12.灯り~明り
「今は静かに眠るんだ」
ナギの力を介した俺の言葉で少女は安らかな眠りについた。
意識が途切れる最中、彼女も泣いていた。
「許さない」と歯を食いしばり、涙をこぼしながら倒れこんだ。
12.灯り~明り
ナギの病室を訪れたのは真夜中になってからだった。
ベッドに寝そべって週刊誌を読んでいた。
俺の気配に気付くや背中を向けたままで話し始めた。
「受け入れろ。でないと俺達が殺されていた」
「殺された方が良かったなんてことは」
有り得ない。
命があるから悲しみや喜びや憎しみがあるんだ。
死んでしまったら何も考えられないし伝えられない。
こんなに悲しいことはない。
わかっているのになぜあの時、「母の死が悲しくなかった」なんて口走ったのだろうか。
4月25日、事故から一周忌を迎えた今日。
ソニアはあれからずっと病院で眠り続けている。
目覚めるのは今日か明日か、それとも一年後か。
聞こえていないだろうけどここで伝えておく。
「嘘はついてないよ。
俺が生きる目的を作る。
許してもらえないだろうけどそれでいい。
これ以上誰も不幸にならなくて済む方法を一緒に考えよう」
そんな都合の良い話。
しかし夢物語にはさせない。
桜の花は既に散ってしまい、若葉が芽吹きはじめていた。
尺が余ったので兄、ナギが補足物語を伝える。
二人の敵を相手する作戦に当たり、トムに支配の力を丸ごと与えたおかげで厄介なことになった。
俺の力が弱まり、その分のパワーがトムに定着してしまったようだ。
そしてイレギュラーは重なる。
病室にあいつが見舞いに訪れた。
「ひさしぶりだねナギ。私の愛する弟よ」
相変わらずの渇いた笑みが気持ち悪かった。
To be continued…
第二章、完です。
三年近く前に執筆した物語なのに、転載が遅れてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいです。
第三章はこの辺りにあります↓
http://ameblo.jp/halxion/theme6-10004894890.html#main