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はじまりは

そもそもどうして異世界転移をしているかといえば

「「申し訳ございませんでしたっ!!!」」




 始まりは三ヶ月くらい前になる。私は仕事の帰り、今日はなんのラノベを読もうかなと思いながらスマホを見ていた。しかしなんの前触れもなく私はいきなり路上死してしまったのである。


 見ていたスマホの画面はふっと消えて、次に気づいたときには目の前にピンクと青のふわふわと光る玉が二つ目の前に浮いている光景だった。


 そして私が見ていることに気づいたようで一瞬跳ねて、そして大声で綺麗にハモった謝罪の言葉。


 なんだかその後色々だらだらと言われたけど要約すると、青い光る玉は私の世界の神様(青神と呼ぶ)で、ピンクの光る玉は異世界の神様(ピンク神だな)らしい。


そして神様ってのもたくさんいて、その中身は私達人間と大差ないような会社っぽい仕組みがあるらしい。世界を見守り育てるってことなら農家さんとか花卉屋さんみたいなものだろうか。収穫物は信仰心らしい。信仰心というノルマを達成すると神様の格が上がるとか。うーん、神様も俗物チック?


 で、会社みたいなものとなると新人研修や部外交流みたいなのもあったりして、その一環で新人ピンク神は先輩青神にご利益や加護の与え方を教えていたらしい。


 ちなみに今回京都の方に信心深い妊婦さんがおりまして、お腹の子が死にかけていたのでピンク神様が生命力を信心の見返りとして与えるという研修でした。


 …私の住まい東京なんですが???


 なんでも生命力は勢い余って妊婦さんをかすめ、光の速さでぶっとんで私に直撃したらしい。しかしピンク神の生命力は人間には強すぎてドーピングチックに一気に身体機能を高めるも、体がついていかずぽっくり…いや、なんで???


いわく、私も人よりちょこっとだけ神社に月一くらいなんとなく行ってたりおばあちゃんに教わった参拝の礼儀を守っていたところから神様の気を受けやすくはなってたらしい。…京都から東京まで弾丸で飛んできたの他に誰も受けなかって日本人の信心どこいった。


 なお、件のお腹のお子さんは掠めたことによって程よい具合に緩和された生命力が注入され助かったそうな。それは良かったです。…私は神様に殺されたがな。


 で、本来こんなことが起こらないように神様の力の調整の仕方とかピンク神に教えて監督するはずだった青神は何をしていたかというとその時推しのハダカデバデズミの恋模様を見ていたらしい。…いや、人間でもバラエティ番組で動物のそう言うの見るのあるけど神様にもあるのか。つまり私と妊婦さんはハダカデバネズミ以下で気にされていなかったのか。まあ、神様が全ての命に平等だとか人間だけを贔屓するなんてのは人間が作った神話くらいなもので、実際はそう言うものなのだろう。


そして続けた青ピンク神の言うことには今回のミスのお詫びにピンク神の世界に転移して新しい人生をと言うことだ。ラノベにありがちなやつである。王道の剣と魔法の世界である。…輪廻転生して生まれ変わりしないのかと呟けば青ピンク神が動揺したように光を点滅させた。


「神様も私たちで言う会社っぽい組織って言ってましたよね。格があると。つまりお二人より上がいる訳ですよね?…もしかして仕事ミスの隠滅しようとしてます?」

「「ソソソソソンナコト」」

「あるんですね」


 なんてわかりやすい。


 このまま死んだとなれば魂は神様の神気的なものがガッツリ付着しているので輪廻転生課みたいなところにバレる。バレたら上に報告されてこの不始末がバレる。格落ち処分される可能性が大いにある。


「なので裏でこっそり私の魂を別の世界に流して、その世界で普通に生きて神様の神気を薄めて終生を迎えたらまたもとの世界に帰って通常通りの手続きに入ると…」


 これ会社基準で考えたらよろしくない行為なのでは…まあ、私が何かできるわけではないので神様の意向に従いますが…。


「SFな異世界転生とかはあまり聞かないよなぁ、そういえば」なんてなんとなくぼやけば青神が「ありますけどあそこの神はこの子より格が低いんですよ。ああした文明が育ちに育った世界って信仰心が薄くなりやすいんですよ。現実主義とでも言うんですかね。私達の格は信仰心だけで決まるので、星の文明が高い=神格が高いとは限らないわけです」


 成程、わかりやすい。


「それに玲央さんは好んでいるラノベ小説の傾向からSFよりはこっちの世界の方がお好みでしょう?」

「確かに…ってなんで私の名前と好みを知っているんですか」

「これでも神なので」


 高橋玲央 三十代のどこにでもいる趣味に生きる独身OLだ。異世界転生ものはよく読むし、ゲームも大好きなオタクである。 


「今回は私どものミスでこのような目に遭わせてしまったので、異世界転生でありがち第二弾 神によるチート能力プレゼントを7つお渡しします!」

「それ向こうの世界の言語、読み書きエトセトラもチートでつけるって言います?」


 こちとら英語の成績は白鳥が泳ぐレベルで言語習得スキルは低い。それが転生ならともかく転移。あちらで赤ちゃんとして産まれるわけでないのに一から習得しろとか無理すぎる。それで貴重な七つの能力の一つと言われたら詐欺にあったような感覚を覚えるぞ。


「あ、あっ!そんなせこいこと言いませんよ!ええと、異世界言語は分かるように標準能力として付与します。そのほかにもせっかくの異世界ですから、転生は輪廻転生課を通さないといけないのでできませんが肉体年齢を十二歳くらいにして長くお楽しみいただけるようにします!」

「世界が変われば常識、貨幣とか習慣とかも違うでしょう?その辺は?」

「あ…それも理解できるように知識としてインプットした状態で…」

「剣と魔法の世界ってことは魔物?モンスターもいるよね。典型的な平和ボケした日本人で武道習った経験があるわけでもないけど、指示してくれる人とか身体能力格上げとかある?」


 とにかく神様がお詫びとしてあれこれ便宜を図ろうとしてくれるのだ。どこまでが無料オプションとしてもらえて、その後チートもらえるかしっかり詰めさせてもらう。


「身体能力としては強い神気を直撃したので終生を迎えるまで毒も呪いも聞きませんし、大怪我してもすぐに自動回復します。魔法がある世界なので誰かの前で大怪我して回復しても上級自動回復魔法習得してるんだなって思われる程度ですよ。剣術や槍術、魔法術も言語や常識と同じように脳と体にインプットさせて体がスムーズに動けるようにしますね…標準能力としてはこの辺りでどうでしょうか…流石にあれこれつけすぎるとあちらの世界で終生を迎えても強すぎる魂ということで引っかかる恐れが…」


 この後つけられる七つのチートはいいのか。基準的なものはよくわからないが、私はこれまで読んできた作品やプレイしてきたゲームなどを参考にしっかり細かく詰めて考えさせていただきました。

 





「よし、以上で転移に必要なあれこれもできました。ところでお一人で転移されますか?彼もご一緒に?」

「彼?」


 死んだのは私だけで、他に誰もいなかったはずである。そう思っていると足元から急に声がした。


「俺も行くぜ」


 少し低めの男の声。視線を下に向けると、そこには茶と白の毛色を持った骨太感満載の短小尻尾を持った猫。私がよく知っている猫。


「チャタ!?」


 祖父母の飼い猫であった茶太郎である。私にとっては兄のような存在だ。私が産まれるよりも前に祖父母のところにいた彼に母は子守猫と言ってよくそばに置かれていた。はいはいは彼を追いかけるうちで覚えたし、つかまり立ちだった彼の背中に手をついて覚えた。二足歩行だって彼の真似である。…普通の猫は二足歩行なんてしないが茶太郎はできた。今思い返せば私以外の前で歩いたことはなかったけど、当時の私は犬だって芸で二足歩行するのもいるからそんなものだろうと一切気にしていなかったが。とにかく私は茶太郎が好きで彼が小学四年生の夏、事故で亡くなるまではずっと彼と一緒に過ごしていた。その茶太郎がなぜここに。


「彼はあなたの守護霊としてそばにいたんですよ」

「守護霊って人間じゃないの…?」

「人間の霊なんかにお前のおっちょこちょいのフォローできるかよ。俺のパトロールの後ついてきて塀によじ登ったはいいが降りられなくてビエビエ泣くからわざわざお前が通れるように道を変えたり、囲炉裏に手を突っ込みそうになったのを止めたり、餌も自力で取れねえから俺が蝉やら鳩やら狩ってきてやっただろうが」

「いやそれ本当小さい頃の話だから」


 夏になると昼寝から目を覚ますと枕元によく半死状態の蝉が置かれ、茶太郎なりのお世話の一環だったのだろう。世界には昆虫食あるけど私は食べないから。


「守護霊になってからも助けてやってたぞ。よそ見して道を渡ろうとするから首根っこ引っ掴んで後ろに転ばせたり、悪霊の溜まり場に行くから早く出るように壁に爪痕つけまくって出ろって警告してやったし」

「覚えがありすぎる!猫の爪痕で壁紙ボロッボロになってた中古マンション、買うのやめて正解だったのね!?」


 私はひたすら茶太郎に面倒を見られていたのか…。


「俺の場合とっくに死んでるからとりあえず転生って形になるのか?こいつの面倒見るからすぐ動ける体がいいんだけどよ」


 私が言えたことではないが仮にも神様に対して口の聞き方ぁ。私の場合神様に殺されてるから敬い精神も自然と削られたけど。


「成程。では茶太郎さんは輪廻転生課に申請して新しく動ける体を用意した状態で送る形にしますね。肉体の基本性能も玲央さんとある程度同程度になるように調整します。せっかくですので寿命も合わせるので猫又の肉体にしましょうか」

「あっちの世界に猫又なんているんです?」

「あの、私地球のサブカル文化とか好きで、それを色々取り込ませててもらってて。だから猫又もいますしケットシーもいますし、スライムもカーバンクルも東西南北いろんなものいます」

「ちゃんぽん異世界」


 でもまあ、それはそれで楽しそうである。正直知ってる人が誰もいない、ゼロから異世界生活というのも寂しさがあった。チャタがいるならそれだけでも心強い。いや、本当大人になってからも助けられていたようで本当にお兄ちゃんありがとうございます。







そうして私はチャタと一緒に異世界へ転生した。深い森の奥に。


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