一匹狼と、ペンギンさん
【ユウ視点】
突然だが、私とシズクは今、ゲーセンにいる。
家でまったりしていたら突然シズクが乗り込んで来て、「行くぞ」って言われて連れてこられた。
………シズク、さすがに動詞だけ言われても…
そこからは速やかにバイクに乗せられ、いまに至る。
「私を連れて来た意味プリーズ」
「お前、どっちが好き?」
疑問に疑問で返すな!!
シズクはさも、当たり前のように問いかけてきた。
しかも、私と目をあわせず、何処かを見ながら。
少しイラっときたので、私はもう一度シズクに聞く。
「私を連れて来た意味」
「どっちが好き?」
…………………………………。はぁ。
私は聞くのを諦め、シズクの視線の先を見た。
シズクの視線の先にはクレーンゲームが2台あり、片方にはクマ、もう片方にはペンギンのぬいぐるみがあった。
………ペンギン…!!
女の子らしくない私でも、可愛いぬいぐるみは好きだ。
なかでもペンギンは、段違いに可愛い。
ぬいぐるみのペンギンは大体、まるっこくて足がすごく短く、黄色いクチバシなんかはとても可愛い。
今、目の前にいるペンギンのぬいぐるみもまた、例にもれずとても可愛い。
私は即答で「ペンギン」と答えた。
シズクは、分かった。と言いペンギンのクレーンゲームのところに向かった。
私もシズクに着いていき、シズクの横に立った。
ペンギンと答えたものの、目の前のクレーンゲームを見てあることに気付いた。
「ペンギンって…難易度高くないか…。」
────そう、さっきも述べたが、大体のペンギンのぬいぐるみはまるっこい。
したがって、とてもアームを引っ掛けづらく、クマのぬいぐるみよりも難易度は格段に上がる。
「その…取りづらかったら、クマでいいよ?」
シズクは私の好きなペンギンを取ろうとしているが、私はシズクがくれたものなら何でも好きだ。
だから、クマでもペンギンでも、重要なのはそこじゃない。
─────シズクが私のために取ろうとしている。
そのことの方が、私にとっては大切だ。
「クマもペンギンも大差ねぇよ」
「いや、あるだろ」
大差すぎるわ。
ペンギンのが可愛いぞ。……あくまで私の意見だが。
「俺はお前に、お前の好きなモノをやりてぇんだよ。なのに、取れねぇからって好きじゃねぇモノやるとか、男として最低だろが」
……………そうなのか?
最低かどうかはともかく、シズク本人がやる気みたいなので、とりあえず応援するか。
「じゃあ、楽しみにしてる」
「まかせろ」
………普段、余裕綽々なシズクがムキになってる…。ちょっと可愛い、かも。
と、ちょっとした萌えをシズクに感じていたら…
「ほらよ」
とペンギンが私の腕のなかに…!!
嬉しい、がしかし、いくらなんでも早くないか!?
「お前は神か」
「もともと得意なだけだ」
得意、とかそういうレベルじゃないだろう!!…というツッコミは、思いはしたが口に出すことはなかった。
そんなことより、腕のなかにいるペンギンの可愛さの方が数百倍大事なことだ!!!
「ありがとうシズク!!すごく嬉しい」
私は満面の笑みでシズクに礼を言った。
私にしては、とても珍しいハイテンションぶりだ。
そんな私に驚いたのか、シズク一瞬目を見開き、私に背を向けた。
────…そんなに珍しいのか。
まあ、いつも無愛想な私が急にニコニコしたら、そりゃ気味も悪いか…。
そうだとしても、少し酷すぎないか…。
そんな思考も、ペンギンみたら吹っ飛んだけどな。
もちろん、シズク君は照れてます(笑)
ユウちゃんの笑った顔が可愛いくて、グハッとしてます。
でも本文中は格好いいシズクを目指しているので、こういうヘタレ?変態?要素は後書きに書きました。