第34話 レッドのパワーアップ
私たちが投げ込んだ爆弾は、穴の中で大爆発。大きな火柱が上がったのを見て、私たちは穴に背を向けた。
まあ私の爆弾にかかればこのぐらい楽勝だな! 幹部と言っても、やはり大したことは無かった。個人的には百人一首の方が難しかったぞ! あれはもう覚えるのに苦労して、あの時期だけ国語の成績が悪かったからなあ。
「おい、どこ行こうってんだよ」
そんなことを考えていると、聞こえるはずの無い声が聞こえてくる。ん? 聞き間違いか? 今のはケイシマンの声だったような気が……。
一応振り返ると、穴の中から煤まみれのケイシマンが這い上がって来るところだった。は……? 私の爆弾で倒されない……? 確実に爆破したはずなのに! なんでだ! あと電車が混んでるのに奥の方に詰めない人たちはなんでなんだ! そっちも気になって仕方ないぞ! 詰めればいいじゃないか詰めれば!
「なんで俺様がまだ生きてるのか、なんで俺様のMBTIがINFPなのかって顔してるから教えてやるぜ」
「後半はどうでもいい! ていうかお前仲介者なのか!? 実は心優しいのか!?」
「俺様は周りの人間がどんな顔をしているか、常に様子を窺ってその時その時に最適な行動を取れるよう心がけてきた」
「めちゃくちゃ仲介者じゃないか! なんでそのキャラでそんな性格なんだ!?」
「ある日MBTI診断っていうものを見つけて意気揚々とやってみたら、案の定仲介者が出たってわけだ」
「学生か! いやだからお前の性格はどうでもいいから、何故まだ生きてるのかを教えろ!」
「ああそうだったな。俺様は筋肉を硬化させることで爆発に耐えた、ただそれだけだ」
「……は?」
なるほど、筋肉で耐えたわけだな! 流石は脳筋! 理想の筋肉だ! やはり私ももっと鍛えておかないとな! 筋肉は全てを解決する! ムキムキになることで、きっと橋田も振り向いてくれるはず! ……いや、引かれそうじゃないか?
「てことでよお、続きやろうぜ続き。こおり鬼でいいか?」
「いいわけあるか! なんで前回からお前は遊ぼうとする!?」
「じゃー俺が鬼なー! タッチされたら硬直して痙攣するんだぞー!」
「だから乗るな! それタッチされた時に死んでないか!?」
「はし……だ……あとは……まかせた……ぞ……」
「ちょ、部長そんなことでチェンジ解除して死ぬ演技するのやめてください! 乗らなくていいですから!」
「君は……明日……から……総務部だ……」
「遺言で部署異動伝えないでください! え、俺明日から総務なんですか!?」
ノリでチェンジを解いてしまった私は、ブルー/橋田にもう一度チェンジさせられる。むう、変身シーンはちゃんと毎回カットを使ってやらせて欲しいものだぞ!
私がチェンジを終えると、イエロー/黄花くんがケイシマンに声をかける。
「頑丈にもほどがあるわね。そこまで頑丈ならタックルで温泉を掘り当てたりできるのかしら?」
「道具を使え道具を! 無理やり温泉を掘り当てるな!」
「もちろんできるぜ」
「なんでできるんだ! もう温泉を掘り当てて生活した方がいいんじゃないのか!?」
温泉か。久しく行ってないから、ケイシマンに掘り当ててもらってから倒すか。うん、それがいいな。とりあえず温泉を掘ってもらわないと話にならない。
私がケイシマンに温泉を掘るよう頼もうとすると、レッド/紅希くんが前に出た。
「おめーら、あいつを倒すのは俺に任せてくれ! あいつにはなんか近いものを感じるんだ! 俺がこの手でトドメを刺してやりてー!」
「待てレッド。お前1人で適う相手じゃないと思うが……」
「レッド、無茶はしちゃダメよ。そう言えば無茶って悲しい漢字ね。お茶が無いんだもの」
「今言うことかそれは!?」
「レッド、私たちは手伝えないのか? せめて応援として後ろでブブゼラを吹くとか」
「ワールドカップじゃないんですから! 余計なことしないでください!」
ブブゼラじゃなくてラッパの方が良かったか? より闘志の上がる曲を選ばないとな!
楽器店に行こうとしたところをブルーに停められ、私は渋々その場に残った。
「大丈夫だ! 俺ならぜってー勝てるからよ、安心してブブゼラを吹いててくれよ!」
「ブブゼラを吹かせるな! だからワールドカップかって!」
レッドがケイシマンの方に歩き出すと同時に、ケイシマンもレッドに向かって行く。
「1人とは舐められたもんだな。お前1人で俺様に神経衰弱で勝てるとでも?」
「戦え! なんでこの空気でそんなことが言える!?」
「ああ、勝てるぜ! もうスペードとハートの8は俺が取ってる!」
「トランプをしまえ! 修学旅行か!」
「じゃあ……行くぜ?」
「ちょおーっと待てーい!」
その声に、私たちは思い切りズッコケる。司令の声だな。ハシレチェンジャーに通信が入ったのか。なんてタイミングの悪い司令だ!
「んだよ司令ー! 今いいところだったろー!」
「紅希、ケイシマンにそのまま挑むんはうどん、間違えた無謀や」
「どんな間違いだ! まさかお前今うどん食ってないだろうな!?」
「自分にプレゼントがあるズルズル。今からそいつを転送するから使うんやズルズル!」
「確実にうどんを食いながらだな!?」
ブルーがツッコミ終わる前に、レッドの手元に大きなリーゼントのカツラが現れた。なんだあれは! まさかあれがパワーアップアイテムだと!? ズルいぞ! 私もパワーアップしたい!
……いやでも、私はまだ戦士になったばかりだから、この段階で強化されると冷めるな。優遇とか言われそうだ。それに、戦隊のパワーアップはレッドからというのが定石だからな!
「それを被ってみい! 自分はハチャメチャに強化されるで!」
「よっしゃー! 行くぜ!」
レッドがリーゼントのカツラを頭に装着すると、赤い光が溢れ出す。特攻服のようなスーツの裾は長く伸びて、リーゼントは真っ赤に変わった。おお、暴走族のモチーフだからこんな感じなのか! イカついな!
「ハシレッド! リーゼントカスタム!」
「なんだその見た目はあ? そんなんで俺様に勝てるってのか?」
「やってみなきゃ分かんねーだろ! 次は5のペアを狙うぜ!」
「神経衰弱をやめろお前は!」
「じゃあやってみてやるかよッ!」
ケイシマンは再びレッドに向かって走り出し、ランニングマシンを振り下ろす。だがその瞬間、レッドのリーゼントが長く伸び、ランニングマシンを弾き返した。
「なあ!?」
「さあ、トドメだぜ! 暴走! リーゼントクラッシュ!」
レッドが叫ぶと、リーゼントは巨大化し、恐竜の尻尾のように暴れ出す。どデカいリーゼントがケイシマンに直撃し、ケイシマンはそのまま吹っ飛んで行ってしまった。
「ぎゃああああああ!! 体作りの基本はプロテインよりも食事と牛乳だあああああ!!」
そうなのか! 私はいつもトレーニング後にプロテインを飲んでいたが、これからは食事と牛乳に気を使ってみるか。あの肉体を私も手に入れたいからな!
チェンジを解除し、私は橋田に一応ムキムキの女性について聞いてみることにした。
「なあ橋田、君はムキムキの女性についてどう思う? 上腕二頭筋フェチとして答えてくれ!」
「なんで俺は急に上腕二頭筋フェチにされたんです!?」
「違ったか? ああ、腹斜筋の方だったか!」
「とりあえず筋肉フェチにするのをやめられますか!? あと腹斜筋ってどの部位ですか!」
「よく知らないが、多分心臓だ」
「ハツじゃないですか! なんで焼き鳥の部位で行ったんですか! あと多分違いますよ!?」
むう、橋田はあまり筋肉が好きじゃないのか? もっと橋田のタイプを探らないとな!




