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社会問題  作者: 中井仲
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銀髪少女拾った

まだまだ未熟者ですが頑張っていくつもりです。

投稿期間が大きく開くかもしれませんがよろしくお願いします。

 世間では始業式とか入学式とかがもう終わっているかな? 

 新年度が始まって数日がたった今日。

 どうしてこんなにうまくいかないんだろう?

 はあ。

 就職してすぐに潰れるとかやめてくれよ。

 はあ。

 てくてくと歩いて家まで帰った。

 はあ。

 これからどうしようか。

 はあ。

 俺は轟木久夜。立派な社会人だった。だったのだ。過去形である。就職で大企業は厳しく、優良そうな中小企業を探しだして就職したのだが、通勤二日目で倒産した。まったく優良企業じゃなかった。

 はあ。

 こんな国が、こんな社会が、悪いんだ!

 本当に悪いのは元社長だけど。彼個人で作った借金で自己破産して会社も持っていかれた。

もともと俺は微妙に運が悪いと思う。

 大学受験で変な滑り方をした。第一志望の大学は滑り、周囲のすすめで受験してみた幼児保育科の大学にだけ引っかかったのだ。浪人する手もあったがいろいろ考えてやめた。さらにいろいろあって……言いたくなくなるような子供のような喧嘩を母親として意地になって……はい、結局勉強を頑張りすぎ、保育士と幼稚園の先生の免許を二つとも取ってやった。

 もっと違う勉強すれば良かった……。経済とか商業とかを……。

 近辺ではどこかの国から王様一家が訪問していて、祭り騒ぎになっているが俺は違う。完全に対局にいる。

 はあ。

 というように、とぼとぼと、それはもう、とぼとぼと歩いてなんとなく、公園のブランコに座ってギコギコ。

 端から見たらさぞかし絵になっているだろう。夕日を背負って……ないか。微妙な右斜めに夕日があるので。

 と、ふと顔を上げると砂場に銀色があった。スコップでも忘れたのだろうか。いやでも、子供が使うようなおもちゃに金属製はあんまりないよな。隣には誰かが作っただろう砂山が盛っている。不審に思ったのでもう少し様子を調べてみようと、そっと近づくと……女の子が地面から生えていた。

 肩まで完全に埋まっていて見えているのは頭部だけだった。

 落ちてくる美少女はよくあっても埋まっている美少女はいないだろう。

 助けを呼ばなかったのは 眠っているからだったようだ。


「こんなにたべれないよう~」

「古典的な寝言を言っているんじゃない!」


 思わずつっこんでしまった。端から見た人の角度が悪かったら砂山につっこんでいる変な人に見えるだろう。思わず辺りを見渡してしまう俺。

 俺の声で、埋まっていた目もくらむような銀髪の女の子が起きってしまった。いや別に悪いことではないんだけど、もう少しこの子の可愛い寝顔をもう少し愛でていたかったような、そんなことを思ってしまったので。

 わかっていると思うけど、ロリコンじゃないよ俺は! ここはどうあっても変わらないから!

 ただこの子の寝顔が天使のようだったのだ。


「……ん? どこ、ここ? 体がうごかないよう……」

「そりゃ埋まっているからな」

「だれだ? わたしをこんなことにして逮捕するぞ!」

「おまえは警察官か! その態勢では無理だろ」

「出―せー出―せー」

「……いいけど、俺がやったんじゃないからな。そこは間違うな」

「にゅうー……そうだったような……助けてください」

「ん、オッケー」


 いそいそと掘り出す。

 ――十分後。

 十分もかかって掘り出せたのだ。意外と大変だった。


「お前どうして埋まってたんだ?」

 

 聞きたくて聞きたくて、我慢できなかった質問を口にする。


「なんかなーおじちゃんちに行きたかったけど見つからなくてなーお山作ってたら急に地面に穴があいて落ちたんだよなー」

「で眠ってしまった、と」

「そうなのだ」


 子供らしい笑顔で首肯する。おそらく近所の子が作った落とし穴に落ちて、作っていた山の砂が流れ落ちたのだろう。


「絶対日本人じゃないよね、その髪。迷子か迷子なのか…ああもう交番いくぞ。いや交番じゃないな、警察署にいくか。ほらこい」


 最近は交番に行ってもお巡りさんはいないことのほうが多いのだ。交番の意味がない。


「行かないー。いーかーなーいー」


 ここぞというときの大学で学んだ対子供用の笑顔を浮かべて腕を引っ張っていく。


「迷子じゃないー。ここに行くんだー」


 住所らしき文字の書かれたメモを振り回しながら叫ぶ銀髪娘。隙をついてのぞき見ると、


「……ん、なんだそこか……俺んちに近いようだな。じゃあ、一緒に行くか?」

「行くー行くー。うん、いくぞー」


 で。

 その住所は……俺の家でして。引っ越してきて、まだ正確に住所を覚えていなかったのです。覚えとかないとなー。


「ついたなー」

「……おう、着いたな……俺の家に」


 なんで目的地が俺の家なんだ? 睦められているような不自然な気配が。背後でガサッと物音がした。誰もいたようには見なかったけれど。

 ピピピピピ。


「おっと、電話か、もしもし」

『もしもし。オレオレ。オレだよオレ』

「何やってんだよ――母さん。実の息子にオレオレ詐欺とかするなよ。着信画面に出てるからひっかるわけ無いだろ」

『いいじゃない。暇なんだし。あんたの就職した会社潰れたんだって。あはははは』

「笑い事じゃない。切るぞ」

『待って待って、仕事がないんだったら、おじいちゃんの店をしたら?』

「まだあったのか、喫茶店」


 祖父母の金持ちの道楽として始まった喫茶店で、祖父が死んでから休業中だった。俺はその喫茶店兼家に住んでいる。


『あると思うわよ。たぶん品物もそのままじゃないのかしら。役所の方の手続きとかは、まだ有効だったと思うわよ』


 関係無かったので確かめてはいなかったが、それはいいかも。ちゃんと就職するまでの繋ぎになる。


『ああ、そうそう。ところでそっちに銀髪の女の子がいかなかった?』

「ちょうど隣にいるよ。……ちょうど良すぎるタイミングだな。なんだよ母さんの差し金か? っていうかさっきそこにいただろ!」

『そ、そそそそんなことある訳ないじゃない。……あんた保育士でしょ』

「おい、保育士じゃねーよ。資格は持っているけどな」

『そういうことでその子預かってね』

「どこがそうことなんだよ。もっとちゃんと説明してよ」

『やよ。めんどくさい。じゃあ頑張ってね』


 プッツ。切れてしまった。

 …………。

 迷惑な親である。


「どうしたのだ?」

「いや、なんか急に疲れが出たっていうか……」

「早く休むといいぞ」

「そうする」


 こんなところ――祖父の喫茶店兼家の前で立ち話というのも変なのでとりあえず、家に招き入れた。

 俺のこの家は亡くなった祖父から譲り受けたものでもある。曽祖父は第一次世界大戦中に繁栄した船成金だった。船成金。高校の日本史Bで習わなかった? 船成金とは第一次世界大戦中のヨーロッパで不足していた船の輸送を受け持つことで、成り上がった資産家のことである。その相続金によりこの家が建てられたとか何とか。詳しくは知らない。いつ建てられたとかは聞いていないのだ。

 ちなみに俺の得意教科は日本史、政治経済、倫理、体育、そして家庭科だ。受験に使わない政治経済、倫理、体育、家庭科が得意だったから第一志望に落ちたのかもしれない……。

 そういうわけで、この家もかなりの大きさを誇っている。部屋が十個ぐらいあり、喫茶店の裏の庭もフットサルコートとテニスコートとバスケットコートが併設されている。これらのコートでいろいろ遊んだものだ。

 だから、六畳間で預かったりとかしないから、預かるのはいいのだけども、詳しく事情を聞きたいな……。


 その辺の事情はじっくり聞き出すまでもなく、判明した。家出である。

 ていうかむしろ嬉々として話してくれた。

 実家の教育が厳しくて家出したところを、うちの母さんが拾ってから数日が経ち――母はおそらく飽きたのであろうが――放り出すこともできず俺に送りつけてきたのだ。


「名前はなんていうの? 俺は轟木久夜だけど」


 この銀髪の子はノーラ・フェイツと言うそうだ。ちょうど今八歳。学校にはまだ通っていないらしい。どこの国かは忘れたそうだけど、自分でも外国人だと宣言してくれた。

 別にそんな宣言はいらないけど。


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