5 おいでませテレスティア王立学園
「それでは新入生挨拶。入学試験主席のサイフォン・アレキサンドロス君前へ」
私は席を立ち「はい」と声を上げ壇上へ上がる。
前世の記憶があり子供の吸収力のあった私には、この世界の試験は非常に容易かったのです。
一番苦労した科目は魔法学だったが、魔法陣と詠唱、魔法史についての筆記だけだったので助かったのは言うまでもありません。
もし魔法の実技があれば入学自体怪しかったかもしれませんが、剣術志望の私は実技試験も剣術だったので大助かりです。
正直剣術の腕は子供の頃から全く上達していませんが、試験管も手を抜いてくれたのでしょう。
余りにも手を抜いてくれるものですすから倒してしまっていいものか悩み、中々決着がつかず終わっていたので心配でしたが杞憂でした。
倒さなくて良かったのは言うまでもありません、なんせ剣術実技試験がトップだったのですから。
あれは実技と言うよりも心の試練だったのだと思います。
あと先に渡しておいた菓子折りが効いたのは間違いありません。
所詮この世も処世術が大切だと言う事です。あぁ世知辛い。
「紹介に預かりましたサイフォン・アレキサンドロスです。これから3年間このセレスティア王立学園で学び、王国の礎となり、民と王を守る為の訓練を怠らず、邁進する事をここに誓い挨拶と代えさせて頂きます。また教師の先生方並びに先輩方には若輩者の私達を導いて頂ければ幸いです(イジメとかやめてください)。これから3年間共に学ぶ同級生一同を代表して、何卒宜しくお願い致します。入学生代表、サイフォン騎士爵嫡男アレキサンドロス」
「あいつサイフォン騎士団長の息子だぜ」
「キャッ!眼鏡が知的なのに騎士団長の嫡男て事は強いんでしょ!なんかイイわ」
「そうね、肩幅もなんか頼れる感じがいいかも」
「これは競争率高そう」
そんな声があちらこちらから聞こえて来る。
眼鏡を掛けていると知的に見えるのは仕方がないとしても、事実この学園程度のレベルであれば教師をしても問題ないと思うのは少し傲慢ですね。止めておきましょう。
ですが挨拶を終え席に戻る途中、不穏な声が耳に入って来ました。
「なんで代表挨拶が王子じゃなくてあんなモブなのよ。これじゃこの先どうなるかわからなくなっちゃうじゃない!」
なんでしょうか。
やはり貴族の学園なだけあって、王子ファンも居ると言うことでしょうが……この先とはいったい――痛っ!
「あら私とした事が。お怪我はありませんか?」
歩いて自席に戻る途中、私の足元がおもいっきり踏み抜かれています。
ですが私はその奇行に怒るなんて事は絶対にしません。
なんせこの世の黄金比を詰め合わせたかのような綺麗な見慣れた足なのですから。
見上げればそっぽを向いて周りに笑顔を振りまくテルルの姿。
「テルル様、どうぞ先に足を上げて頂けると幸いです」
いつも私を蹴るその足を、いつもの様に馴れた手つきで足を触ろうとしたその瞬間。
「貴様どういうつもりだ!」
男性の手が私の肩を掴む。
振り向くと、そこには金髪を靡かせる白い制服の男子生徒が、鬼の形相で私を見下ろしていました。
この学園は貴族専門の学園であり、親の階級によりその制服にも色分けがあります。
王族、大公、公爵、侯爵家までが白い制服。
伯爵、子爵、男爵、騎士爵は黒色と決まっている。
特に白い制服は、その爵位の少なさから必然的に子供の数も少ないわけなのですが……これは厄介です。
どう切り抜けるにしても、彼が何故怒っているのかがわかりません。
ここは一旦様子を。
「貴様!何故テルマイル嬢をテ、テ、テテテ、テルル様なぞとそ、そんな馴れ馴れしく呼んでいるんだ!」
んー、これは失念してました。
そう言えば彼女の名前はテルマイルで間違いないですが、ずっと愛称で呼んでいたのでその違和感に私自身が気付く事が出来ませんでした。
確かに、ただの騎士爵の息子が公爵家令嬢を愛称で呼ぶのは不味いですね。
ですが大人を舐めない方が良いでしょう。こういった場合は惚けるのが大人の振る舞い方なのですよ少年。
「えっと、私はテルマイル様と申し上げたつもりでしたが気が動転してしまい、舌をかんでしまいその様に言ってしまったかもしれません。もし貴方に不快感を与えてしまったのあれば謝罪致します」
どうです?怒れる少年。
冷静に返されては怒るのも馬鹿らしくなるでしょ?
しかも直ぐ様の訂正と謝罪。ぐうの根も出ないでしょう。
「ふざけるな!そんな事でこの俺は騙されないぞ!」
あれ?
「テルマイル嬢は俺の婚約者だ!お前の様な下賤貴族が断りもなく喋っていい相手ではないわ!」
あっれ~~~?




