノーラや梓にシワ寄せが行ったが。
「もぐもぐ ふがふが」
「そんなに急いだら――」
「ふがっ」
「言わんこっちゃない」
まだ言っていなかったけれど。背中を叩き助けてやる。
「ぷはー死にそうだったのら」
「宇柚と久夜だー。来たのか?」
ノーラが寄ってきた。鬼ごっこの合間のようだ。
「ああ、遊びに来たんだよ。宇柚がうるさくてな」
「そっかー。じゃあ宇柚も、一緒にあそぼー」
「うん、あそぶー」
行ってしまった。鬼ごっこでは宇柚が不利なので、だるまさんがころんだに参加させてもらうらしい。迷惑じゃないかと心配したのだが「かわいいー」とワキワキとワシワシ撫でられていた。もみくちゃにされて嫌がってるような喜んでいるような。
楽しそうだからいいか。
と、梓が一人ぼっちで体育座りしているのが、視界に入った。しんどいのだろうか。
「梓もやろー」
「でも……」
ノーラが誘って参加させた。
「いいから、いいから、はやく」
「わ、わかったから、行くから」
元気みたいなのでいっか。
しんどそうなのはむしろ朝葉みたいだ。
「久夜ぁ、疲れた……。小学生は体力に底がないのかしら……」
まあな、子供って唐突に走りだしたりするからな。一斉に四十人近くの児童をになければならなかった朝葉先生、お疲れ様です。
そういえば、最近店開いていないような……。バイト募集しなければマズイだろうか。考えておこう。
それから小学生たちと別れて、宇柚を回収し、またまた動物広場で楽しく遊んだ。
結果、帰宅したのは小学生組よりも遅くなってしまった。
もちろん裕太は幼稚園に行っています