密かな目標。
誰にも譲りたくない、『役目』のこと。
僕等の住む里には『外』にあるという学校というものがない。
もちろん、文字とかいろんな事を学ばなきゃいけないのは一緒なんだけど。
魔法の使い方を覚える方が先決という考え方で、僕等はそれぞれ先輩の魔法使いに魔法の使い方と、それに付随して色々と基本的な事を教えてもらう。
僕の先生は僕の従兄。
サエナは叔母さん。
リルーはお母さん。
でも、ガーヴェはこの里にただ一人しかいない光輝魔法の使い手だから、先輩に当たる人は当然いない。
「いいよなあ~。マリト達は」
ガーヴェは不満そうにいつも言う。
もちろん、ガーヴェ一人を放っておく訳にもいかないから、教師代わりの人がつくんだけど、それが長(つまり僕の祖父)だから堪らない。
いつもこってり絞られているらしい……。気の毒に。
でも、僕は知っている。
ガーヴェの先代に当たる人がじいちゃんの親友だったって事。だからこそ、じいちゃんはガーヴェの教師になれたんだ。
ずっと、子供の頃からすぐ近くで光輝魔法を見ていていたから──。
だから僕がガーヴェより長生きをしたら、今度はきっと僕の番。もちろん、僕が先に死ぬって事もあり得るけど……。
そうなってもいいように、しっかり見ていようと思うんだ。
自分本来のものじゃない魔法を教える事はきっと思うより難しいだろうと思うけど、ガーヴェとは生まれた時からの付き合いだもの。他の誰にもその役目を譲るつもりはないんだ。
そして多分、じいちゃんがいつもガーヴェに言うみたいに、『先代は素晴らしかった』って言うんだろうな。
……これはガーヴェ自身には教えない、秘密の目標。