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戦隊ピンクは素直でいたい〜頼むから私に振り向いてくれ〜  作者: 仮面大将G


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第3話 橋田とランチ

 休憩時間になり、カバンから弁当を取り出した橋田は、休憩室へと向かおうとする。橋田は弁当派なのか。家庭的だな。私は料理ができないから、弁当を作ってくる男子には少しキュンとしてしまうぞ。


 ああそんなことを言ってる場合じゃなかった。橋田を昼食に誘わないと。


「橋田! 私も一緒に行っていいか?」


「構いませんが……。鳥羽部長も弁当ですか?」


「いや、私は女だ」


「誰が今性別を聞いたんですか! 俺が弁当みたいになってるじゃないですか!」


「いやあ、今日は何も用意してなくてな! カップラーメンでも食べようかと思ってたんだ」


 これは本当ではあるが、いざ弁当男子を目の前に宣言すると恥ずかしいな。私も料理ができたらいいんだが、どうもやる気が起きなくてなあ……。


「あまりカップラーメンばかり食べると健康に良くないですよ。若いうちから食事には気をつけておかないと」


「まあまあ今日ぐらいいいじゃないか! とにかく行こう!」


 橋田は少し不思議そうな顔をしながら私に着いて来る。ちょっと強引だったか? まあこれもイケメンをゲットするため……じゃない、部下とのコミュニケーションのためだ。


 休憩室に着くと、橋田は早速弁当を広げ始める。対して私はカップラーメンにお湯を注ぎに向かう。なんだこの差は。自分が情けなくなってきたぞ。


 お湯を注いで橋田の隣に戻る。いざ橋田の隣に座ると、また緊張してきてしまったぞ……。なんでこの男はこんなに横顔が綺麗なんだ。とにかく何か喋らないと……。


「ふう。これで3秒待つぞ」


「バリカタ派ですか!? もうお湯入れた意味無いじゃないですか! 3分でしょう!?」


「ああそうだったな。しかし3分か……。暇だな」


「3分ぐらい待ってくださいよ。俺は食べ進めてますからね」


「あ! ずるいぞ橋田! 私はまだ食べていないと言うのに! なら仕方ない、橋田の弁当を少し分けろ!」


「ええ……? なんでですか」


「いいから! ほら、あーん!」


 何をしてるんだ私は……!? 今日初出勤の部下の弁当を分けてもらうように言った挙句、あーん!? あーんだと!? 勢いで口を開けてしまったが、この沈黙の時間が苦しいぞ! 橋田、頼むからツッコんでくれ!


 やばいぞ、橋田が硬直している。そりゃそうだろう。初対面の女上司にあーんなんてされたら、引くに決まってる。やらかしてしまった……。でも後には引けないぞ! こうなったら余裕のある大人の女を演じて、あくまで橋田をからかっている体で乗り切るんだ!


「何してるんだ橋田? あーん」


「部長、本気ですか?」


「本気? 私はいつも本気だぞ! 本気と書いて火事と読むぞ!」


「マジじゃなくてですか!? すぐ消火してください!」


「ほら橋田、そこにあるちくわのちくわ詰めを私に!」


「なんですかそのちくわのマトリョーシカは! そんなの入っていないでしょう!?」


「じゃあ卵焼きだ! それをくれ! はい、あーん」


 こうなったらもうヤケクソだ。橋田があーんしてくれるまで引けないぞ! 頼む橋田! 大人の女に弄ばれる男であってくれ!


 すると橋田は自分の弁当に箸を伸ばし、卵焼きを掴んだ。よく見ると、橋田の手は小刻みに震えている。これは……どっちだ!? 緊張しているのかドン引きしているのか! 気になるが、とりあえず今はこの場を乗り切ることだけを考えるしか……!


 橋田は恐る恐る私の口に卵焼きを差し出してくる。


「あ、あーん」


「あーん。おお! これは美味いじゃないか! 橋田は料理が上手なんだな」


「い、いえ。それほどでも……」


 これは本当に美味いぞ。だし巻きだが、微かに砂糖の甘みも感じてほど良い塩梅だ。橋田は料理のセンスがあるんだな……。私も見習わないと。


 橋田は謙遜しているようだが、この卵焼きに関しては本当に美味い。私にとってはそれほどでもなんて言えるレベルではないぞ! これは褒めてやらないとな!


「いやいや羨ましいよ! 私は料理が下手でな。橋田みたいなパートナーがいたらいいんだがなあ」


「……え?」


「なんてな! 本気にしたか橋田?」


「……っ! い、いえ、まさか」


「なーんだ! 本気にしてくれていたら良かったのに。私もそろそろ結婚しろと親がうるさいからなあ」


 マズい、とんでもないことを口走ってしまったぞ! 初日の新入社員に、結婚を匂わせる!? とんでもない女上司じゃないか!


 ……ん? でも橋田も満更でも無さそうな……。もしかして、照れているのか!? さては橋田のやつ、女経験が少ないな?

 よし、ならこのままいい女感を出してこの場を乗り切ろう!


「どうした橋田? 顔が赤いぞ? さてはフェイスペイントだな?」


「そんなわけないでしょう! いつ塗ったんですか!」


「しかし橋田はいいツッコミをするな。会話をするのがこんなに楽しいのは初めてだ! 改めてよろしくな、橋田!」


 橋田に手を差し出すと、さっき卵焼きを差し出してきたのと同じように、橋田は恐る恐る私の手を握る。だが橋田の顔は、私の方を見ることができていなかった。やはり橋田のやつ、女経験が少ないな! 良かった……。これでドン引きされていたら、私の立場は無かった。これでなんとか年上のいい女として橋田の脳内にこびりつけたことだろう。多分。


 ——こんな出会い方をした私と橋田だが、結局私はテンパってボケまくっていくことになってしまっていた。橋田はすっかり私をボケ役扱いしてしまっていて、私には威厳も何も無い。一応仕事面では尊敬してくれているようだが、私は人としても女性としても良く見られたいんだ!


 ……そしてもう1つ問題があった。橋田が暴走戦隊ハシレンジャーのメンバーであるという噂に、決定的な証拠が出たんだ。

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