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戦隊ピンクは素直でいたい〜頼むから私に振り向いてくれ〜  作者: 仮面大将G


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第7話 発注ミス

 結局エナジードリンクの案で広告を作ることを決めた私は、早速エナジードリンクを発注していた。どれぐらいあればいいんだろうか? まあとりあえず、橋田がNGを出しまくっても大丈夫なように多めに頼んでおくか。


 それにしても橋田、ヒーローの顔をしてたなあ……。あの通信、戦隊っぽくて実にかっこよかった。私も戦隊ヒーローになって、あんな風に怪人を倒しに向かってみたいものだ。


 しかしあの通信、おじさんの声でしかも関西弁だったな。恐らく通信してきていたのがハシレンジャーの司令官なんだろうが、関西人なのかな? 橋田のやつ、関西人にもツッコミを入れるなんて、すごいツッコミスキルの持ち主だな。


 そんなことを考えながらエナジードリンクを発注し終えた私は、一旦広報から経理の仕事に戻った。


 そして昼休憩でペペロンチーノとカルボナーラを平らげてオフィスに戻ると、何故かオフィスが騒然としている。なんだ? 何かあったのか?


 戸惑いながら自分のデスクに戻ろうとすると、社長が私を呼び止めた。


「鳥羽くん! 大変だよ!」


「どうしたんですかミスシャー?」


「まだその呼び方なのかね!? いや呼び方はどうでもいいんだが、これを見てくれたまえ!」


「なんですかミスシャー、そんなに大騒ぎして。まるでゴリラに将棋で負けた時みたいですよ?」


「例えがピンと来ないね!? いやそれはいいんだ! あれを見てくれたまえ!」


「騒がしいですよミスシャー。少し落ち着いてください。ほら、ゴリラ式深呼吸をして!」


「ゴリラ式深呼吸!? 聞いたことないんだが!? いやそれはいいんだ! 早くあれを!」


「うるさいですよミスシャー。もう少し静かにしてくださいよ。子ども図書館ぐらい静かに」


「早く見てもらえるかね!?」


 なんだ騒がしいな……。社長が指さした方を見ると、大量のダンボール箱が積み上げられている。なんだあれは……?


「ミスシャー、あれはなんです?」


「ミスシャー呼びは変えないんだね……。まあそれはいいんだが、誰かがエナジードリンクを誤発注したようでね。鳥羽くん、何か知らないかね?」


「ああ、私です」


「君かね!? ええ!? なんであんな大量のエナジードリンクを!?」


「ああいや、橋田の広告を作るって言ってたじゃないですか。あれに使うエナジードリンクを少し多めに……いやでもそれにしても多いな。誰かが誤発注したんですかね?」


「君じゃないのかね!? エナジードリンクを発注したのは君だけだよね!?」


「ああ、じゃあ私です」


「なんで君は落ち着いているんだね!?」


 これは困ったことになったなあ……。何故か私はエナジードリンクを誤発注したらしい。あ、そういや20本発注しようとして20ダースにした気がするな。それは多いな……。


 ……ん!? これ大ミスじゃないか!? 私はとんでもない大ミスをしたのでは!?


「ミスシャー、大変じゃないですか!」


「だからそう言ってるだろう! なんとかしてくれたまえ!」


「分かりました! とりあえずこれは橋田の広告に使う用だから、橋田に電話を……」


 スマホを取りだして橋田の番号にかけるが、なかなか繋がらない。まさか今も戦ってるのか? だとしても出てくれ! 上司からの電話なんだぞ! いや世界の危機に比べれば大したこと無いかもしれないけど!


 何度か電話をかけて、ようやく橋田に繋がった。


「お疲れ様です。橋田です」


「橋田! やっと繋がった! 大変だ! 部屋を借りる前にするのは内見だ!」


「内見は関係無いでしょう!? 落ち着いてください鳥羽部長。何があったんです?」


「事情は後で説明する! とにかく早く会社へ来てくれ! できれば竹馬で!」


「何故竹馬の方が速いと思ったのか分かりませんが、急ぎで向かいます!」


「ありがとう! 待ってるぞ!」


 電話を切ると、体の力が一気に抜ける。私は緊張してたのか……? 橋田に電話をかけることが、こんなに緊張することなんて……。情けないことだが、やはり私はそれだけ橋田が好きなんだな。


 しばらくすると、橋田がオフィスに駆け込んで来た。息を切らしているところを見ると、走って来てくれたみたいだな。真面目なやつだ。


「鳥羽部長! どうしたんです!」


「橋田! やっと来たか! 待ちくたびれて干し柿になるところだったぞ!」


「それまず柿になるところからですよね!? それより、何があったか教えてくれますか?」


「あ、ああ、そうだな。橋田、これを見てくれ!」


 そう言ってダンボール箱の山を指さす。側面にはアメリカンな毛むくじゃらのキャラクターが描いてあって、明らかにオフィスにあるはずのないものだ。いや私が頼んだエナジードリンクではあるんだけども。ていうかよく考えたら届くの早すぎるだろ! なんで朝注文してもう届いてるんだ!?


 橋田は戸惑ったような顔をしていたが、1度呼吸を整えてから私に話しかけてきた。


「部長、これは何です?」


「前に言っただろう? 広告にはエナジードリンクを使うって」


「あれ本気だったんですか……。ん? ちょっと待ってください。てことは……」


「ああ。これは全部エナジードリンクだ」


「何してるんですか! 20本て話じゃなかったですか!?」


「ああ。私もそのつもりだったんだが……。間違って20ダース発注してしまったみたいだ」


「なんてことだ……。あの鳥羽部長が発注ミスなんて珍しいですね?」


「ああ……。私としたことが、ネイルに付けた漢字の『十二』のパーツを見ていたら、ダースで発注してしまったんだ」


「どんなパーツを付けてるんですか! そんなことで発注ミスしないでください!」


 実際今私の左手の親指には漢字の『十二』のパーツが付いている。橋田のことをボーッと考えながらこれを見ていたから、発注ミスなんてしてしまったんだな……。私のバカ! ギャル! 美人上司!


 ……とまあそんなことを言っている場合ではないので、橋田に助けを求める。


「そこでだ橋田、頼みがあるんだが……」


「なんとなく想像はつきますが、予め言っておきます。嫌です」


「まだ何も言ってないぞ! 上司の話はちゃんと聞いてくれ!」


「はあ……。分かりました。一応聞きます」


「よし、それでこそ橋田だ。あとで私の手作り弁当をやろう。ラメ入りの」


「弁当までデコらないでください! それで、なんですか?」


 私は近くにあったエナジードリンクのダンボール箱を1箱抱え上げ、橋田の前にドンと置いた。


「これを全部飲んでくれ!」


「言うと思いましたよ! だから嫌だって言ったんです!」


「安心しろ! おかわりもいくらでもあるぞ!」


「おかわりがあるから安心できないんです! カフェイン過剰摂取でしょう!?」


「大丈夫だ! カフェインはちゃんと君を応援してラッパを吹いてくれるぞ!」


「俺は野球選手ですか!? そんな応援は要らないです!」


「真ん中で分けろ〜♪ 黒髪センター♪ 艶のある髪の毛〜♪ は〜し〜だあお〜い〜♪ かっ飛ばせー! は・し・だ!」


「適当な応援歌を作らないでください! なんで髪の毛のことにしか触れないんですか!」


 そう言うだろうと思ったぞ。いや応援歌のくだりは私がテンパって生まれたものだから想定外だが。橋田が全部飲めないことなんて、私も分かっている。私の目的は、ハシレンジャーの基地へこれを持って行き、しれっとハシレンジャーに接触して仲良くなることだ! いつか基地へ行けないかと考えていたが、発注ミスのおかげで早く行けそうだぞ! ありがとう発注ミス!

 私はにやけそうな口元を気合いで押さえ付け、橋田に提案をする。


「橋田、ヒーローは常に元気が無いといけないだろ? 君だけじゃ一気飲みしきれないのはちゃんと分かってるぞ」


「一気飲みさせるつもりだったんですか!?」


「そこでだ! 君の仲間たちのところへこれを運ばないか? ヒーローとして、喜んで受け取ってもらえると信じているぞ!」


 橋田は少し考えていたようだったが、流石に自分で全部飲むよりは仲間に手伝ってもらったほうが良いと納得したのだろう。頷いてから再び口を開いた。


「分かりました。ならそのダンボール箱を基地へ運びます。……でも俺一人じゃ……」


「大丈夫! 私も手伝う!」


「……はい? 鳥羽部長を基地へ連れて行くってことですか?」


「そうだ! これだけ協力するんだから、私にも基地を見学する権利ぐらいあるだろう? あとあわよくば私も変身したい」


「部長の発注ミスですけどね……。まあ基地には特に何も無いので見ても問題無いでしょう。あと最後なんて言いました?」


「よーし! そうと決まれば基地へ出発だー! みんな、行ってくるぞ! ローラーブレードで!」


「普通の移動手段は無いんですか!?」


 ひゃっほー! ラッキー! これで私もハシレンジャーの基地に行けるぞ! あわよくば私も変身できるようにしてくれたりしないだろうか……?

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