wish my song・・・?
この間の出来事から作成しました。
・・・・・・・・・ちょっと病んでます・・・(苦笑)
見慣れた楽屋風景・・・。
見慣れた窓のそと・・・。
見慣れたまち並み・・・。
一瞬見ただけじゃ何にも変わってないように見えるけど。
もうこの街や周りは少しずつ変わってる。
12年前から少しずつ・・・。
前の建物が無くなって、新しい建物が建った。
いつも渋滞だらけだった道路が、少し広くなった。
歩道を歩く人達が、ちょっとだけ少なくなってきた。
同じ仕事場にいたはずの人達が・・・。
ここからどんどんいなくなってった・・・。
一人・・・。
また一人と。
みんなどんどんいなくなってった・・・。
そして・・・、私達もいつかは・・・・・・。
「あの・・・、どうしたんですか?」
「えっ・・・?」
「・・・大丈夫?」
・・・・・・あっ、なんだ・・・。
いきなり正面から声掛けられるからビックリしたじゃん・・・。
「ううん、何でもない。ちょっと窓の外見てただけ・・・」
「ふ~ん・・・。・・・下向きながら?」
「・・・・・・・・・・・・」
“あっ・・・。”
“ちょっと今『ムッ』としたな?”
「ちょっとは空気読んで黙っててよ」
「ハハ、すみません。僕『弱KY』なんで・・・。何か考えごと?」
そうやって人が考えてること一々散策しないでよ。
っというか。
とりあえずあなたは隣の部屋でギタ練やってればいいじゃない。
午後までの長い休憩時間中なんだから・・・。
むしろ・・・・・・。
今は個人的に一人になりたいのに・・・。
「今『一人にしてくれ』って思いませんでした?」
「思ってない」
「嘘だぁ~」
「思ってない」
「じゃあなんで泣いてるんですか?」
「えっ・・・・・・」
“ん?”
“もしかしてこっちに言われるまで気付いてなかったのか?”
“さっきから思いっきり泣いてたけど・・・。”
「・・・嘘・・・。わ、私いつから泣いてた?」
「『いつから』って・・・、僕が楽屋に入った時から」
「それっていつ・・・?」
「12時半ちょい過ぎ・・・。僕今さっき入ったばっかっすよ?」
嘘・・・。
私あなたが部屋に入ったのにも気付かなかった・・・・・・。
そんなに前から泣いてたの・・・?
「は、恥ずかしい~・・・! 私ずっと泣いてたのに気付かなかっただなんて・・・。しかも思いっきり見られてるし・・・、ハハハ」
「なんで泣いてたんすか?」
「・・・えっ?」
「だから・・・、なんで泣いてたんですか? ・・・なんかここ最近そういうのが多いっすよ? ・・・・・・妙に・・・」
「・・・・・・えっ・・・」
“あっ、ヤベ・・・。”
“ちょっとストレートに訊きすぎたかなぁ・・・。”
“いくら気になったからって、こんなズバズバ尋ねると普通言いたいことも言えなくなるよなぁ~・・・。”
“特に女子は・・・。”
「『最近』? ・・・・・・もしかして前にもあった?」
「えっ? ・・・・・・う、うん・・・。でも訊かない方がいいかなぁ~っと思って訊かずにいたんやけど・・・。今日はいつにも増して泣いてたから・・・・・・」
あっ・・・。
私を心配してくれてたんだ・・・。
・・・・・・・・・・・・でもこういうのって・・・。
人に話して楽になれること?
むしろこの人に言って、こっちの気持ち軽くなるのかなぁ・・・。
むしろ傷付けちゃったりしないかなぁ・・・。
一番話しやすい相手と言ったら・・・・・・。
相手なんだけど・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・ねぇ・・・」
「ん?」
「この間のイベント・・・、どう思った?」
「『どう』・・・って?」
「私の歌・・・。どう思った?」
“それって歌詞のことか?”
“それとも自分の歌声のことか?”
“まあどちらにしても僕は・・・。”
「別に・・・。よかったと思いますけど? 歌詞今回ほとんど間違えずに歌えてたし、演奏もCDを再現したアレンジだったし」
「そう。CDのアレンジのまんま・・・。だけど・・・・・・」
“だけど?”
「私の歌声は・・・、あの頃の歌声じゃない・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
“あぁ、そうか・・・。”
“あなたはそれでここ最近・・・・・・。”
「いや・・・! それは当たり前でしょうよ。あれから12年も経ってるんっすから、流石に」
「『当たり前』? ・・・12年後には低音が出せなくなるのは『当たり前』? 初期の頃の歌が歌えなくなるのは『当たり前』だって言うの!?」
「い、いや、別に・・・。そういうつもりで僕言ったんじゃ・・・」
“ヤッバ~・・・!”
“慰めるつもりがちょい傷つけたか・・・。”
「・・・もっと頑張ってればどうにかなったはずなのに・・・。もっと練習してれば何とかなったはずなのに・・・」
「!! そんなことして喉が潰れたらどうするんっすか! それこそ歌うどころの話じゃなくなりますよ!?」
・・・・・・それは分かってるけど・・・。
・・・・・・・・・・・・。
違う・・・。
私が言いたかったのはこんなことじゃない・・・。
私はこんなことで泣いてたんじゃない・・・。
私は・・・。
私は・・・・・・。
「私・・・。自分で初期の頃の曲歌ってみてね・・・。『うわっ、コレ歌い難っ!』って、思ったの・・・」
“あっ、謝る前に話す気になったか・・・。”
「うん。・・・それで?」
「初めはね、その程度だったの・・・。『歌い難い~(苦笑)』って、その程度・・・」
「・・・・・・うん・・・・・・」
「でもいざセットリストの曲全部歌ってみて・・・。歌いやすい曲がほとんどなかった・・・・・・」
「・・・・・・・・・うん」
「ついこの間出したばかりの新曲・・・。ほとんどアレくらいしかなかった・・・・・・」
「・・・うん・・・・・・」
「・・・自分で・・・・・・、それが悲しくなった・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「みんなが『聴きたい』っていう想いでリクエストしてくれた曲・・・、みんなほとんど初期の曲ばっかり・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「あの頃の歌がみんな大好きなのに・・・・・・。私・・・、みんなの期待に応えられてない・・・」
「・・・・・・そんなことないよ・・・」
「作曲だって歌詞だってアレンジだってそう! ・・・みんな・・・、あの頃とはみんな違う・・・。時代や周りが変わっていく度に、私達の何かも置いてけぼりにされてってる・・・。無くなってってる・・・。変わってってる・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・そうでしょう? ・・・・・・周りはそれに付いていけなくなって、それでいなくなってってるから・・・・・・。『僕はそんなの気付いてないよ』なんて・・・、言わないでよ?」
“言われなくても・・・。”
“僕は日々それにヒヤヒヤしながらやってますからね?”
「ねぇ・・・・・・。私、歌ってていいのかなぁ・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・みんなが好きだった頃の歌が歌い難くなってるのに・・・。歌ってていいのかなぁ・・・・・・」
むしろ私達・・・。
あとどれくらいここにいられるのかなぁ・・・・・・。
あとどれくらい・・・。
あの3人と・・・・・・・・・。
「・・・・・・なんかその相談聞いてたらアホらしくなった」
「・・・・・・え゛っ!?」
「何弱気になってんすか? 僕らのヴォーカルらしくない・・・。いつもの『行け行けドンドンキャラ』は何処へ?」
「そ、そんなこと言わなくても・・・」
私本気で悩んでたのに・・・。
本気で泣きながら本音言ったのに・・・。
そういうこと言う!?
これだから男って・・・・・・。
「じゃあ『今回初めてライヴ見に行ったんです~♪』っていう人は?」
「・・・えっ?」
「『新曲聴けてサイコー!』『主題歌だけ聴きたくて3回も映画館に行きました(笑)』『アルバム曲全部でステキで感動!(涙)』・・・。これは今現在の話でしょ?」
「ぁ・・・・・・」
「『新曲聴いてファンになりました~♪』。そんな方もいましたよね? ・・・・・・それでも歌う価値はもう何処にもない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「今の曲だって十分、ファンは気に入ってくれてるんですよ? 僕だってあのヤマトタケルの曲は好きだし・・・。あなただってスマイル全開のアレ、好きでしょ? 『みんなが歌ってくれる~♪』言うて・・・」
「・・・あなたはギターが苦手みたいだけどね」
“・・・・・・ほっといてんか・・・。”
「だからこれからは・・・。新たに『また1から始めてく!』っていう感じでやってったらいいんじゃないですか? ちょうど10周年の節目後だし・・・」
「・・・・・・それでいいのかな」
「うん。いいよ、たぶん・・・」
“ゴメン。”
“ややテキトーに言ったわ・・・、僕・・・。”
「・・・・・・じゃあさ・・・」
「?」
「もう少しだけ・・・。もう少しだけみんな・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「私と・・・、付き合ってくれる?」
支えてくれる周りのみんなも・・・。
キーボードが得意なあの人も・・・。
作詞が魅力的なあの人も・・・。
もちろん、目の前のギタリストでもあるあなたも・・・。
みんな・・・。
みんなもう少しだけ・・・・・・。
私と一緒にいてくれる?
私と一緒にやってくれる?
私の歌と・・・、一緒に・・・・・・。
「・・・ええ、もちろん」
「! ・・・・・・ホント?」
「嘘言ってどうするんっすか・・・」
「私のこと慰めようとして言ってるんじゃないよね?」
“うわっ!”
“なんか沈んでた割には堂々と鋭いことを・・・!”
“・・・・・・・・・一応本心で言ってたから別にアレだけど・・・。”
「まさか・・・」
「まあ、どっちでもいいんだけどね・・・。どちらも『歌っていいかな?』に『YES』なんだから・・・」
“いやいやいやいや・・・。”
「・・・なんかそう言われるとこっちがショックなんですけど・・・。一応コレでも本心で言ってましたからね!?」
「分かってる。・・・冗談よ」
でもホントはちょっと本気・・・。
「・・・・・・まあ個人的には『もう少し』と言わず・・・」
「えっ・・・」
「やっていきたいっすけどね?」
“たとえここで最後のバンドになろうと・・・。”
“みんなの記憶からなくなっていこうと・・・。”
“僕らはあなたの歌に付いていきます。”
“その歌声が、限界を迎えてしまうまで・・・。”
“12年間も行動を共にした・・・。”
“『バンドメンバー』として・・・・・・。”
「・・・・・・・・・ありがとう」
・・・・・・ゴメンね。
ちょっとだけ疑って・・・。
「本当にありがとうね。ギターの雨男さん?」
「・・・『雨男』は余計ですよ。『雨男』は・・・」
「だって台風でイベント中止にさせたじゃない」
「そうなんっすよ~。ホンマにタイミングよく台風がって・・・、コラ!!」
「ハハ・・・・・・なんか今の地味に面白い・・・。何? 練習したの??」
「ま、まあ・・・。毎回ワンパターンだったんで・・・」
「ハハハッ」
“・・・・・・しっかし『喜怒哀楽』が激しい人やなぁ~。”
“もう泣き止んでいつもの歌姫に戻ったぞ・・・。”
「じゃあ今度どっかの公演でやってよ」
「! まさかのっ!?」
「うん♪ 私が合いの手入れるから。何ならあの二人のどっちかでもいいけど」
「・・・誰になっても恐ろしいっ!!」
「ハハハッ」
そんなアットホームに等しい私達のバンドも、来年はいよいよ13周年。
ちょっと数字は悪いけど、過去の4周年や9周年も何のことなく乗り越えてきたんだし・・・・・・。
きっと今年も、変わらずにこのままいられるよね?
ふっと流れて変わっていく雲を見つめながら、私はそっと、笑いました・・・。
ファンのままであり続けたい・・・。
たとえあの頃とは違ってしまっていても・・・・・・。