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180回目の朝明けに・・・

wish my song・・・?

作者: 歌音黒

この間の出来事から作成しました。


・・・・・・・・・ちょっと病んでます・・・(苦笑)

見慣れた楽屋風景・・・。

見慣れた窓のそと・・・。

見慣れたまち並み・・・。


一瞬見ただけじゃ何にも変わってないように見えるけど。

もうこの街や周りは少しずつ変わってる。


12年前から少しずつ・・・。



前の建物が無くなって、新しい建物が建った。

いつも渋滞だらけだった道路が、少し広くなった。

歩道を歩く人達が、ちょっとだけ少なくなってきた。


同じ仕事場にいたはずの人達が・・・。

ここからどんどんいなくなってった・・・。



一人・・・。

また一人と。

みんなどんどんいなくなってった・・・。



そして・・・、私達もいつかは・・・・・・。








「あの・・・、どうしたんですか?」

「えっ・・・?」

「・・・大丈夫?」



・・・・・・あっ、なんだ・・・。


いきなり正面から声掛けられるからビックリしたじゃん・・・。


「ううん、何でもない。ちょっと窓の外見てただけ・・・」

「ふ~ん・・・。・・・下向きながら?」

「・・・・・・・・・・・・」


“あっ・・・。”

“ちょっと今『ムッ』としたな?”


「ちょっとは空気読んで黙っててよ」

「ハハ、すみません。僕『弱KY』なんで・・・。何か考えごと?」



そうやって人が考えてること一々散策しないでよ。


っというか。

とりあえずあなたは隣の部屋でギタ練やってればいいじゃない。

午後までの長い休憩時間中なんだから・・・。




むしろ・・・・・・。

今は個人的に一人になりたいのに・・・。



「今『一人にしてくれ』って思いませんでした?」

「思ってない」

「嘘だぁ~」

「思ってない」

「じゃあなんで泣いてるんですか?」

「えっ・・・・・・」



“ん?”


“もしかしてこっちに言われるまで気付いてなかったのか?”

“さっきから思いっきり泣いてたけど・・・。”



「・・・嘘・・・。わ、私いつから泣いてた?」

「『いつから』って・・・、僕が楽屋に入った時から」

「それっていつ・・・?」

「12時半ちょい過ぎ・・・。僕今さっき入ったばっかっすよ?」



嘘・・・。

私あなたが部屋に入ったのにも気付かなかった・・・・・・。


そんなに前から泣いてたの・・・?



「は、恥ずかしい~・・・! 私ずっと泣いてたのに気付かなかっただなんて・・・。しかも思いっきり見られてるし・・・、ハハハ」

「なんで泣いてたんすか?」

「・・・えっ?」

「だから・・・、なんで泣いてたんですか? ・・・なんかここ最近そういうのが多いっすよ? ・・・・・・妙に・・・」

「・・・・・・えっ・・・」


“あっ、ヤベ・・・。”


“ちょっとストレートに訊きすぎたかなぁ・・・。”

“いくら気になったからって、こんなズバズバ尋ねると普通言いたいことも言えなくなるよなぁ~・・・。”



“特に女子は・・・。”



「『最近』? ・・・・・・もしかして前にもあった?」

「えっ? ・・・・・・う、うん・・・。でも訊かない方がいいかなぁ~っと思って訊かずにいたんやけど・・・。今日はいつにも増して泣いてたから・・・・・・」


あっ・・・。

私を心配してくれてたんだ・・・。



・・・・・・・・・・・・でもこういうのって・・・。



人に話して楽になれること?

むしろこの人に言って、こっちの気持ち軽くなるのかなぁ・・・。

むしろ傷付けちゃったりしないかなぁ・・・。


一番話しやすい相手と言ったら・・・・・・。

相手なんだけど・・・・・・・・・。



「・・・・・・・・・ねぇ・・・」

「ん?」

「この間のイベント・・・、どう思った?」

「『どう』・・・って?」

「私の歌・・・。どう思った?」


“それって歌詞のことか?”

“それとも自分の歌声のことか?”


“まあどちらにしても僕は・・・。”


「別に・・・。よかったと思いますけど? 歌詞今回ほとんど間違えずに歌えてたし、演奏もCDを再現したアレンジだったし」

「そう。CDのアレンジのまんま・・・。だけど・・・・・・」


“だけど?”


「私の歌声()は・・・、あの頃の歌声()じゃない・・・」

「・・・・・・・・・・・・」



“あぁ、そうか・・・。”

“あなたはそれでここ最近・・・・・・。”



「いや・・・! それは当たり前でしょうよ。あれから12年も経ってるんっすから、流石に」

「『当たり前』? ・・・12年後には低音が出せなくなるのは『当たり前』? 初期の頃の歌が歌えなくなるのは『当たり前』だって言うの!?」

「い、いや、別に・・・。そういうつもりで僕言ったんじゃ・・・」



“ヤッバ~・・・!”

“慰めるつもりがちょい傷つけたか・・・。”


「・・・もっと頑張ってればどうにかなったはずなのに・・・。もっと練習してれば何とかなったはずなのに・・・」

「!! そんなことして喉が潰れたらどうするんっすか! それこそ歌うどころの話じゃなくなりますよ!?」



・・・・・・それは分かってるけど・・・。

・・・・・・・・・・・・。




違う・・・。


私が言いたかったのはこんなことじゃない・・・。

私はこんなことで泣いてたんじゃない・・・。



私は・・・。

私は・・・・・・。



「私・・・。自分で初期の頃の曲歌ってみてね・・・。『うわっ、コレ歌い難っ!』って、思ったの・・・」


“あっ、謝る前に話す気になったか・・・。”


「うん。・・・それで?」

「初めはね、その程度だったの・・・。『歌い難い~(苦笑)』って、その程度・・・」

「・・・・・・うん・・・・・・」

「でもいざセットリストの曲全部歌ってみて・・・。歌いやすい曲がほとんどなかった・・・・・・」

「・・・・・・・・・うん」

「ついこの間出したばかりの新曲・・・。ほとんどアレくらいしかなかった・・・・・・」

「・・・うん・・・・・・」

「・・・自分で・・・・・・、それが悲しくなった・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「みんなが『聴きたい』っていう想いでリクエストしてくれた曲・・・、みんなほとんど初期の曲ばっかり・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「あの頃の歌がみんな大好きなのに・・・・・・。私・・・、みんなの期待に応えられてない・・・」

「・・・・・・そんなことないよ・・・」

「作曲だって歌詞だってアレンジだってそう! ・・・みんな・・・、あの頃とはみんな違う・・・。時代や周りが変わっていく度に、私達の何かも置いてけぼりにされてってる・・・。無くなってってる・・・。変わってってる・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・そうでしょう? ・・・・・・周りはそれに付いていけなくなって、それでいなくなってってるから・・・・・・。『僕はそんなの気付いてないよ』なんて・・・、言わないでよ?」


“言われなくても・・・。”

“僕は日々それにヒヤヒヤしながらやってますからね?”


「ねぇ・・・・・・。私、歌ってていいのかなぁ・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・みんなが好きだった頃の歌が歌い難くなってるのに・・・。歌ってていいのかなぁ・・・・・・」



むしろ私達・・・。

あとどれくらいここにいられるのかなぁ・・・・・・。



あとどれくらい・・・。

あの3人と・・・・・・・・・。



「・・・・・・なんかその相談聞いてたらアホらしくなった」

「・・・・・・え゛っ!?」

「何弱気になってんすか? 僕らのヴォーカルらしくない・・・。いつもの『行け行けドンドンキャラ』は何処いずこへ?」

「そ、そんなこと言わなくても・・・」



私本気で悩んでたのに・・・。

本気で泣きながら本音言ったのに・・・。


そういうこと言う!?



これだから男って・・・・・・。



「じゃあ『今回初めてライヴ見に行ったんです~♪』っていう人は?」

「・・・えっ?」

「『新曲聴けてサイコー!』『主題歌だけ聴きたくて3回も映画館に行きました(笑)』『アルバム曲全部でステキで感動!(涙)』・・・。これは今現在の話でしょ?」

「ぁ・・・・・・」

「『新曲聴いてファンになりました~♪』。そんな方もいましたよね? ・・・・・・それでも歌う価値はもう何処にもない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「今の曲だって十分、ファンは気に入ってくれてるんですよ? 僕だってあのヤマトタケルの曲は好きだし・・・。あなただってスマイル全開のアレ、好きでしょ? 『みんなが歌ってくれる~♪』言うて・・・」

「・・・あなたはギターが苦手みたいだけどね」


“・・・・・・ほっといてんか・・・。”


「だからこれからは・・・。新たに『また1から始めてく!』っていう感じでやってったらいいんじゃないですか? ちょうど10周年の節目後だし・・・」

「・・・・・・それでいいのかな」

「うん。いいよ、たぶん・・・」


“ゴメン。”

“ややテキトーに言ったわ・・・、僕・・・。”


「・・・・・・じゃあさ・・・」

「?」

「もう少しだけ・・・。もう少しだけみんな・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「私と・・・、付き合ってくれる?」



支えてくれる周りのみんなも・・・。

キーボードが得意なあの人も・・・。

作詞が魅力的なあの人も・・・。

もちろん、目の前のギタリストでもあるあなたも・・・。


みんな・・・。

みんなもう少しだけ・・・・・・。



私と一緒にいてくれる?

私と一緒にやってくれる?

私の歌と・・・、一緒に・・・・・・。



「・・・ええ、もちろん」

「! ・・・・・・ホント?」

「嘘言ってどうするんっすか・・・」

「私のこと慰めようとして言ってるんじゃないよね?」


“うわっ!”

“なんか沈んでた割には堂々と鋭いことを・・・!”



“・・・・・・・・・一応本心で言ってたから別にアレだけど・・・。”


「まさか・・・」

「まあ、どっちでもいいんだけどね・・・。どちらも『歌っていいかな?』に『YES』なんだから・・・」


“いやいやいやいや・・・。”


「・・・なんかそう言われるとこっちがショックなんですけど・・・。一応コレでも本心で言ってましたからね!?」

「分かってる。・・・冗談よ」


でもホントはちょっと本気・・・。


「・・・・・・まあ個人的には『もう少し』と言わず・・・」

「えっ・・・」

「やっていきたいっすけどね?」


“たとえここで最後のバンドになろうと・・・。”

“みんなの記憶からなくなっていこうと・・・。”



“僕らはあなたの歌に付いていきます。”

“その歌声が、限界を迎えてしまうまで・・・。”



“12年間も行動を共にした・・・。”

“『バンドメンバー』として・・・・・・。”



「・・・・・・・・・ありがとう」


・・・・・・ゴメンね。

ちょっとだけ疑って・・・。


「本当にありがとうね。ギターの雨男さん?」

「・・・『雨男』は余計ですよ。『雨男』は・・・」

「だって台風でイベント中止にさせたじゃない」

「そうなんっすよ~。ホンマにタイミングよく台風がって・・・、コラ!!」

「ハハ・・・・・・なんか今の地味に面白い・・・。何? 練習したの??」

「ま、まあ・・・。毎回ワンパターンだったんで・・・」

「ハハハッ」


“・・・・・・しっかし『喜怒哀楽』が激しい人やなぁ~。”

“もう泣き止んでいつもの歌姫に戻ったぞ・・・。”


「じゃあ今度どっかの公演でやってよ」

「! まさかのっ!?」

「うん♪ 私が合いの手入れるから。何ならあの二人のどっちかでもいいけど」

「・・・誰になっても恐ろしいっ!!」

「ハハハッ」



そんなアットホームに等しい私達のバンドも、来年はいよいよ13周年。

ちょっと数字は悪いけど、過去の4周年や9周年も何のことなく乗り越えてきたんだし・・・・・・。



きっと今年も、変わらずにこのままいられるよね?



ふっと流れて変わっていく雲を見つめながら、私はそっと、笑いました・・・。



ファンのままであり続けたい・・・。

たとえあの頃とは違ってしまっていても・・・・・・。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 小説、素敵です! GARNETの舞台裏が覗けた気がして、楽しかったです^^ ありがとうございました♪ [一言] 私は昔も今も好きですー!! はい、叫びたくて叫びました(笑) 高校の頃…
[良い点] 重い… 確かにこの間のファンクラブイベントの曲はほとんど初期の頃の曲でしたからねアーティストが初期の声が出なくて苦悩するのは当然の道ですから実際こんなこと考えているのかもしれませんしね …
2012/10/13 20:17 退会済み
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