プロローグ
「チャタ、そっちに行った!」
「見えてるっての!」
深い森の奥。 猪型魔獣が木々の間をしっちゃかめっちゃかに走り抜けるのを私はすぐ後について追いかける。時折光と音を合わせた威嚇魔法を魔物の進行先へ放ち、チャタのいる方へ誘導しながらだ。
「よし、かかってこいや!」
「魔核は壊さないようにしてよ!」
チャタは大きく飛び跳ね爪をぎらりと光らせる。爪先に風の魔法を纏い、鎌鼬として猪に向けて放った。空気を割いて飛ぶ鎌鼬は魔物の硬い毛皮も肉もズバアッと派手な音を立てて切り刻んだ。正面から回避するまもなく受けた鎌鼬は致命傷になるには十分な威力で、魔物はあれだけ走り抜けた足を震わせ二、三歩よろよろと進んだところでそのまま横に倒れ絶命する。
「どんなもんよ。猪如きに俺が負けるかってんだ」
「普通の猫だったら負けると思うけどねぇ…」
魔物の上に登り胸を張るのは相棒にして兄でもある猫型の魔物。猫又のチャタだ。いわゆるジャパニーズテイルと呼ばれる短小の尻尾はあるが分かれていない。でもステータスの種族名は猫又なのだ。
「それじゃさっさとギルドに持っていって夕飯の買い出しとかしちゃおっか」
「おう、猪なんだから鍋にしようぜ」
「はいはい」
私は魔物に向かって手を翳し、心の中で収納と唱えた。それだけでスキル【無限時空収納庫】に保管される。この収納庫、名前の通り無限に入るし物によっては時間停止をかけて状態保存ができたり肉や魚は時間を進めて熟成させたりとできる。それだけに関わらず今収納した魔物は私の願い次第で丸ごとのままか解体とかしてくれる非常に優秀な物である。スーパーで切り身を買ってた人間に解体なんてできないので本当に助かる。内容物の確認もパソコンのフォルダ整理された状態のように自分だけが見られる画面として目の前に表示されていて使いがっってが良すぎる。スキルさまさまだ。神様にちゃんとしっかり注文をつけてよかった。
「それじゃあ家に戻ろ」
チャタはヒョイっと私の背中に疲れたとばかりに飛びつき、普通の猫のように喉を鳴らす。
深い森の奥にある一軒家。神様から慰謝料としてせしめたものの一つで、地球とは違う世界 魔法と剣のファンタジーな異世界で私たちが過ごす拠点である。
そう、神様から慰謝料として…
だって私は神様のうっかりミスで殺されたんだから。




