第15話 広告リベンジ!
少し時間が過ぎ、私は日常的にハシレンジャーの基地へ行くようになっていた。虹色の空間を通らないといけないものかと思っていたら、一応普通のルートもあるらしい。そんなことなら最初から場所を教えてくれてたら良かったのに。
そして司令ことハシレイともかなり仲良くなった。橋田が言うような怪しい言動は私に対しては見られず、未だ尻尾を掴めていない状況ではある。
でも、私は今ハシレンジャーに1番近い一般人になっている。その事実だけで米を何杯もいけそうなぐらい、私のテンションは上がってるんだ! そしてあわよくば、私も……。本当に何か良いタイミングが無いだろうか。
というわけで、私は今日も上機嫌で仕事をしている。今日はスタジオを借りて広報の仕事だ。
「ハシレイ〜ルンバ〜♪ ルンバハシレイ〜♪」
「その歌をやめられますか!? なんでずっとハシレイを歌にしてるんですか!」
橋田の痛烈なツッコミが入る。司令とは最近中が良いからな。つい歌にしてしまった。
「なんだ橋田、お前も歌って欲しいのか?」
「そんなわけないでしょう! 歌わなくていいんですよそもそも!」
「ダンスナンバーでどうだ? タイトルは橋田ンシングとか」
「ダサすぎます! どんな歌なんですかそれは!」
「そりゃあれだ、橋田〜橋田〜橋田音頭〜♪」
「なんで和風なんですか! 盆踊りのことをダンスナンバーだと思ってたんですか!?」
「違うのか? ダンスナンバーじゃなかったらなんだ?」
「否定はできないですが納得もできないです!」
「盆踊りは英語で言うと『BOMB DANCE』とかだろうか?」
「なんですかその物騒なダンスは!? 踊ると爆発するんですか!?」
「特に後列のダンサーがな。バックダン・・・・・サーだけに」
「バックダンサーをそんな物騒なものにしないでください! 上手くないですよ!?」
軽口を叩きながらも、私はパソコンのキーボードを叩いている。今は新しい動画広告の企画書を作ってるんだが、ちょっと素材の足りない部分があるな。橋田に頼むか。
「橋田、ちょっと追加で撮影したい部分があるんだ。ちょっとあそこのグリーンバックダンサーに立ってくれないか?」
「ダンサーは要らないです! バックダンサーに引っ張られすぎでしょう!?」
「ああそうだったな。それで橋田ンサーの立ち位置はだな」
「どうしてもダンサーを入れたいんですね……。俺にはその熱意が理解できないようです」
橋田はブツブツ言いながらもグリーンバックダンサー……じゃなかった、グリーンバックの前に立つ。相変わらず橋田はキリッとしてかっこいいな。なんか私の方が緊張してきたぞ。
いやいや! 私がちゃんとしないと! 橋田に指示を出すのは私なんだから!
「よし! じゃあそこで2人に分かれてくれ」
「さらっと分身を強要しないでもらえますか!? 俺は忍者ですか!」
「2人じゃ不満だったか? ならそのまま増えていってもらっても構わないぞ。3人、5人、7人、11人と」
「なんで素数なんですか! 俺が11人もいたら気持ち悪いでしょう!」
「よーしいい顔だ! じゃあそのまま怒った顔、悩んだ顔、決意した顔を同時にやってくれ!」
「俺は阿修羅像ですか! 顔も増やすんですか!?」
またやってしまった……。なんで私は橋田を阿修羅像にしようとしてるんだ……。いざ橋田と真正面から向かい合うと、まだどうしても緊張してしまうな。前からそうだったが、最近余計酷くなってないか?
気を取り直して橋田に色んなポーズを要求していく。ハシレチェンジのポーズや銃を構えるポーズなど、ヒーローっぽいポーズも撮影できた。うん! いい感じだな!
「よーし! これで最後だ! お疲れ様、橋田!」
「次からはもう少し人間の常識を考えてポーズを要求してくださると助かります」
「ああすまない。ちょっとばかりペンションが上がってしまった」
「別荘をせり上げないでもらえますか!?」
「だがかなりいい素材が撮れたぞ! すぐに仕上げるから、橋田は芋焼酎でも飲んで休んでいてくれ」
「休みすぎでしょう!? コーヒーとか無いんですか!?」
文句を言いながらも休むために椅子に座った橋田は、疲れていたのか眠ってしまった。
橋田の寝顔……。初めて見るな。こんな穏やかな顔で眠るのか。ちょっとこのまま眺めていよう。あ、あと広告も仕上げないとな。
そこから30分ほど経っても橋田が起きないので、私はとりあえず橋田を起こすことにした。
「はしーだあおい! そーれそれそれはしーだあおい! オーオオーオーオーオオー! オーオオーオーオーオオー! はしーだあおい! そーれそれそれはしーだあおい!」
「うるさいですよ人が寝てるというのに! なんですか部長!」
「おお橋田、起きたか! 広告ができたぞ!」
「相変わらず仕事は早いですね仕事は。どんなのができたか見せてもらえますか?」
「もちろんだ! モニターに注目してくれ!」
私がモニターの電源を入れると、数秒間真っ黒な画面になり、その後映像が出てくる。
『ハシレイショッピング〜!』
「またハシレイじゃないですか! どれだけあいつを気に入ってるんですか!」
「まあまあそう言うな。最後まで見てみろ」
『今日は自分らに最高の商品をお届けすべくやって来た、暴走戦隊ハシレンジャーの司令官兼松山市議会議員のハシレオ・ハシレイや!』
「いつの間に愛媛で当選してたんだこいつは!」
『最近ほんまに暑いなあ。日光がギラギラ照らす中でも、外にでかけなあかん時ってあるやろ? でも帽子を忘れることもある。そんな時に便利なんがこれ! 真っ黒エコバッグや! 暑い時はこれを被って日光対策!』
「黒子みたいになってるじゃないか! むしろ暑いだろう!?」
『買い物に行く時はこれに買ったもんを入れられるで!』
「本来そういうものだ! むしろ被るな!」
『ほな、これからもハシレンジャーと松山市議会をよろしく頼むで〜! おおきにさいなら!』
橋田は一瞬フリーズしていたが、すぐに正気に戻り、声を荒らげた。
「終わりましたよ!? 俺の撮影は一体何だったんですか!?」
「橋田よ。動画というのは、撮った素材をどうしても使えないこともある。お前の撮影は決して無駄ではなかったんだぞ」
「無駄ですよ! 1秒も映ってなかったじゃないですか!」
「いやあ、やはり司令官の喋りは圧巻だ! これからも広告作りの協力頼むぞ、橋田!」
「俺が関わる必要ありますか!?」
まあもちろんこれは冗談で、ちゃんと橋田をメインにした広告も完成させてある。今からそれを……と思った瞬間、橋田のハシレチェンジャーに通信が入り、司令の声が聞こえてくる。またか! タイミングが悪いな!
「碧! 今大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。何かあったか?」
「急ぎの用事ではないんやけど、気になることがあるんや。ちょっと基地まで来てくれへんか?」
「まあもうすぐ定時だから向かえないことはないが……この通信では言えないことなのか?」
「実際に映像を見せたいんや。紅希と黄花も基地におる。来れるか?」
「分かった。退勤し次第向かおう」
「助かる! ついでに碧の会社の向かいにある和紙専門店で折り紙を買って来てくれんか?」
「いつどこでそれが必要なんだ! とりあえず退勤したら向かうから待ってろ!」
橋田はそう言って通信を切る。ちょうど時刻は18時。退勤の時間だ。はあ……。橋田に完成した広告を見せるのはまた今度にしよう。
しかし、そろそろ私もハシレンジャーの協力者としての地位を確立してきた。もっとハシレンジャーの活動に踏み込めないだろうか……。結局いつもハシレンジャーが出動したら取り残されてるしな。もっと直接関わってみたいぞ!




