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戦隊ピンクは素直でいたい〜頼むから私に振り向いてくれ〜  作者: 仮面大将G


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第14話 笹舟

 結局そのまま退勤時間になっても橋田は帰って来ず、またしても私は1人取り残されることになった。こうなったら私は真っ直ぐ家に帰るだけ。寂しいものだ。橋田がハシレンジャーとして活動を始める前は、橋田と一緒に帰ったりしてたんだがなあ……。


 ま、明日になったらまた橋田と会える。気を取り直して、明日に気持ちを向けよう。そう決心した私は、すぐ家に帰って寝ることに決めた。



 翌日、出勤して来た橋田は何故か元気が無い。何か考えごとをしているようだな。ハシレンジャーに関してのことだろうか? なら私が突っ込むのも気が引けるな……。


 いや待てよ、この会社には私しかハシレンジャーと接触のある人物はいない。ハシレンジャー関連のことで相談するとしたら、私しかいないんじゃないか? 今悩んでるということは、ハシレンジャーのメンバーにも言えない悩みかもしれないし。なら私が相談相手に最適じゃないか! よし、橋田に何があったのか聞いてみよう!


「橋田、どうしたんだ? 今にもサンバを踊り出しそうな顔をして」


「そんな陽気な顔をしてますか!? 自分では深刻そうな顔のつもりだったんですが!」


「そう言われればそうも見えるな。人によって見え方が変わるんじゃないか?」


「俺はだまし絵か何かですか!? どう見ても楽しそうには見えないでしょう!?」


「私には橋田の肌がベージュ、唇が赤に見えているが、ストレスが溜まっている人には肌が青、唇が紫に見えるぞ」


「ただ凍えてる人じゃないですか! 俺の血色でストレスチェックしないでください!」


 しまった……。また変なことを口走ってしまった! 私はただ橋田を心配してただけなのに! 何故私はいつもこうなんだ……。


 いや、後悔していても仕方ない! とりあえず上司として、橋田の話を聞こう!


「それで、なんでそんな顔をしてるんだ? 私で良ければ聞くぞ。なんなら一緒に踊ってやってもいい」


「だからサンバは踊らないんですよ! なんで踊る方に持って行くんですか!」


「ああすまない。ルンバの方だったか?」


「ダンスの種類で怒ってないんです! 踊らせないでください!」


「踊らないのか? なら私だけ踊ろう。よさこいソーランでいいか?」


「良くないです! 踊らないで落ち着いて聞いてもらえますか!?」


「むう、仕方ないな。じゃあとりあえず聞かせてもらおうじゃないか」


 よし、なんとか話を元の路線に戻すことに成功したぞ。流石私! できる女だ! さあ橋田、何を悩んでるのか私に吐き出してみろ!


 私は橋田の隣に腰掛け、しれっと用意していた2人分のコーヒーを置いた。どうだ! やはり私はできる女! こういう時にコーヒーをさらっと持って来るなんて、できる女でしかないぞ! 橋田、私を見直せ!


 橋田は私の方を戸惑うような目で見てから、覚悟を決めたように話し始めた。


「部長に話していいことなのか分かりませんが、他のメンバーでは話にならないので客観的な意見をいただければと思います。実は俺は、司令官のハシレイがホーテーソク団側なんじゃないかと疑っているんです」


 司令が、ホーテーソク団側? そんなはずは無い。そもそもハシレンジャーを作ったのは司令だし、疑う理由が見当たらない。橋田は何を言ってるんだ?


 すると橋田は司令がホーテーソク団側であると考える根拠を述べてきた。

 なんでも、司令はハシレンジャーを組織したのに、自分の情報は何も開示してないらしい。例えば、いつも被ってるヘルメットを頑なに脱がない理由を教えないとか。

 それに、橋田は司令がホーテーソク団について詳しすぎるとも思っているらしい。最近ホーテーソク団の幹部が出て来たらしいが、その幹部についても知っていたそうだ。

 なるほどな……。確かに、司令の素性は私も知らない。だがまさかハシレンジャーのメンバーですら知らないとは……。しかもホーテーソク団の幹部についても知ってるのは、確かに何か過去にあったんじゃないかとも思ってしまうな。


「なるほど……。司令官は普段そんな感じなのか。確かに怪しいと思えなくもない。他のメンバーは疑ってないのか?」


「黄花が時々鋭い発言をするんですが、本人としては疑っていないようです。天然でしている発言かと」


「そうか……。私が接していた感じだと、司令に悪い印象は持たなかったんだがな。野球の話で少し盛り上がったぐらいだ」


「また野球の話してたんですか! そういえば部長も野球がどうこう言ってましたね」


「そうなんだ! 好きなポジションの話で盛り上がってな、私は当然ブルペンキャッチャーで、司令はランナーコーチが好きらしい! やはり野球というのは面白いな!」


「なんでどっちも試合に出ない人なんですか! どこで面白さ感じてます!?」


 そう言われると私と司令は気が合うのかもしれないな。基地で取り残された時も少しネイルについて語ったんだが、それにも強く影響を受けて早速フットネイルを始めると言ってたし。


 それにしても司令がホーテーソク団側かもしれない、か……。橋田の言い分も分かるし、ここは私が一肌脱ぐか!


「そんな感じだったから私は司令のことを疑ってなかったが、君がそこまで言うなら何か裏があるのかもしれないな。そういう調査は戦隊メンバーである君より、私みたいな部外者の方が適任かもしれない。気を抜いてボロを出すかもしれないしな」


「なるほど、それは一理ありますね。エナジードリンクの補充とか適当に名目をつけて、部長も基地に自由に出入りできるよう手配してみます」


「それは助かるぞ! 司令のことを探るのももちろんだが、君たちハシレンジャーを1番近くで応援できるようになるな! そしてあわよくば私も……」


 おっと、また本音が漏れそうになってしまった。あまり戦隊のメンバー本人に私も加入したいなんて言うものじゃないしな。本人たちは命懸けで戦ってるんだし。


 そんなタイミングで、橋田のハシレチェンジャーに通信が入った。なんだ? また怪人か?

 チェンジャーから聞こえてきたのは、イエローこと黄花くんの声だった。


「碧、今大丈夫かしら?」


「黄花、どうした? ホーテーソク団か?」


「まだ確定ではないのだけれど、怪しい動きをしている場所を見つけたの。今話題の占い師を知ってるかしら?」


「……あいにく、俺はその類のものを信じていなくてな」


 橋田は占いを信じてないのか! まあそうだろうな、むしろこの感じで信じてたらビックリだ。うん、キャラに合ってて良いと思うぞ!

 ……でも黄花くんが橋田に占いの話をするなんて、まさか橋田との相性を占ってたりしたんじゃ……。


「あらもったいないわね。占いというのは頼りになるものよ。私もよく自分で扇風機の羽占いをするのだけれど」


「なんだその聞いたことの無い占いは!」


「花占いと同じやり方よ。1枚ずつ羽をちぎって占うの」


「扇風機を占いで壊すな! そのやり方なら毎回同じ結果じゃないのか!?」


「まあそれはいいのよ。その占い師がやってる占いの館。どうも怪しいのよね。場所を送るから来てもらえる? あと紅希にはスマホで地図と内容を転送しておいてね」


「おい、お前まさかその役目を俺に押し付けるために通信してきたのか?」


「さあ、どうかしらね。とにかく私はリトマス試験紙で紅茶を飲みながら待ってるわ」


「それはどうやってるんだ! そっちが気になって仕方ないぞ!」


 黄花くんとのやり取りも、テンポが良くて橋田も心地良さそうだな……。この黄花くん、私のライバルになり得るかもしれない! 気を付けないとな!


 まあそんなことは表情に出すわけにもいかないので、平成を装って橋田に声をかける。


「どうした橋田? また怪人か?」


「かもしれません。とりあえず行ってきます! また調査の件はよろしくお願いしますね」


「ああ! 笹舟に乗ったつもりで任せておけ!」


「頼りなさすぎませんか!?」


 そんなツッコミを残して、橋田は駆け出してしまう。その背中を見送りながら、私はまた寂しさに襲われる。このままで良いのか……? いやでも、私は司令の素性を探るというミッションを得たんだ! ただの一般人じゃない。ハシレンジャーの関係者としての地位を確立したんだ! 大丈夫。橋田はいつかきっと、私に振り向いてくれる!


 ……一体何を考えてるんだ私は。橋田は部下だ。手を出しちゃいけないと言ってたのは、他でもない私自身だと言うのに……。何故私はこうも橋田を想ってしまうのだろう?


 1人残された私の心は、水面にポツンと浮かぶ笹舟のようだった。

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