第30話 私なりの戦い方
勢揃いした私たちは、レッドから順番に名乗り始める。これもまだ慣れないから、未だに緊張するな。私も早くヒーローらしく堂々と名乗れるようになりたいものだ。
「赤い暴走! ハシレッド!」
「青い突風! ハシレブルー!」
「黄色い光! ハシレイエロー!」
「ピンクに突撃! ハシレピンク!」
「エンジン全開、突っ走れ! 暴走戦隊!」
「ハシレンジャー!」
私たちの背後で大爆発が起こり、天井に穴が空く。おお、すごい威力だな。何気に4人揃って普通に名乗ったのは初めてじゃないか? こんなに爆発の威力があるなら、初期のハシレンジャーがこの爆発をメイン戦法にしていたのも頷けるな。この爆発、私1人でも出せるんだろうか。もし出せるならどこかで使いたいな。ポップコーン作る時とか。
そんなことを考えていると、怪人——ボディビルマンが私たちを挑発してくる。
「かかってこいしー! 吾輩の筋肉に勝てるわけないしー!」
む、失礼だな。私だって伊達に鍛えてるわけじゃないんだぞ! ちょっと言い返してやろう。
「それはどうだろうな! 私たちだって無駄に鍛えてるわけじゃないぞ! 普段謎解きとかしてるし」
「脳トレしてどうするんですか! しょうもないこと言ってないでさっさと倒しますよ!」
おっと、間違って脳トレの話をしてしまった。うっかりうっかり。うっかりと言えば、この間風呂に湯を溜めようとして間違って矢を溜めてしまったことがあったな。これを橋田に言ったら『確かにや行ですけど!』と言われてしまった。やとゆは間違えやすいだろうに。
どうでもいいことを考えながら、他のメンバーと一緒にボディビルマンに向かって行く。全員でパンチを叩き込むが、ボディビルマンはビクともしない。なんと……! 流石ボディビルマンを自称するだけはあるな。
「そんなんで吾輩に勝てると思ってもらったら困るじゃん? マイナンバーの暗証番号忘れた時ぐらい困るじゃん?」
「妙にリアルな例えをするな! 確かに困るけども!」
「おめーら! こいつを倒すには身体暴走を使うかタンパク質の雑学勝負を仕掛けるしかねー!」
「めちゃくちゃ負けそうな勝負を仕掛けようとするな! 絶対あいつタンパク質に詳しいだろう!」
「仕方ないわね。なら私が単泊室に連れて行ってあげるわ」
「なんだその1泊専用の部屋は!? 連泊させろ連泊!」
「私は家の隣にあるホテルに30連泊して、昼は家で過ごして寝にホテルへ帰っていたことがあるぞ!」
「もっと時間とお金を大切にしてください!」
橋田はあまり近くのホテルに泊まらないのか。それこそ勿体ない気がするぞ! せっかく家の近くに泊まれるところがあるのに利用しないなんて……。うん、これもしかして私がおかしいのか?
自分がおかしいのかもしれないと思い始めている時、橋田——ブルーが大きな声を出した。
「お前ら、身体暴走を使うぞ!」
「よっしゃー! 行くぜ! 身体暴走!」
おい、ちょっと待ってくれ。私は身体暴走というのが使えるのか!? 確か司令に聞きかじった話では、経験値を貯めないと、ハシレンジャーのスーツの機能がフルに使えないらしいが……。
一応アクセルを回してみるが、何も起こらない。やはりか……。
他のメンバーは身体暴走を使い、ゴリラのように筋肉が盛り上がっている。マズいな、私も早く使えるようにならないと……。
「これでやつの体にも攻撃が効くはずだ!」
「でも身体暴走を使うのも何度目かしらね。思えば最初の頃はブルーと殴りあったりしていて、懐かしいわね。あの頃は若かったわ。私たちも歳をとったわね」
「思い出話を語ってる場合か! のんびりするな! 行くぞ! ……ってピンク?」
ブルーが私の様子に気付いてくれる。流石橋田! 周りが見えている男だ!
「ピンク、もしかして身体暴走が使えないんですか?」
「そこの角を曲がった通りだ」
「『その通りだ』でいいでしょう!? なんで1回コーナーを経由したんですか!?」
「気分的にフレンチトーストを咥えながら角を曲がって転校生のイケメン男子とスクラムを組みたい」
「ラブコメを全部間違えてますよ!? とりあえずフレンチトースト咥えてたらぶつかった相手べちょべちょになるでしょう!?」
「とにかく私はまだ身体暴走が使えないから、爆弾で援護射撃するぞ!」
「了解です。頼みますよ!」
少し寂しいが、今はできることをやるしか無い。私は両手に爆弾を出現させ、いつでも投げられるようにする。そんな私の様子を見て、他の3人はボディビルマンに向かって再び走り出した。
「なんかいい筋肉してるじゃん? 吾輩とも張り合えるかもしんないし?」
「かもな。じゃあ食らえ!」
ブルーが叩き込んだ拳は、ボディビルマンを遥か後方へ吹っ飛ばす。お、効いてるじゃないか! これは私が援護する必要も無いか?
そう思った途端、ボディビルマンは空中で一回転し、華麗に着地を決めた。ぬう、なかなかやるな……。
「なかなかやるじゃん? この吾輩を吹っ飛ばすなんて、いいpowerじゃん?」
「なんでネイティブ発音なんだ! ケ〇ン・コスギか!」
「じゃあ今度は吾輩のmuscleをfeelしてkneekneeしろしー!」
「意味が分からないぞ!? 膝膝してどうするんだ!」
膝膝ってなんか10回クイズで使えそうだな。今度橋田に仕掛けてみようか。あんなクールヅラして引っ掛かりそうだし。
私が想像してにやにやしている中、ボディビルマンは一瞬でレッドとの間合いを詰め、その腹部に拳を叩き込んだ。もうもうと煙が舞い上がり、私たちは慌ててレッドの方へ走る。
「レッド!! 大丈夫か!!」
「レッド! 紅茶は飲む?」
「今飲ませてる場合か!」
「レッド! フレンチトーストを咥えていいか?」
「出会おうとしないでください!」
どちらかと言えば出会わない方の確認なんだがな……。私がフレンチトーストを咥えて出会いたいのは、橋田——ブルーの方だし。
煙が晴れてくると、ボディビルマンの拳を受け止めたレッドの姿が見えてきた。え? なんで受け止められてるんだ?
「レッド!!」
「なんだー? こいつ全然弱っちいぜー?」
「……は?」
ブルーが困惑しているが、私とイエローはその一言で全てを察し、レッドに任せることにした。
「おいおめーら、こいつ見せ筋だぜ!」
「はあ!?」
「ていっ☆」
レッドがボディビルマンにしっぺすると、ボディビルマンはとんでもない勢いで吹っ飛んで行き、そのまま星になった。
「ええ……? さっきまでの強キャラ感は何だったんだ?」
「痩せ我慢ね。無理をしていたんだわ」
「ええ……?」
困惑するブルー。可愛いやつだな。おっと、そう言えば爆弾を持ったままだった。これをどうにかしないとな。
私は爆弾を持ったままブルーのところへ近寄り、声をかける。
「やったな! だが私の爆弾は1度出すと爆発するまで消せないんだ。供養していいか?」
「ちょっと待ってください! え、ここでですか!?」
「そーれっ!」
私が爆弾を放り投げると、大爆発が起こる。おお、名乗りの時と張れるぐらいの爆発じゃないか!
自分の武器の威力に感動していた私だが、橋田からはもう二度とするなと言われてしまった。しまった……。これじゃ橋田が離れて行っちゃうじゃないか! これから挽回しないとな……。




