第12話 広告、完成!
早めにランチから戻って来て時間が余っている休憩時間。橋田は私にハシレンジャーの愚痴を吐いていた。
なんでも、ハシレンジャーの基地にはエアコンが設置されておらず、散々どうやって冷やすかを考えた挙句黄花くんが普通にエアコンを取り付けたらしい。黄花くんの家は金持ちなんだな。確かにお嬢様っぽくはあったが。
「なるほど、それは大変だったな」
「本当ですよ……。なんで冷凍肉を触って涼むなんて発想になるのか、俺には検討も付かないです」
「しかし冷凍肉を触るのはいい涼み方かもしれないな。私も今度やってみよう」
「やらないでもらえます? すぐ影響されないでくださいね……」
「やはり紅希くんと黄花くんの発想には驚かされるな。涼むために肉を使うなんて、目から塩タンだ」
「鱗じゃなくてですか!? 掠ってもないでしょう! 肉に引っ張られすぎです!」
「肉に引っ張られるというのは何とも新鮮だな。普段は肉を引っ張る側だというのに」
「普段肉引っ張ってるんですか!? 何が目的なんです!?」
「いや、引っ張るとなんだかストレス発散になるだろ? 最終的に引きちぎってしまうから、それをフライパンに放り込むんだ。包丁を使わなくて済むし、スッキリもするしで一石二鳥だ!」
「もしかして前世がゴリラだったりしますか?」
前世がゴリラとは失礼だな。ゴリラでもニシローランドゴリラかマウンテンゴリラかで随分見た目も変わるだろ! 私はどちらかと言えばニシローランドゴリラ派だ。
あ、そんなことはいいんだった。つい最近、私はハシレンジャーを使った動画広告を完成させたんだ。少し司令にも協力してもらったが。それを橋田に見せないとな。
「そういえば橋田、君を使った広告なんだが……」
「そういえばそんなの作るって言ってましたね。まだ何も撮ってないですが、どうするんです?」
「ん? 素材ならこの間撮ったぞ? それを使って動画広告を作ったんだ。見てくれないか?」
「……はい? 俺は撮られた覚えなんて無いんですが?」
「何を言ってるんだ。基地でエナジードリンクを飲んだだろ? それに水族館での戦闘の時は私もいた。あの時十分素材が撮れたんだ!」
橋田は私が撮影をしてたことに気づいてないのか。それだけ戦闘に必死だったということだな! ……いや、ツッコミの方か?
「なるほど、あの時撮ってたんですね。では早速広告を見せてもらえますか?」
「よし! じゃあ再生するぞ! テレビに注目してくれ!」
テレビのリモコンを取り出し、画面に向けてボタンを押す。すると画面には、ハシレンジャーたちがエナジードリンクを口にする瞬間が映し出された。
『うおー! なんか力が湧いてくるぜ! 今なら牛30ダースは食えそうだ!』
『牛をダースで数えるな! 何故湧いてきた力を食べることに使う!?』
『私も今なら何でもできる気がするわ。試しに原付で高速道路に乗ってみようかしら』
『お前のパワーはどうか知らないが、原付には限界があるだろう!?』
『大丈夫よ。原付に限界が来たら自力で走るわ』
『なら最初から乗るな! 高速道路を自分の足で走るやつは見たことが無いぞ!』
「このシーンを使ったんですか……」
「そうだ! ハシレンジャーらしさが存分に出てるだろ?」
「俺はもっとクールな印象を与えたいんですが」
「まあまあそう言うな! 続きも見てくれ!」
広告にするならまずここだと思ったんだ! 1番力が湧くのがわかりやすいシーンだしな。
そしてここからが本番だ。橋田も知らないシーンが出てくるぞ!
『あーあー。皆さんこんにちは! ワシはハシレンジャーの司令官、ハシレオ・ハシレイや! 今のハシレンジャーのやり取り、どうやった? キレキレやったやろ! あんなキレキレのやり取りができるんもこのエナジードリンクのおかげ! さあ、自分らもエナジードリンクを飲んで、ハシレブルーみたいにツッコミを入れてみるんや! これで自分らもハシレンジャー!』
「なんですかこれは! なんでハシレイの長ゼリフが入ってるんです!?」
「ああ、君たちが戦闘に向かってしばらくは暇だったからな。司令に協力してもらって、少し出演してもらった」
「少しっていうかメインこいつじゃないですか! いきなりこんな意味不明のフルフェイスが映ったらびっくりするでしょう!?」
「そうか? 私はフルフェイスのヘルメットを見ると安心するぞ」
「親がレーサーだったりしますか!?」
結局我が社と言うよりエナジードリンクの広告になってしまったが、まあそれは仕方ない。そのうちこのエナジードリンクを作っている会社を買収でもして誤魔化せばいいだろう。
幸い、橋田もこの動画広告がエナジードリンクの宣伝になっていることまで気が回っていないようだ。ツッコミ疲れかもしれないな! ……だとしたらその一因は私か?
橋田に対して少し申し訳なくなっていると、橋田は思い出したように口を開いた。
「部長、ハシレンジャーの戦闘シーンは……」
「ああ、今の時代コンプライアンスが厳しいからな。モロに怪人を殴っていたから、戦闘シーンはお蔵入りだ!」
「戦隊全否定じゃないですか! 俺たちはエナジードリンクを飲んでボケとツッコミをするだけですか!?」
「ああそうだ! 立派なツッコミ役として、若手芸人たちのお手本になるんだぞ!」
「俺はツッコミの先生じゃありません! こんなのはクールじゃない……。作り直してください!」
「ええ!? なんでだ! よくできたと思ったのに!」
橋田は手厳しいな……。良い動画広告ができたと思ったんだがなあ……。
まあでも、確かに司令が映る時間が長すぎるとは思ったんだ。橋田に確認してもらって良かった。改めてまた作り直そう。それにこのエナジードリンクを飲むシーンの橋田、横顔が美しすぎるんだ! 他の女が惚れてしまうかもしれないし、作り直しは必須だ!
作り直す広告の案を考えていると、橋田のスマホが鳴った。スマホの画面を見た橋田の顔は、突然険しいものに変わった。何かあったのか?




